おチーズころりん

 むかしむかし、あるところに正直で働き者のお兄さんが住んでおりました。
 お兄さんはもういい年でしたが、いつまでたってもお嫁さんを貰おうとしません。
 それというのも、お兄さんは小さな女の子が大好きだったのです。
 性的な意味で大好きだったのです。
 とはいえ分別はあったので、いたいけな少女を襲うなどということはありませんでした。
 昼はせっせと働き、夜はちっちゃなおっぱいを思い浮かべて自らなぐさめる。
 まるで、どこかのSS書き手のような日々を過ごしていました。

 そんなある日、お兄さんは町へ買い物に出かけました。
 町の市場は今日も人でいっぱい。
 立ち並ぶお店には、野菜やお肉、日用品など様々な物が並んでいます。
 そんな中、お兄さんは黄色くて丸いものが積み上がっているのを見つけました。
 近所の牧場のおじさんが、丹精込めて作ったチーズです。
「さあさあどうだい! うちのホルスタウロスのお乳で作ったチーズは絶品だよ!」
 チーズはかぐわしい香りを放ち、見るからにおいしそうです。
「ふむ、では一個いただこう」
 と、お兄さんは一抱えもあるチーズの塊を買ってみることにしました。

 まんまるチーズを肩に担いで、お兄さんは家へと帰ります。
「思わず買ってしまったけど、こんな大きな塊、食べきれるかなぁ」
 お兄さんは起伏が続く道を、てくてくと進んでいきます。
 ある丘の頂上までたどり着いたとき、びゅうっと強い風が吹きぬけました。
 地面スレスレを大きなワイバーンが飛んでいったのです。
「おっとっと」
 風にあおられてよろけたお兄さんは、うっかりチーズを落としてしまいました。
 チーズは丘からコロコロと転げ落ちていきます。
「あわわ、待ってくれぇ」
 お兄さんもチーズを追いかけて急な坂を駆け下ります。
 丸いチーズは重力加速を受けて、ぐんぐん速度を上げていきました。
 そして勢いがつきすぎたお兄さんの足もまた、止まらくなってしまったのです。
「ひええええええ!」
 恐怖の声を上げるお兄さん。膝がガクガクして今にも倒れそう。
 それでも奇跡的にバランスを保ったまま、お兄さんは猛烈な勢いですっ飛んでいきます。
 と、その時、先を行くチーズが急に消えてしまいました。
 丘の斜面に大きな穴が空いていたのです。
 チーズが深い深い闇に落ちてゆくのを見て、お兄さんは慌ててブレーキをかけます。
「ちょっ、やばっ、あっ!」
 しかし、限界を超えたお兄さんの足はあっけなく崩れ落ちました。
 お兄さんはもんどりうってコケてしまいます。
「うあああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
 そのままお兄さんは、チーズと同じように穴へと落ちていってしまいました。

「あいててて・・・」
 気がつくと、お兄さんは地底の奥深くの洞窟にいました。
 体のあちこちは少し痛むものの、奇跡的にケガはありません。
 とりあえずお兄さんは出口を探すことにします。
「・・・〜〜♪」
 ふと、かすかに音が聞こえてきました。
 音のほうへと進んでいくと、だんだんはっきりと聴き取れるようになってきます。
「ころりんころりんすっとんとん♪」
「おチーズころりんすっとんとん♪」
 なんとも可愛らしい歌です。
 お兄さんは歌に釣られて、声のほうへと向かいます。
 すると、急に洞窟が開けて、そこには無数の人影がありました。
 なんと、歌を歌っていたのは、お兄さんの好みド真ん中の小さな女の子たちでした。
 女の子たちの頭には丸い耳、お尻には細長い尻尾。
 どうやらここは、ねずみの魔物さんたちの巣穴だったようです。

「ころりんころりんすっとんとん♪」
「おチーズころりんすっとんとん♪」
 ねずみさんたちは、お兄さんのチーズを囲んで楽しそうに歌っていました。
 みんなでチーズを分け合って、仲良く食べているのです。
「チーズがマッタリポンと舌の上で踊るでチュ!」
「なんチューもんを。なんチューもんを・・・」
「でも、なんでチーズが落ちてきたんでチュかねー?」
「ねー?」
「あれー? 誰かいるでチュ」
「人間さんでチュー」
 ねずみさんたちがお兄さんのことに気がつきます。
 お兄さんはチーズと一緒に穴に落ちてしまったことを話しました。

「そかー、お兄さんのチーズだったんでチュか」
「勝手に食べてごめんなさいでチュ」
 ねずみさんたちは素直に謝りました。
「いいいよいいよ、どのみち一人じゃ食べ切れなかっただろうし」
 お兄さんは鷹揚に許してあげます。
 幼女たちが喜んでくれたのなら何よりです。
「お礼するでチュー」
「なにがいいでチュか?」
「一緒に『お餅つき』するでチュ」
「お餅つき!いい考えでチュ」
 ねずみさんたちがチューチュー盛り上がります。
「餅つき?」
 おいしいお餅をご馳走してくれるのかな
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