返ってきた大切な人

 10月31日。ハロウィン。
 浮かれた人間がコスプレをし、夜の街中を闊歩している。その楽しげな風景を横目に、一人で家路につく。
 「何がハロウィンだ……」
 本来なら、友美と一緒にハロウィンパーティーをするはずだったのに……。

 友美は俺の大切な幼なじみだ。いや、幼なじみだった、の方が正しいか。
 数年前から難病にかかり、病院生活を余儀なくされた彼女は退屈な日々を過ごしていた。
 毎日の薬による治療で過ぎていく日々。彼女の精神が磨耗していくの誰から見ても明らかだった。

 少しでも外の世界のことを知らせたくて、少しでも友美を代わり映えのしない辛い毎日から解放してあげたくて春になれば桜の花の形をしたアクセサリーを買って持っていったり、七夕には一緒に短冊を書いたり、思い付く限り俺は病院の外の世界のことを彼女に伝えようとした。
 そのかいあってなのかはわからないが友美の容態は少しずつではあるが、よくなっていた。血の気の引いていた顔に生気が戻り、10月末あたりには仮退院も出来るくらいに回復するのではないかというところまで来ていたのだ。



10月28日。
 友美の容態が急変。その日、友美と他愛ない話をしている時にそれは起きた。
 明日には仮退院できるだろうから、31日にはハロウィンパーティーでもしよう。そう話し合っていた時だ。
 健康な色を取り戻した腕が、脚が、身体中が一斉に痙攣をおこし、今まで俺を見つめていた目がくるりと回り白目を向いたのだ。
 すぐさまナースコールをして、担当医による緊急手術が行われた。
 七時間に及ぶ手術の後、眠ってしまった友美の顔を見た。
 彼女は長い闘病生活を終えたのだ。短い人生と同時に。

 10月29日
 通夜がしめやかに行われた。
 余りにも呆気ない終わりかたにその時のことはよく覚えていない。

 10月30日
 白く軽くなった彼女を眺めていた。箸で取り分けられ。小さな壺に入れられる様子を呆然と見ていた気がする。

 夜、友美の家族と別れてから、徒歩で帰宅中に友美と過ごした日々を思い出していた。
 思えば友美と過ごした日々の大半が病院の中のことだった。
 善意のつもりで外のイベントを想起させる物をよく持っていって、彼女はそれを喜んでいるように見えたが、本当に喜んでいてくれたのか?その物を見る度、彼女自身は物事を体験出来ないことを思い知らせていただけでは?俺は彼女に最も残酷な仕打ちをしていたのではないか?
 善意のつもりでとんでもないことをしでかしていたかもしれない。
 気分も足取りも重くなり、歩くことすら億劫になってきた時、自宅にたどり着いた。
 そして、誰もいない部屋のドアを開ける。
 「あ、おかえりー」
 前言撤回。誰かいた。
 ドアの前でステンバーイしてる白い女がいた。凄い美少女がいた。ビューテイフォー。
 見覚えのある顔のような……気のせいだろうか。
 「誰だお前は!?」
 「愛を叫びに来た女!スパイダー○ッ!!」
 「嘘つけ!お前蜘蛛の要素一切無いし赤くないどころか真っ白じゃねーか!何が△パイダーマッ!!だよ!」
 「だってあんなお手本みたいな聞き方するから」
 両手をモジモジさせる白い女。可愛い。じゃなくて。
 「まあいいや、そのス×イダーマッ!!さんは一体何用で、どうやって俺の家に入ったんだ?鍵はかけた筈だが?」
 玄関の鍵は確認したし、窓も開けた覚えが無い。この女は一体どこから家に侵入したのだろうか。
 「玄関から入らせて貰ったわよ?」
 まるで何を言ってるか分からないという風に俺を見てくる。
 「いや、だから鍵をかけて「ああ、言い方が悪かったかしら。玄関からドアをすり抜けてはいったのよ」
 「はぁ?」
 俺の耳が確かならこの白い女は扉をすり抜けて入ったというのだ。
 「そんな馬鹿なこと、すり抜けるなんて幽霊じゃあるまいし」
 そう、そんな馬鹿なことがある筈が「幽霊だけど?」
 再び目を丸くする俺に彼女は足を見せつけるように裾をあげた。そこには人間にあるはずの脚が途中から無くなっていた。途中まではっきり見えている脚がすねの当たりから先にかけて輪郭が朧気になり、地面につくはずの足が無くなっているのだ。
 「な、なんだそれ。まさかお前、本当に幽霊なのか?」
 驚愕し、へたり込んでしまう。
 「そう、幽霊よ。そういえば何用できたかは答えてなかったわね。今日は何の日だか分かる?」
 顔と顔がふれあいそうになる距離まで近づきながら、女は問うてくる。悪戯気な笑みをうかべながら。
 「10月31日。ハロウィンか?」
 街中をお化けや幽霊、妖怪の仮装をしている人達がいたな。
 「そう、ハロウィンよ。ハロウィンがどういう日か知ってる?」
 ハロウィンがどういう日?そういえば深く考えたことはなかっ
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