「どうでしょうか、先生」
と、ベッドに横たわる少年は医師に尋ねた。
少年の肌は洗い立てのシーツよりも白く、長い間病に伏せっているようだった。
「まあ待ちなさい、トーマス君」
医師はすぐには答えず、トーマスの腕に注射器を刺して採血を行った。
そして採取した血液を試験管に入れ、なにやら試薬を混ぜる。
特に変わった様子もなく血液は赤いままだ。
「やはりな」
「わかったんですか!?」
トーマスが医者の言葉に顔をほころばせる。
彼は幼い頃から病気がちで、ここ数年はまともに出歩くこともできないほど病状は悪化していた。
しかも、今までどの医者に診てもらっても、原因不明の病気と言われるだけ。
もう一生治らないのか、このまま死んでしまうのか。
そんな絶望の底にいたトーマスのところに、どこからか噂を聞いたこの医師が現れたのだ。
「君の病気はエーリッヒ・ベルガー病だ」
「エーリッヒ・・・?」
「簡単に言うと、君の身体は生まれつきある因子を欠いている」
医師はそう言って先ほど検査した試験管を見せる。
「この薬品が反応しなかったことが証拠だ。かなり稀な病気だよ」
「はあ」
「その年で射精もまだなんじゃないかね」
「え? あの、はい」
唐突に精通の話になってトーマスは困惑する。
「原因は同じだ。生命エネルギーである魔力を、君はほとんど生み出すことができない」
「魔力を? それで、治すことはできるんですか?」
「完治は無理だ。だが、薬を飲めば、普通に暮らせる位にはなれるだろう」
「本当に!? ゴホッゴホッ」
トーマスは興奮のあまり咳き込んでしまう。
「落ち着きなさい。実は薬ももう用意してある。予想はしていたからな」
そう言って医師が合図をすると、人足の男がやたらにでかい木箱を運び込んできた。
目を丸くするトーマスをよそに医師は箱の蓋を開ける。
すると中から、ぴょこんと大きな花が飛び出してきた。
「おい、起きろ。出番だぞ」
「はぁい」
モゾモゾと植物が動いたかと思うと、その下から女の子の顔が出てくる。
年の頃は十三、四歳くらいで、ドングリまなこの可愛らしい子だ。
よいしょよいしょと箱をまたいだその足は根っこのよう、いや根っこそのものだった。
「こんにちは! わたしララっていいます。トーマスさんのおくすりです」
「・・・・・・は?」
突然のお薬宣言に、トーマスはぽかんと口を開けた。
「彼女は特別な品種のマンドラゴラだ」
「そうです。特別なんです」
ニコニコとララという魔物は得意げな顔をする。
「この子には君のような病気に効く成分が詰まっている。つまり、彼女が君の薬だ」
「はあ」
「君はこれから毎日、彼女の薬を飲み続ける必要がある。生きている限りはずっとだ」
「一生・・・」
「後のことは彼女に訊きたまえ。あと、お代は出世払いでかまわん」
「いいんですか?」
「興味本位で手に入れてはみたが、正直、世話するのが面倒くさかったところだしな」
身も蓋もないことを言うだけ言うと、医師はさっさと片付け始めた。
「また一月後くらいに様子を見に来る。ではお大事に」
医師が去り、後には呆然とするトーマスと微笑むララだけが残された。
「ええっと、ララさんだっけ」
仕方なくトーマスはララに話しかける。
「はい! 早速おくすり飲みますか?」
「その、薬ってのはどうやって飲むんだい?」
「こちらに説明書がありますよ」
ララは自分が入っていた箱から、一枚の書類を取り出してトーマスに渡した。
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lt;
lt;名称
gt;
gt; マンドラゴラ・Sシロップ
lt;
lt;成分
gt;
gt; 1ml中に次の成分を含有
有効成分 マンドラギン酸スピリチウム 33mg (エキスとして)
lt;
lt;性状
gt;
gt; 無色透明の液で、特異の味と芳香がある。
lt;
lt;効能又は効果/用法及び用量
gt;
gt;
下記の疾患に伴う魔力欠乏症。
慢性魂魄劣化症、エーリッヒ・ベルガー病、呪縛性チャクラ炎
膣分泌液として、通常成人1回30〜50mlを1日1回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
lt;
lt;使用上の注意
gt;
gt;
以下の薬とは併用しないこと
・勃起不全治療薬(勃起が止まらなくなるおそれがある)
使用後、性欲を持て余す場合は性交・マスターベーションを行う。
下記の方は医師と相談すること
・男色家 ・熟女趣味の方 ・その他クンニリングスに抵抗のある方
lt;
lt;取り扱い上の注意
gt;
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本品は生き物
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