「あらあら、今日はお花さん達も天気がいいから、元気いっぱいねぇ」
ゲストハウスの入り口に咲く花に上呂で水をやる女性。彼女は、ホルスタウロスの【轟(とどろき)】さん。このハウスの管理人だ。彼女は鼻歌を歌いながら、隅々まで水を撒く。花々も心なしか、水を浴びて気持ちよさそうだ。それが終わると、ゴミ捨てをする。ハウスのゴミをまとめ、集積所まで運ぶ。ここには十数人が住んでいるので、ゴミも結構な量になる。彼女は、重いゴミ袋を持ち運びながら、道行く小学生などに「いってらっしゃい」と愛想よく挨拶をする。
「ふぅ、これからもう一仕事ね」
手の甲で汗を拭う。ハウスのドアを開けると、玄関回りに掃除機をかける。靴を所定の位置に揃える。これだけ人数が多いと、靴も何足もある。僅かなことがトラブルになる場合もあるので、靴の置き場所が、個人の範疇を超えないようにする。その後は、1階ロビーの清掃、トイレ掃除をする。窓を開けると、慣れた手つきでロビーの棚やテーブルなどを布巾で拭き、掃除機掛けをする。トイレについては汚くなりがちなので、余計に気を使う。個々人が使った後は綺麗にする約束にはなっているが、それでも汚れは残ってしまう。彼女は根気よく掃除をした。
「ようやく終わったわ、さて、一休みしようかしら」
ロビーの瞬間湯沸かし器に水を入れ、お湯を沸かす。お気に入りのピンクのカップにコーヒーをドリップして、砂糖を多めに入れる。昨日買っておいたクッキーを皿に開ける。轟さんは、それを摘まみながら、ティータイムを楽しむ。テレビをつけると、ショッピングを放映していた。スーツを着た男性が商品を説明する。≪見てください、このダイエット効果。二週間でお腹回りがすっきりします≫テレビのゲストが大げさに驚いていた。「あら、良いわね。一つ買っちゃおうかしら」轟さんはクッキーをぽりぽりと摘まみながら、そんな事を呟いた。
さて、次は2階の掃除である。2階は、トイレ掃除と、廊下掃除がメインである。彼女は掃除機を2階まで運ぶと、念入りに掃除機をかけた。トイレ掃除は、バケツを持っていき、丁寧に拭き掃除をした。それらが終わると、1階に再び降りる。掃除道具を片付ける。「でも」と彼女が呟いた。「林さんが来てから、本当にお掃除は楽になったわ。あの子、気が付いた時に掃除してくれるし。本当に気の利く子ねぇ」事実、林さんは週に二回、風呂とトイレの掃除を請け負ってくれていた。その他にも汚れに気が付いた時にこまめに掃除してくれているようだ。管理人としても願ったり叶ったりだった。
掃除が終わると、彼女は再びロビーで寛ぐ。彼女は管理人ではあるが、1階のシングルルームに住んでいた。部屋の中にもテレビはあるが、こうやって、大部屋でクッキーを食べるのも悪くない。しばしの休息の時間。今日の献立は何にしようかしらと考えながら、彼女がテレビを見ていると、田辺さんが2階から降りてくる。「おやおや、これは、管理人殿ではないか?なにやら、お寛ぎのようじゃの」
「ええ、そうなんですの。なんだか一仕事したら、眠くなっちゃって」
「おお、そうかそうか。お勤めご苦労様じゃ、えっと、それでじゃな、もし良かったら、来月から、家賃を下げてはくれんかの。最近、生活が厳しくてのぉ。ご飯も一日三食しか喉を通らんのじゃ」
悲壮な顔をして、田辺さんがうつむく。轟さんは、そんな田辺さんの顔を見ると、はわわと声を上げて。
「あらあら、それは大変。仕方ありませんね、2000円だけですよ。それ以上下げてしまうと、管理費がなくなってしまいますからね。申し訳ないですが、それで構いませんか?」
「おぉ、それは助かるの。有難いことじゃ。管理人殿、恩に着るぞい!この間の部屋の件といい、そなたはなんと物分りのよい御人じゃ!」
「いえいえ、だって、お部屋には地縛霊が出るのでしょう?いくら知らなかったとはいえ、そんなところに住んでいただいて、私も申し訳ないですわ」
「…そうじゃったな、うむ、ここまで人がよいと、逆にこちらの心が痛むわ、おお、そうじゃ、蕎麦を買ってこねばならんのじゃった。すまんが、管理人殿、失礼するぞ!」
「はいはい、いってらっしゃい」
田辺さんはそういうと、外に出かけて行った。
◆
午後六時。轟さんが、キッチンでカレーを作っていると、昇太郎が仕事から帰ってきた。どうやら今日は残業がないらしい。
「あら、昇太郎君、今日は早いのね」
「あ、管理人さん、こんばんは。そうなんです。今日は早上がりできまして。そうか、道理でいい匂いがすると思ったら、今日は金曜日だから」
昇太郎はぺこりとお辞儀をする。轟さんは毎月第二金曜日に手料理を作って振舞っていた。今日はキノコカレーと、エビとブロッコリーのマヨネーズサラダ、デザートはバナナヨーグルトである。鍋はぐ
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