その子と出会ったのは学校の帰り際、近道の寂れた公園を歩いている時だった。
舗装されていない土の道を進んでいたら、向かいから歩いてやってきたのだ。
うわー、すごい美人……。
まだ小学生ぐらいにしか見えないのに“美しい”が“可愛い”を上回っている。
髪も肌もとても白く、女の私でさえ見惚れてしまうほどだった。
目が赤いからアルビノなのかな?
その子は私の横で立ち止まり声をかけてきた。
「こんにちは、おねーちゃん」
「はい、こんにちは」
「ねえ、わたしと契約して魔物娘になってくれない?」
「はい?」
「だから魔物娘だよおねーちゃん」
えーと……。
魔物娘と言われても私には何の事だかわからない。
多分この子が勝手に考えた空想とか妄想なんだろうけど。
「ごめんなさい、おねーさんはちょっとなれないかなあ。また別の人に頼んでみてよ」
ちょっと面倒そうな気配を感じたので、断って帰ろうとしたら手を掴まれた。
「ちょーっと待って、話だけでも聞いてくれない?」
振り解いて逃走したかったけど、転ばせて怪我でもさせたらコトなので逃げられなかった。
しょうがないので彼女の話を聞くことにした。
白い女の子はリリと名乗った。
そして自分の世界が危機に陥っているから助けてほしいなんて語り始めた。
彼女の話は長かった。なんで短くまとめておく。
リリちゃんは異世界の人らしい。
彼女の世界は魔法と魔物娘の存在する世界でとても繁栄していたんだけど、やがて世界が滅びてしまうと分かった。
(宇宙の熱的死とかなんとか説明してくれたけど、その辺は私にはよくわからなかった)
幸いなことに彼女の世界には人間と魔物娘による永久機関が存在していたので、そこから生まれる魔力で滅びに対抗し世界を維持できるらしい。
しかし数が足りておらず、将来における増加数を考えても彼女の世界だけでは滅ぶ可能性がかなり高い。
そのため異世界の人に魔物娘になって手伝ってもらっている……のだそうだ。
一通り話が終わっての私の感想。
いくらなんでも痛すぎるよこの子……。
魔法の世界から来たとか、世界を救う手助けをしてほしいとか。
中二真っ盛りの私でも引く妄想をありありと語ってくれた。
「ね、だからお願い。わたし達の世界を救ってほしいの!」
彼女は本気100%の顔で私に頼み込む。妄想を完全に信じ込んでるんだね。
しかし私は彼女と妄想を共有する気はない。
「えーと、女の子が必要なら私じゃなくてもいいんじゃない?」
見知らぬ誰かにこの電波ちゃんを押し付ける私。
彼女の妄想設定によるなら、魔物娘になるのは私でなくてもいいはずだ。
「そういわれても、おねーちゃんすっごい才能あるんだよ。
おねーちゃんならドラゴンとかエキドナとか超有名どころのレア魔物になれるんだから」
うへー、あなたには才能がありますときたか。私の興味を引こうと必死なんだね。
迷惑な子にロックオンされてしまった、いい加減叱った方がいいのかな…と考えたら彼女はスッと手を離してくれた。
「まあ、いきなり信じてくれなんていっても仕方ないよね。今日はもう帰るから。
ただその証拠にこれを……」
そう言うなり彼女の手の上にハードカバーの厚い本がスッと現れた。
え? いまどっから取り出したの?
プロの手品師でもできそうに思えない謎の技術。
そして彼女はその技術で出した本を私に差し出す。
「この本を開いてみて」
私はつい反射的に差し出された本を受け取ってしまった。
そして開こうと―――あれ?
開かない。
カギなんて付いてないのに、全ページが強力接着剤で張り付けられたように微動だにしない。
「あの、この本開かないんだけど…」
「今度は開けって念じながらやってみて。声に出さずに頭の中だけで考えて」
―――開け。
そう思い浮かべると分厚い本はガパッとあっさり開いた。
えっ! なんで!? さっきは力を込めてもダメだったのに!?
これどういう事なの?
そう訊こうとしたら彼女はもう目の前にいなかった。
不思議に思い辺りをグルグル探し回ってみたが影も形も見つけられなかった。
…気味が悪い。
そう思ったものの、渡された本を捨てる気にもなれず私は家へ持って帰った。
風呂に入って明日の準備もして、もう寝るだけといった時間。
私はリリちゃんに渡された本を色々調べていた。
けど、私に分かることなんてたいしてない。
この本は一度閉じてしまうとロックされて力づくでは開かなくなる。
開くにはまた頭の中で念じなければならない。
念じずにただ口で『開け』と言ってもロックは解除されない。
本当にどうなってるんだろこれ?
ロックについては……例えばカバーに強力な電磁石が仕込まれていて、一度閉じると作動して女手では開けなくなるとかそんなのでできるかもしれない。
ロッ
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