「おーい!ねーちゃーん!」
俺はたいまつを片手に、暗い谷底へと声を張り上げた。
しかし帰ってくるのはこだまばかり。
「くそっ、どこ行きやがったんだよ」
空を見上げて毒づくと、もう満月は高く登っていた。
今日の昼、姉ちゃんが山にキノコを取りに行くと出かけてからもう半日以上経つ。
小さい頃から山にはよく出かけていたから、今更迷うなど考えられない。
だとしたら怪我で動けないか、何か事件に巻き込まれたか。
嫌な予感だけが頭をよぎる。
これはまるで、親父とお袋が事故で死んじまったときみたいな……。
月の光を大きな影が遮り、俺ははっと顔を上げた。この山の主、ドラゴンのレイナさんだ。
旦那さんが人間だからか、周辺の魔物に睨みを利かせてくれている。
だから姉ちゃんが魔物に襲われるということもないはずなのだけど。
レイナさんは俺の姿を見ると、巨竜の姿から女性の姿になって舞い降りてきた。
「ティムか。ちょうどよかった」
「レイナさん! もしかして姉ちゃんを……」
「うん? お前の姉がどうかしたのか?」
俺は事情を説明する。
「そうか。まずいな」
レイナさんが顔をしかめる。
「まずいって、なにが?」
「少々やっかいな魔物が流れてきた。一応追い払ったが、もしやと思ってな」
「そっ、それってどんな奴ですか?」
「ダークスライム、だ」
俺はレイナさんが流れの魔物を見かけたという辺りへ案内してもらうことにした。
「ダークスライムはな、男だけでなく女も襲うのだ」
レイナさんによると、その魔物は、人間の女を襲って溶かしてしまうのだという。
嫌な予感がますます強くなってくる。
「あ、あれは」
ほどなく、俺は打ち棄てられた女物の服を見つけた。
「姉ちゃんの服だ!」
「遅かったか。ちっ、我のシマで好き勝手してくれる」
そんな、姉ちゃんが……。
俺は声にならない叫びを上げて膝をつく。
「ごめん姉ちゃん、一人で行かせたりして、俺、俺っ!」
「しっかりしろ」
うなだれた俺の頭を、レイナさんが強引に引き上げた。
鋭い視線が突き刺さる。
「姉に申し訳ないと思うのなら」
そっとレイナさんは奇妙な球体を俺の手に持たせた。
「今度はお前がしっかり守ってやるのだな」
俺はかつて姉ちゃんだった塊を家に持ち帰り、レイナさんに言われたとおりの処置を施した。
大きな桶にたっぷりの水と各種栄養素、そして……俺の精液。
そこにスライムコアをそっと沈めておくと、それはやがて人の姿を形作った。
こうして、俺の姉ちゃんはダークスライムとなったのだった。
「姉ちゃん、具合どう?」
「うん、絶好調だよ」
大きな桶の中から姉ちゃんが答えた。
「大分スライム暮らしにも慣れてきたかな。ほら」
桶からずるりと紫の液体があふれ出し、俺のところまで流れてくる。
それが盛り上がったかと思うと、姉ちゃんの肉体が現れた。
地下室を照らすランプの光を反射して、半透明の裸の身体がぬらりと光る。
「もう自由自在! 前みたいに崩れたりしないよ」
自慢げに胸を張る姉ちゃんの乳房がぷるんと揺れた。
昔から見慣れてるはずなのに、なんだか俺は気恥ずかしくなってそっぽを向いた。
「あー、でもずっと地下室で滅入ってくるんじゃないか」
「こういう暗くてじめっとした所が落ち着くんだよ。スライムだし」
魔物を家に住まわせているなんてバレると騒ぎになるからと、姉ちゃんは自分から地下室にこもっている。
表向きには姉ちゃんは行方不明ということになっていた。
「それよりティム、お姉ちゃんお腹すいたなー」
姉ちゃんが甘えるような口調でにじり寄ってくる。
「うん……」
ダークスライムの食料、それは言わずもがな人間の体液である。
そして姉ちゃんが会うことができる人間は俺だけだ。
俺の頬にゼラチン質の手が添えられる。
「まずは前菜から、いただきまーす」
はむっ、と姉ちゃんのプルプルした唇が俺の口をふさいだ。
ぬらりと舌が侵入し、口内をまさぐっては俺の唾液を吸い取っていく。
子供の頃のお遊びのキスとは違う、ひどく淫靡な大人のキス。
これはお食事なんだと自分に言い聞かせながら、俺は行為に溺れはじめた。
ときおり、姉ちゃんは舌先を溶かし、甘ったるい粘液を流し込んでくる。
思わず飲み込むと、身体の芯がかあっと熱くなってきた。
催淫の魔力を秘めたダークスライムは、全身が媚薬も同然なのだそうだ。
「そろそろメインのお料理の準備は出来たかなー?」
姉ちゃんの身体から伸びた触手が俺のズボンを引きずり下ろす。
俺のイチモツは自分でもあきれるほどいきり立っていた。
「ふふっ、おいしそー」
姉ちゃんの舌先が尿道口をちろちろと舐めてくる。
「うう、やるならさっさとやってくれよ」
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