えろい子の絵本 3冊目

むかしむかし。
とある国に王子さまがおりました。
この王子さまは体が細く女顔で、女として産まれてくればよかったんじゃないかと、城の人から良くからかわれていました。
王子さまはからかわれるたびに怒っていましたが、そのうち反応するのも面倒になってはいはい、と聞き流すようになりました。

ところがある時、あまり付き合いのない国から王子さまへの求婚が来たのです。
それも王様からの。

王子さまはどういうことかと思いましたが、なんとその国の王様、
以前おこなった国交パーティーのときにまだ幼かった王子さまを見て一目惚れしてしまったのだとか。
そしてこの王さまは王子さまがいい歳になるまで待って求婚してきたのです。
(※この王様は太ったガマガエルそっくりなので、ガマ王と呼ぶことにしましょう)

ガマ王は自分の性別を勘違いしているのではないかと王子さまは思いましたが、求婚状にははっきり、王子と結婚したいと書かれています。
その見返りに資源に富む自分の国と優先して通商を行おうともありました。

そう、ガマ王は同性愛者だったのです。
一応亡くなった王妃との間に子供はいましたが、必要だから仕方なく作った上に、
産まれたのも全員女だったので愛情などまったく持っていません。

王子さまの父親であるこの国の王様は有能ですが冷血な人間で、王子一人を差し出すことで国が富むならばと勝手に快諾の書状を送ってしまいました。
国のためだ、お前も王家の一員として生まれたのならばいいかげん覚悟を決めろ。
抗議する王子さまに冷たく声をかけて、王様は執務へ戻っていきました。
(※後継ぎは何人もいるので王子さま一人ぐらい居なくなっても困りません)

王子さまは部屋に閉じこもって涙を流しました。
自分でも男らしくないと思いますが、あんなガマガエルの慰み物になるなど耐えられません。
王子さまはずっと泣いていましたが、そのうち泣き疲れて眠ってしまいました。

王子さまが目を覚ましたのは草木も眠る丑三つ時。
カーテンも閉めていない窓からは青白い月光が差し込んでいます。
王子さまは窓を開くと、深くため息を吐きました。

いっそここから飛び降りてしまおうか。
そんな考えが頭をよぎる王子さまでしたが、さすがに実行するほどの度胸はありません。
そんなことを考えていたとき。

「あら、どうしたのあなた? そんな今にも死にそうな顔して」

翼で宙を舞っていた女性が声をかけてきました。

サキュバス。
魔物の代表とも言える存在が目の前に現れて、王子さまは驚き、部屋の奥へ逃げようとしました。
「ちょっと待ってってば」
王子さまを追ってサキュバスは窓から部屋の中へ侵入してきます。

声をあげて助けを呼ぼうとした王子さまの口を手でふさぎ優しく語りかけます。
「おちついて。私はあなたに危害を加えるつもりはないから」
では一体何の目的でここにやってきたのかと訊くと。
「別に。ただこの場所は眺めがいいから月光浴していただけよ。
 もうそろそろ帰ろうかと思ったら、あなたが飛び降りそうな顔で地面をにらんでいるんですもの」
王子さまのような素敵な男性が死ぬなど勿体ないから、止めようと声をかけたのだそうです。

本気で死ぬ気はなかったものの、死にたいと思う気持ちももちろんあります。
誰かに鬱屈した思いを聞いてもらいたかったのか、王子さまは自分の境遇を話しました。

「ふーん、あなたも大変ねえ。そんなにガマ王と結婚したくないんだ。……ねえ、私が助けてあげようか?」
ニヤリとあくどい笑みを浮かべるサキュバス。
その顔に不吉なものを感じましたが、もう何でもいいから助かりたいと思っていた王子さまは頷いてしまいます。
「じゃあ、契約成立ね。ちょっと目をつぶっていて」
目を閉じた王子さまの額に手を当てると、サキュバスは魔法を唱えました。
「はい、もういいわよ。目を開けてごらんなさい」
そして目を開いた王子さまは絶句。

低くなった目線。
服を押し上げる膨らみ。
股の間の喪失感。

どこからどう見ても女性の姿になっていました。

これは一体どういうことだと詰め寄る王子さまにサキュバスは答えます。
「だってそのガマ王はゲイなんでしょ? だったらあなたが女になれば興味なんてすぐ無くして、別の男の尻を追っかけるわよ」
理屈ではそうですが、いくらなんでもこれはないだろうと王子さまは抗議します。

「そう言われてもねえ。私はこれが一番手っ取り早いと思うし…そもそもこの魔法はあなたに女性願望がなければ成功しないのよ?」
その言葉に王子さまはうっと息を飲みます。
たしかにガマ王から男の自分が求められていると知ったとき、せめて自分が女だったらまだ受け入れられたかもしれないのにと考えもしました。
小さいころから、女だ女だと言われていた王子さまは女装し
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