母の元を立った私はどこへ向かったか?
教団に向かったよ、復讐の為だけに。
何を馬鹿な事を、そう思うかもしれない。
もっと楽な生き方があったろうに、そう言うかもしれない。
辛い事なんか忘れて楽しく生きれば良いじゃない、そう言ってきた魔物もいた。
それを言ったのは後に私の姐さんになる人だったんだけどね。
とは言っても、手当たり次第、教団に刃向かっていったわけじゃない。
そんな真似をする程私は馬鹿じゃないさ。まあ、若干力押しに頼る事はないとも言えないが・・・。
さて、復讐をすると言ってもだ。当時の私はその男について教団の人間で、そこそこの地位に就いている、そのぐらいの知識しか持っていなかったわけだ。顔と、声、右腕が落ちている事程度の情報で偶然の出会いに頼るのはあまりに無謀すぎる。
君達ならどうするかな?無論、私みたいな境遇に陥らないのが幸せなことに違いないが。
まずは、情報が必要だ。
情報はどこに集まるか?金と権力がある所に集まるな。
それはどこか?大都市だ。
それもなるべく大きな反魔物国家で教団が実権を握っている所がいい。
何となく予想がついてきただろう?そう、レスカティエ教国だ。
なに?レスカティエは魔界じゃないかって?何を言い出すんだ、私が人間だった頃はまだ・・・ちょっと待て!今のなし!今の発言は聞かなかった事に・・・何をニヤついて、まさか!?やめろ!やめてくれ!仕方ない、傷つけたくはないが・・・、ちぇすとー!
只今、放送事故が発生いたしました。ご迷惑をおかけしますが、そのまま潔くお待ち下さい。
ふう、いいか、君達は『何も聞かなかった。』
プリーズ・リピート・アフター・ミー『何も聞かなかった。』
いい返事だ、それじゃあ続きを話そうか。
その頃、私の知る限りで一番巨大だった反魔物国家-レスカティエ教国-に私は向かった。
しかし、旅の人間が来て早々に「教団の戦闘記録を見せて下さい」などと言えば目をつけられるのは分かりきった事だ。
頭が良く口の回る人ならば、その辺りを上手くやる事も出来たのだろうけれどあいにく私は戦う事しか知らなくてね、その方法は早々に断念する事にしたんだ。
残された道は一つ、割と危険ではあるが確実な方法、教団の兵士として志願する事だ。
それでも、目をつけられた事に変わりはなかったけれどね。
出自も分からず、剣を一本だけ携えて「教団の兵士にして下さい」と、まだ若い女性が乗り込んでくる訳だ。疑われない方がどうかしてる。
『シルヴィア・アージェンタイト』
自身の名前を聞かれて戸惑った私はその時持っていた剣を見てとっさにそう答えた。
本名を名乗れば、正体が割れてしまうから。
教団に入ったのは、師匠が望まないだろう彼女自身の弔いだから。
そして、私の心の奥底にある暗い憎悪を忘れない為に。
戦闘技能を調べる、そう言われてやらしい目つきをした男の教団兵十人程を即座に再起不能に追い込むと、私は晴れて勇者・英雄部隊へと配属された。
そこにいた少女、名を確かウィルマリナと言ったはずだ。
すまない、なにぶん昔の事なので良く覚えていなくてね。
彼女とはなぜだか妙に気があった、私がそう思っていただけなのかもしれないが。
きっと彼女も周りには言えない悩みを抱えていたんだろう。
年頃の女子としての感情をひた隠しにして、勇者を演じる彼女を見て私はなんとも言えない気分になった。
義母がいなければ、そこに立っていたのは私かもしれない。
彼女は強かったよ、ちょうどその頃全盛期だった私が奥の手を使わなければ勝てない程に。
今は魔物になって強くなったのでは?そう聞かれる事もあったが、私の場合は若干例外的でね。
魔力の総量は確かに上がったが、バランスを欠いてしまってね。
その頃使えていた奥の手も今では使う事が出来ない。
彼女は今、どうしているだろうか?
魔界になった後、レスカティエの情報は一切入ってきてなくてね。
何を今更、そう言われるのも当然だろうけれど、時折、彼女の安否が気になる事がある。
驚いた事に、教団に入った私には自由行動が与えられた。
流石の教団も出自の分からない私を宣教活動に使うのは不利だと判断したらしい。
それは、私の目的を果たす上で大きな利点となった。
古い記録、例えば十年前に村を滅ぼした記録すらも探し出す事が出来るのだから。
私の求めていた情報は割とすぐに見つかった。
ただ、嘘にまみれていた資料を怒りにまかせて破り捨てたのはやり過ぎたと思ったが。
なんて書かれていたと思う?私の覚えている範囲ではこう書かれていた。
XX年YY月
目的:
魔物に捕らわれている“英雄の卵”の奪還
戦果:
“英雄の卵”、魔物の最後の抵抗により死亡。
村に被害を与えていた魔物の駆逐に成功。
汚れていた村の浄化に成功。
魔騎士:セレスティア・アージ
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