「おまえって結局、どっちと付き合ってるわけ?」
昼休みの教室。
同じ机で弁当をつつく友人にそんな事を訊ねられた。
付き合う? なんのことだ?
友人の質問の意味が分からず、聞き返す自分。
「俺にはとぼけなくたっていいって。サキさんとバスちゃん。少し前から急に仲良くなったじゃないか」
友人はそう言って教室の窓際を箸で指し示す。
それに釣られて自分も顔を向けると、その光景が目に入る。
カーテン越しの柔らかい光に照られて、互いの弁当をつつき合いしている二人のクラスメイト。
一人は背が低く、中学生のように見えるバスという女子。
もう一人は年相応の背丈をしたサキという女子。
どちらも談笑しながら食事をしているだけで絵になるほどの美人だ。
自分のちらりとした視線に気づいたのか、バスがにっこり笑って手を振った。
そしてサキも微笑みを向けてくる。
「ほらな。親しくもない奴にどうしてあんな顔見せるってんだ。
で、どっちと付き合ってんの? 俺だけでいいから教えてくれよ」
友人の頭の中では自分がどちらかと付き合っているのは、もう確定事項らしい。
だが実際は恋人と呼べるような関係じゃない。
別に付き合ってなんかいないって。
最近とある事情で親しくはなったけどさ。
流石にただのクラスメイトだとは言えないので、何かあったということは認める。
「あれ、そうなのか? 俺はてっきり付き合ってるものかと……」
付き合ってる、ね。
爛れまくった関係だから恋人とは呼べないよなあ……。
今週当番となっている掃除を終え、自分は特別教室棟へ向かう。
階段を上ったあと、年期が入って色あせた木製タイルの上を歩いて目的の部屋へ無事到着。
特別棟四階廊下の一番奥。
第二資料室とプレートがかかっている小さな部屋。
一応周囲をうかがってからコンコンとノックをする。
すると一秒もたたずにその扉が内側から開かれ、バスが顔を出した。
「いらっしゃーい。待ってたよー」
うひひと笑い、ちょいちょいと手招きするバス。
お招きにあずかり部屋の中へ入ると、もう慣れた風景が目に映る。
左右両方の壁に並んだ書類棚と青い空が見えるハメ殺しの窓。
古臭さを感じさせるそれらと対照的に、新しいマットレスが木の床の上に敷かれている。
そのマットレスの上に座り込んでいるのはもう一人の見知ったクラスメイト。
「いらっしゃい、ナナシノくん」
穏やかな笑顔とともに声をかけてくるのはサキ。
彼女はバスの親友で“同属”だ。
自分が部屋に入りバスが扉を閉じるのを確認すると、
サキはマットレスから立ち上がり、ついっ…と指を振る。
すると、校庭から聞こえていた野球部の掛け声や吹奏楽部の演奏が完全に途絶えた。
まるでこの部屋だけが深夜の学校になったかのような無音。
「はい、防音したわよバス」
この場に他の誰かがいれば、指一本で静寂を作りだしたサキを魔法使いとでも思ったかもしれないがそれは違う。
確かに音を遮断したのは魔法だが、彼女は魔法使いなどというシロモノではない。
もっと根本的に違う存在だ。
「ありがとねー、サキ。さーて、んじゃさっそくヤろうじゃないムメイ」
自分の背後、扉側にいるバスが自分を名前で呼んでくる。
人目がある所だと彼女も“ナナシノくん”と苗字で呼ぶのだが、3人だけになると名前で呼ぶのだ。
そういうのは(3人だけど)2人だけの秘密の関係みたいでなんかムズムズする。
いや、実際他人には秘密なんだけどさ。
「じゃあ……脱ぐわね、ナナシノくん」
窓側にいるサキがスカートに手をかける。
パチッと音がして留め金が外れ、スルリと床に落ちた。
丸見えになった彼女の下着は白。
次に手をかけたのはブレザーのボタン。
1個、2個とボタンを外した後、袖から腕を抜く。
その下に着ているのは学校指定の白いYシャツ。
かなり大きい胸が合成繊維の布を下から持ち上げている。
そしてプチプチプチと上からシャツのボタンを外していくサキ。
前がはだけ、薄青のブラが目に入る。
ボタンを外し終えシャツも脱ぎ、下着姿になったところでサキは一旦動きを止めた。
そしてんーっ…と伸びをする。
するとバサリッと腰の後ろから黒い翼が伸び、同じ色の尾が下着の穴からにょろりと飛び出す。
こめかみからも硬そうな角が2本セットで伸びてきた。
人外の本性を露わにしたところで、サキはふぅ…と息をつく。
「やっぱり、化けてると翼が窮屈よね……」
一対ずつある角と翼、さらに尻から伸びた尻尾。
彼女たちは魔物…それもサキュバスと呼ばれる類の存在だ。
二人と初めて出会ったとき(ラブレターで呼び出されて襲われた)はそりゃあ驚いたが、
あいにくと自分は小さい頃から無数のフィクションに囲まれて育った現代日本人。
人間への害意がないと分かってしまえば、
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