夕暮れの時刻暗い森の中をカンテラを片手に30人ほどの
教団の兵隊達がガシャガシャと行進していた
「結局3人帰ってこなかったなぁ」
「あぁ、逃げた魔物追っかけてったって話だがな
これだけ広い森だ、道に迷ってるのかもしれない」
「大方とっ捕まえてヨロシクやってんじゃねぇか?」
「バカを言うな、我々は教団の兵だぞ?汚れるだけだ」
「ご立派、教団兵の鏡。」
無駄口を叩きながら歩き続ける兵士たち
ふと先頭を歩く兵士とその後ろを歩く白金の
鎧と純白のマントを羽織った剣士が足を止めた
「あそこです勇者様」
「うむ、だが物静かだな」
「大方隠れてるのでしょう」
勇者と呼ばれた剣士が大きな声で
兵士たちに命令をする
「者ども!木の根草の根を分けて魔物を探しだせ!
村長が見つかり次第私の下に連れてくるのだ!
他の魔物や村人は村の中央に集めるのだ!」
「「「「「「「はっ!!!」」」」」」
兵隊たちは散り散りになり家の中、井戸の中
納屋や備蓄倉庫を片っ端から
探し出したが誰も見つからなかった。
「居ない!」
「こっちもだ!」
「何処行きやがった!!」
「ひひひひ・・・・・・・」
「ん?」
若い兵士が奥の井戸からかすかな笑い声に気が付いた
辺りを警戒しつつ井戸へと近づいて行った
「この辺りだったよな・・・・・?」
だが井戸の周りを見ても中を見ても何も見つからない。
気のせいだったかと思い戻ろうとして振り返ったその時
井戸の中の影に音もなく引きずり込まれた
「ひひひひひ・・・・・先ずは一人」
別の場所では2人の兵士が物置小屋の中に
置いてある樽や桶、干し草を片っ端から
引っ掻き回ていた
「どうだそっちは?」
「ダメだ入口はおろか穴すらない」
「ハズレか・・・・・」
ふと気が付くとドアが閉まっている
風か引っ掛けたかで閉めてしまったかと思い
開けようとしたがドアが開かない
「おい!扉が開かないぞ!」
「くそっ!罠か!」
「ハイ残念・・・・・ひひひひひひひ」
悲鳴の一つもなく影に飲み込まれてしまった。
その後も一人、また一人と静かに少しづつ人数を
減らしていく。7人ほど影に沈めた所で
兵士がにわかに騒ぎ始めた。
兵士の一人が勇者に報告に向かった
「申し上げます!」
「どうした?!」
「兵士約数名の行方が分からなくなりました!」
「何っ!?」
「音もなく、いつの間にか居なくなっているとのことです!」
勇者は罠に掛られたと思った瞬間辺りに声が響いた
「ひひひひひひ・・・・『影よりはい出せ 黒蛇の巣』」
辺りの影から大量の鎖が飛び出し
兵士たちに絡みつき始めた
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「なんだこりゃぁぁぁぁぁ!」
「影から鎖??!!」
次々と鎖に絡めとられ影の中に引きずり込まれる兵士たち
「なんだこの鎖は!?」
しかし勇者は匠な剣捌きと身のこなしで鎖を撃ち落とした
「へぇ・・・・捌く奴がいるとはねぇ」
勇者以外全ての兵士が影に引きずり込まれた後
妖しく冷たい声が村全体から響き渡る
「誰だ!何処に居る!!」
木の影の中から黒樹がずるりと現れる
「一網打尽にするつもりだったけど・・・・・
アンタベテランの隊長さんかなんかかい?」
勇者は影から現れた黒樹を見据えて剣を構える
「勇者パレルナ・ゼームだ。貴様こそ何者だ?
私は男の魔物なぞ見た事も聞いたことも無い」
「まだ人間さ。魔導師だよ。」
「魔導師だと?そんな邪悪な魔力を持つ魔導師は初めて見た。」
「やれやれ、これだから神側の糞共は・・・・・」
「なにぃ!?神を愚弄する気か!!」
「光ある所闇あり、闇ある所光ありだ。
光が全てなんて思い込んでんじゃねぇよブァーカ。」
「既に魂まで堕ちたようだな!勇者の一撃で闇に帰るがいい!」
パレルナの持つ剣がメラメラと燃え始めた
「『炎よ悪しき者を切り裂け!フレイム・バーン』!!」
剣を振ると炎が球状に飛び黒樹を襲った
しかし爆炎が一瞬にしてかき消えた
「なっ!?!?」
「いやいや中々美味い術式だ。ご馳走さん(ゲップ)あ、失礼」
「フレイム・バーンを受けて無傷だと!?!?」
「言いそびれたけど、俺に術の類は効かないぜ」
「くっ、防御魔法か。ならば『神の名において命ずる
呪文よ消え去れ!呪文消滅(ディスペル)』!」
掌から球状の光が放出されるが
黒野に当たった瞬間、口に吸い込まれていった
「だから・・・・・無駄だって・・・・・・言ってるだろ?」
モグモグと口を動かしながら放たれた光の球を
吸い込んでいく黒樹。それはどう見ても魔法を
食べている様であった。そんな事が出来る人間は
おろか魔物ですら、見たことなぞ無いパレルナは
驚愕の表情で唖然としていた。
その表情を見た黒樹は、下三日月のような笑いを浮かべた
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