精霊使いの村

夜のとある砂丘。
男の子が暗い中一人彷徨っています。

この男の子は精霊使いの村の人間。
この子の村ではある程度の歳になったら、
精霊と契約しなければならないという決まりがあるのです。

もちろん幼いうちに契約する必然性はありません。
世の中には老人になってから必要に迫られて契約する者もいるのですから。

しかしこの子の親は村の長。
いずれ後を継ぐ者として、早いうちに優秀である所を見せなければならないのです。

男の子は泣きべそかきながら彷徨います。
というのも。
(んー、なんか合わないからパス)
(ごめんね、他の精霊を探してねー)

見つけた精霊ことごとくに契約を断られてしまったのです。
このまま誰にも認められずに手ぶらで村へ帰れば父親にこっぴどく叱られるでしょう。
おまえはそれでも自分の息子か、こんな出来損ないは村から追い出してやる。
後半はどうか分かりませんが、前半分は確実。

親の怒声とゲンコツという、この歳では最大級の恐怖を後に控え岩の陰でしゃがみ込んでしまいます。
ぐすんぐすんとえずく男の子。
その声を聞いて興味を引かれたのか一人のイグニスが寄ってきました。

「どうしたんだい? こんなところで一人で泣いて」
人間らしき肉声に顔を上げる男の子。その目に映るのは体の一部が炎で覆われた若い女性。
男の子は一瞬魔物かと思いましたが、この地域はそんなものが入ってこれるような緩い場所ではありません。
夜中一人で子供を出歩かせる程度には安全なのですから。

男の子は言います。
親に怒られるのが怖い。もしかしたら家を追い出されるかも。
最初は単純に家出かと思っていた精霊ですが、詳しい話を聞いて同情した顔になりました。
「そうかいそうかい。よしよし、もう泣くな。あたしが一緒に行ってやるから」
頭を撫でるイグニス。しかし男の子の涙は止まりません。
自分が連れて行かなければならないのは精霊。精霊使いの彼女が来てくれてどうなるというのか?

「あー、分からないのかあ。あたしこれでも精霊なんだけど」
男の子は訝しげな顔。精霊とは形の定まらない存在。
中には人型になる者もいますが、こんな人間そっくりの姿になることなどありません。
自分をからかっているのかと怒りだす男の子。それをからからと笑うイグニス。

「本当だって。これがその証拠」
ちゅっとキスをするイグニス。
その瞬間男の子は目の前の相手との繋がりを感じました。
初めての体験ですが漠然と分かります。自分と目の前の女は契約で結ばれたと。


こんな精霊見たことない男の子でしたが、これで家に帰れると一安心。
イグニスを連れて帰ろうとしましたが、ちょっとストップ。
「今のは仮の契約だから、1時間もすれば繋がりは消えるよ」
えっ? という顔になる男の子。

「あたしが精霊だって信じてくれなかったろ? さっきのはただの証明。本契約はこれからさ」
クックックと笑う精霊。男の子はその顔に嫌なものを感じました。

「じゃあ、本契約しようか。まず、服を脱げ。全部」
その言葉にためらいを見せる男の子。
裸になることをなんとも思わない歳はとっくに過ぎているのですから。

「んー、できないのかぁ? ならしょうがないな。この契約はお流れと」
男の子は慌ててすぐ脱ぐからと背を向けたイグニスを引き止めます。
この精霊を逃したら次のチャンスは無いかもしれません。

「その気になってくれたか。じゃああたしも裸になってやる」
イグニスは服のように体を覆っていた炎を消し去りました。
その下から現れた肉体は人間の若い女性そのもの。
まだ性欲を持て余すような歳ではない男の子も勃起してしまいます。
「こら、手で隠すな。あたしはどこも隠してないだろ?」

そう言われては仕方ありません。男の子は股間を隠していた手を離します。
「これが男のちんぽか……。ああ、お前ぐらいの歳だとおちんちんって言うんだったか?」
自分の股間を凝視されて男の子の顔はもう真っ赤。
「あたしの契約方法はちょっと変わっててな。セックス…って言っても分からないか。
 お前のおちんちんをあたしの穴に入れて契約するんだ」
そう言ってねちゃりと女性器を広げるイグニス。
男の子は未知への不安に一歩退いてしまいます。
「逃げるなよ、痛くは無いはずだ。…あたしも初めてだけどさ」
そう言ってイグニスは男の子をそっと砂地に押し倒します。



精霊が人間とともに生きようとすることは珍しい事じゃない。
あたしの嫌いなウンディーネなんかは少しでも人に近づこうと、出来損ないの人形のような姿になることもあるぐらい。
そんな姿になったからって愛してもらえるわけないのにねえ。

そんな風に考えていたあたしだったが、最近奇妙な魔力を感じるようになった。
通常の自然とは違う力。粘つくような不穏
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