第二部:やっぱりデュラハンからは逃げられない。2

「あんなに熱い夜を二人で過ごしたというのに。おお なぎ よ、わすれてしまうとはなさけない。」
後半なにやら電子音のようなものが聞こえた気がする。
「だから、てめぇは何者だって。」
「まさか、本当に覚えてないの?」
怪訝そうな顔をして再度確認してくるが、覚えてねぇもんは覚えてねぇ。
「覚えてねぇ。」
「本当に?」
「ああ、本当だ。」
幾度か否定してやると彼女はうつむいて思索にふける。まさかとは思うが、俺の記憶がないだけで本当にヤってしまっていたのだろうか?
そう思うとなんだか気まずくなってきた。伸びないうちにうどんをすすることにする。
ズルズル。
ふと、眼前の彼女が顔を上げた。
「もしかして、凪はこの姿の私をみるのは始めてか?」
「はぁ?」
狐や狸じゃあるめぇし、そうコロコロと姿形を変えられてたまるかってんだよ。
「そうか、その反応を見るにやはりそうなのだな。」
俺の思考を置いてけぼりにして一人納得のいった様子の彼女。
「ふむ、あまり無駄にしたくはないのだが・・・仕方ないな。」
突如として彼女の体から魔力が放出され始める。
魔法を使えない俺に何故それが分かるのか?昔、聞かれたことがある。その時の俺は「何となく。」としか答えられなかったが今なら分かる。いや、答えられると言った方が正しいか?その原因は俺が暗殺者として育てられ暗殺者として生きてきたからなのだろう。命の流れ、気の流れは標的の如何を知る上で実に有用である。いかな魔力であろうと命を元に作られることに変わりはなく、その流れを知ることに魔法とやらの技術、知識体系を習得を必要とすることはない。
大雑把に言ってしまえば大元の流れを知っていれば支流を知るのは容易いといった所か。
「・・・ふう。これでも身に覚えがないと言い張るつもり?」
彼女の放出していた魔力が安定する、先程より一つ上の段階で落ち着いたように思える。
「冗談・・・だろ?」
確かに身に覚えがあった。
先程までとがらりと印象を変えた彼女は、
銀色の髪、真紅の瞳を持ち、
そして何より俺が昨夜襲われた、
シルヴィア・D・アージェンタイトだった。

「で、頼み事ってのは何だよ?」
きつねうどんをすすり終えた俺は稲荷寿司に手を、いや箸をつける。
「この前折った私の剣を直して欲しい。その前に借りた得物を返さなければいけないな、礼を言う。」
シルヴィアは俺に借りた居合刀を返してきた。
まったく、どうして俺はこんなものを貸したんだ。
数え切れないほどの外道を始末してきた俺の相方、地獄の道連れと言った方がしっくりとくるかもしれない。刃の方は何代目か忘れてしまったが柄の方は変わらない、いくら外道とは言え幾度となく命を奪っていった記憶はしっかりと刻み込まれている。それを俺は護身用にと軽い気持ちで貸してしまった。
何より誇りを重んずる騎士に。
俺が、俺こそがどうしようも無く救いようのねぇ外道じゃねぇか。
「どうしたの?」
「いや、何でも無い。」
手を伸ばして刀を受け取る。
異音がした。
白木の鞘からは出るはずもない金属同士がぶつかる音がした。
「おい。」
「なにかしら?」
平常を装ってはいるが彼女の目は完全に明後日の方向を向いている。
おそらく、彼女としては手に取ったときの重量をごまかすために折れた刀も一緒に入れたのだろうが、それが裏目に出た。
「これ、折れてんだろ。」
「ああ、あのとき運悪く兵士に襲われてな。兜割を仕掛けたら折れてしまった。」
「そら、折れるわな。」
呆れて物も言えない、その見た目より丈夫なジパング特有の刀の一種ではあるが西洋の幅広い剣と同じように使ったら壊れるに決まっている。
「弁償、しなければまずいか?」
上目遣いに訊いてくる。ちくしょう、そんな訊き方されたら断るしかねえじゃねぇか。
「いや、いい。元はと言えば貸した俺の責任だ。それより、修理はどこに頼めば良い?」
彼女だって腕の立つ剣士である以上どこでも良いという訳には行かないだろう。
ならば、この辺りでの人脈が薄い俺が決めるより彼女の馴染みの店に頼んだ方が良いはずだ。
「それなら、街外れにある鍛冶屋を訪ねると良い。特殊な外観をしているからすぐ分かるはずだ。」
「分かった。」
俺は彼女の剣を受け取ると代わりに空になった食器を同じく彼女の空になった食器の上に重ねる。
「ちょっと、どういうつもり?」
俺は気にせず立ち上がり、去り際に一言。
「片付けといてくれ。修理代の代わりだ。」



そして、街外れの鍛冶屋に着いた。
着いたは良いものの、この店入り口がない。
俺の間違いかと思い店の周りを一周してみても入り口がない。
いや、正確にはある。『入口』と書かれた壁がある。
しばらく思案した後、一縷の望みを掛けて壁をたたいてみる。
そうか、なるほどな。
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