蜥蜴娘と蛇娘

ガネットを出発して2日。
俺達はカナン街道を道なりに進み、カラタ樹海にさしかかろうとしていた。
このカラタ樹海とは長く深い樹海で、たくさんの魔物が出ることで有名な難所である。

「なあ、ティタン。そろそろ降りて、自分で歩いてくれないか。」

「嫌よ〜。だって、貴方に巻き付いてるととっても落ち着くんですもの。お願い、もう少しだけ。ね?」

さっきからティタンは俺の背中に巻き付いて、降りようとしない。
おかげで俺はずっと彼女をおんぶする体勢になっている。
ティタンの下半身はヘビだが、彼女の意思で人間とおなじ二足歩行ができる。
なのに彼女はそれをしようとしない。

「ティタン、そろそろ自分で歩いたらどうだ?」

「あら、私にヤキモチ?リザードマンのあなたじゃ、ダーリンにおぶってもらえないからかしら?ホント中途半端な種族よね。」

「な、なんだと!?」

「落ち着け二人とも。ティタンも挑発するのをやめろ。」

ティタンとエフィはいつもこうだ。
性格的にあわないらしく、二人の言い争いは止まる事を知らない。
ティタンが挑発し、エフィがそれに乗る。
これがすでにパターン化していた。

「お、お兄さん方。もしかして樹海を通ろうとしてるのかい?」

前から歩いてきた一人の行商人が俺に話しかける。

「そうだけど・・・。」

「悪い事は言わん。やめておきなさい。」

「どういう事ですか?」

「今、樹海には『男狩り』と名乗る魔物達が出とる。下手をすると一生帰ってこられないよ。今月はもう3人もやられた。お兄さん達、ここを通るっていうことはおそらくサマデントかフォルヘストに用事があるんだろ?なら、ケルーク湖を、迂回していきなさい。」

「ご忠告感謝します。しかし、俺達はこのまま先に進みます。」

「大丈夫ですよ。アタイはともかくこの三人は強いですから。そこらの魔物には負けません。」

「そうか。そう思うなら先に進みなさい。でも、後悔だけはしないようにな。」

そう言って、行商人は俺達が進んできた方向へ去っていく。
俺達は行商人にお礼の意味を込めて、手を振った。
彼の姿が見えなくなり、俺達は樹海へと入っていく。
『男狩り』ってどんな魔物なのだろうか。
俺は『男狩り』の話を聞いてますます樹海を進みたくなった。
理由は一つ。
その魔物達と戦いたいからだ。
どちらかと言うと俺は好戦的ではないと自分で思っているが、前のティタンとの戦いで俺の実力不足を痛感した。
もしかするとそれまでの自分は己の力を過信していたのかもしれない。
まだまだ俺は弱いのである。
だから強い相手と戦って、腕を上げなければならない。
これがわかっただけでも、この旅をさせてくれた師匠に感謝しないとな。
そう思いながら根が張り巡らされた樹海の道の奥へと進んでいった。





「なんにも出てこないわねぇ・・・。」

ティタンが退屈そうにそう言う。
樹海の道を進んでいくが『男狩り』どころか、他の魔物すら出てこない。
普通スライムとかゴブリンとかはいるだろう。
でも、そいつらでさえ出てこない。
いるのはただの昆虫。
俺達の進んでいる道は街道を歩くより安全なものだった。

「もしかしてワタクシ達に恐れを抱いているとか。」

「いや、ワタシ達がただ遭遇していないだけかもしれないぞ。こんなに広い樹海だからな。」

「でも、行商人さんは魔物達Wって言ってましたよね?複数もいるのに会わないなんてことあるんでしょうか?」

「おそらく『男狩り』という奴等は複数で行動する、いわばグループで襲い掛かってくるのだろう。だから、腕の立つ冒険者が三人もやられたんだ。」

なるほど、理にかなっている。
戦闘に関して言えば、リザードマン種はプロフェッショナルだ。
彼女達は個人戦闘の技術だけでなく、集団戦闘の要領も心得ている。
だからリザードマンは戦闘種族として名を馳せていた。

「さすがリザードマンよね。蛮族の考えることはすぐわかるみたい。」

「ば、蛮族!?」

「だって、そうじゃない。戦闘ばかりを追い求めるなんて野蛮な者達がすることでしょ?リザードマンは魔法が使えないから、力に頼るしかないものね。」

「言わせておけば!!」

「こらこら、こんな所で喧嘩してる場合じゃな・・・、うわっ!!」

何かが足に巻きついた。
俺はそれにひっぱられ樹海の奥へ連れて行かれる。

「うわぁぁぁっ!!??」

「ダーリン!?」

「カイっ!?」

「カイさん!?」

すごいスピードで俺の身体が引きずられている。
途中、そのスピードのまま何度も木にぶつかった。
運ぶなら運ぶでもう少し丁寧に運べないか。
おかげで何もしていないのに服がボロボロである。
やがて樹海の木々が少しひらけたところに行き着いた。

「あらあら結構な上玉じゃない。クン
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