朝。
目覚まし時計が鳴る前に目を覚ますは小さい女の子。
「ん……眠い…」
目をゴシゴシ擦りながら起き上る姿はまさに地味の一言。
枕元にある黒縁メガネがその地味さにさらに拍車をかけます。
「ご飯、作らなきゃ…」
ジューッっと目玉焼きを焼いて、もうそろそろいい時間。
メガネちゃんはお兄ちゃんを起こしに2階へ上がります。
ノックもせずに部屋へ入りユサユサ。
「おにいちゃん…朝だよ。起きて…」
もっと大きい声と激しい揺さぶりをかければすぐ起きますが、
引っ込み思案なメガネちゃんはそんなこと出来ません。
お兄ちゃんがやっと起きて食事をとりました。
「お皿は水に沈めないでね。服は洗濯機に……」
この家は両親とも海外赴任しているので、お兄ちゃんとメガネちゃんの二人だけ。
本来なら高校生のお兄ちゃんが家事をするべきなのでしょうが、だらしねぇお兄ちゃんに任せたら大惨事は確定。
まだ小学生という若い身でメガネちゃんは家事を一手に引き受けているのです。
「お兄ちゃんハンカチとティッシュは持った? 他にも――」
学生達の登校時間。
お兄ちゃんとメガネちゃんの学校はすぐ近くなので、いつも二人いっしょに家を出ます。
二人で歩く通学路。
メガネちゃんは何か話をしようと思いますが、いい話題が思いつきません。
お兄ちゃんもカカシが服を着ているような鈍感なので、その様子に気づきません。
けっきょく今日も何も話さず分かれ道まで来てしまいました。
「じゃあ気をつけてね。また夕方……」
手をふって小学校への道を向かうメガネちゃん。
はぁ…とため息をつくその背に。
「どっかーん! ギャハハッ! おどろいた!? ねえ、おどろいた!?」
クラスメイトの元気な子がいきなりタックルをしかけてきました。
「……おはよう」
心臓はバクバクいっていますが、顔にはあまり出ません。
「なんだー、今日も失敗かあ。どうすればアンタの顔は変わるんだろうねえ?」
この子はメガネちゃんとは正反対のタイプですが、とても仲のいい友人です。
「ちゃんと驚いてるよ…。心臓に悪いから、もうやらないで欲しいな…」
親友相手ですからメガネちゃんもちゃんと自分の意思を伝えられます。
授業中。特に何もありません。
メガネちゃんが100点満点もらったり、親友の元気な子が涎たらしながら寝ているのはいつものことです。
お昼ごはんも終わって昼休み。
「ねー、なにするー? 男子といっしょにドッジボールでもやろっか?」
そんなことやってるのは親友だけなのですが、彼女はいつもメガネちゃんを誘うのです。
しかし今のメガネちゃんはそんな言葉は耳に入っていませんでした。
(魔力レーダーに感あり? 場所は…高校。お兄ちゃんが狙われている!)
ゲゲゲのように髪の毛が一本ピンと立ちメガネちゃんは何かを感じ取ります。
「ごめん、わたし調子が悪いからちょっと休んでくるね」
そう言うなり元気そのものの様子で人気の無い校舎裏へと走って行くメガネちゃん。
校舎裏。
人が居ないことを確認して目を閉じる。
姿を思い浮かべて意識を集中。
(おにいちゃんが危ない! ―――――へんしんっ!)
別に眩い光や派手な音が撒き散らされたりはしませんが、メガネちゃんの姿は一瞬にして変わりました。
視力が上がってメガネを外し、髪が変色したその顔はもう別人。
……服は変わらないので小学校の制服のままですが。
そう、メガネちゃんは魔女っ子だったのです。
そして何処からともなく取り出すは一本のホウキ。
それにまたがり魔女っ子は空へと飛びあがります。
(おにいちゃん、無事でいて!)
高校校舎、人気の無い屋上付近の階段
なにやらお兄ちゃんが、一人の女子生徒に迫られています。
「ねえ、おねがい。責任とれなんて言わないから……」
お兄ちゃんを逃げられないように壁際に追い込んでいるのは、一見物静かに見える女子高生。
しかしその正体はカマキリ女。
服の下に隠したカマで獲物(の服)をバラバラに切り裂き(下の口で)ムシャムシャ食べてしまうという恐怖の魔物なのです。
そんな相手に迫られてお兄ちゃん大ピンチ!
しかしこれで終わりとは神と問屋が許しません。
救いの主は空からやってきます。
「おにいちゃんに……近寄るなぁーっ!」
ガシャーンと窓ガラスを破り、ホウキの勢いそのままにドロップキックをかます魔女っ子。
吹っ飛ばされたカマキリ女はもう一方の窓ガラスを突き破り、どこかへと飛んでいきました。
「ふう…危なかったぁ……。まったく、誘われたからってホイホイついてっちゃダメだよ!
何度も言ってるでしょおにいちゃん!」
お兄ちゃんを指差してガミガミ叱る魔女っ子。
普段とずいぶん性格が違うと思うかもしれませんが、それが変身効果というものです。
お兄ちゃんも目の前の女の
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