フリントウッドの森を出て四日。
ついに俺達はサンバロ山の麓にある鉱山都市、ガネットに到着した。
町は活気に満ちていて、とても発展した様子である。
俺が驚いたのはそれだけじゃない。
魔物が普通に道を歩いてる。
オーク、ゴブリンにワーキャット、それにリザードマンなど様々な魔物が。
その様子を見て、誰一人怯えることもない。
これが彼等の常識なのだ。
「おや、兄ちゃん。旅人か?」
筋肉質の気の良さそうな男が話しかけてくる。
その人もエフィやテテスを見ても、何のリアクションもしない。
もはや驚くこともないのだろう。
「ああ、そうだよ。」
「魔物連れの旅人は珍しいな。これかい?」
そう言って小指をピンと立てる。
つまり恋人なのか、と聞きたい訳だ。
「いや、そういうわけじゃ・・・。」
「わっはっはっは、照れるなって。ウチのカカァも魔物なんだ。ワーウルフなんだがな。」
「へぇ、そうなんですか?」
「この町じゃ結構当たり前のことだぞ。で、兄さんがた。どっから来たんだ?」
「セイオス村からです。最初は一人だったけど、道中でどんどん仲間が増えて今じゃこの通り。」
「セイオス村・・・ってことは、途中ヴェルキスに寄ったのか?」
途端に男の顔が苦々しくなる。
何か嫌な思い出でもあるのだろうか?
「嬢ちゃん方、大変だっただろう?あそこの人間達を俺はどうも好きになれねぇ。人間ってだけでエリート、みたいな考え方。あんなのクソくらえだ。」
俺と同じ意見の人間がいた事に嬉しくなる。
こういう人と酒を飲めばきっと楽しいだろうな。
「でもこの町は安心さ。ウチの市長は教団のことを嫌っていてね。それでこの町では教団の布教を禁止している。この町に魔物と人間の違いなんてありゃしないんだ。お、ちょうどいい所に・・・。お〜い!!」
男は一人のワーウルフに大声で呼びかける。
彼女も男を見つけるとトコトコ近寄ってきた。
どうやら彼女がこの男の妻らしい。
「どうしたんだい、アンタ。ん、この人達は?」
「こいつ等は旅の一行さ。珍しいことに魔物と人間の、な。」
「あら本当だわ。しかもこんな可愛い子を二人も連れて・・・。」
そう言うと奥さんはエフィとテテスに話しかける。
「で、どっちが坊やの恋人なの?」
「こ、こいっ!!?」
「びとっ!?」
いきなり話を振られ、大慌てするエフィとテテス。
奥さんは更に楽しそうな笑みを浮かべた。
絶対に楽しんでいるな、これは。
「その反応・・・、もしかして両方違うの?」
「えと、ワタシは前にカイに結婚を申し込んだんだけど、キッパリ断られてしまって・・・。」
「アタイは助けてくれたカイさんに恩義を感じていて、その・・・。」
「という事は二人とも坊やに好意はあるのね。モテモテじゃない。」
「あは、あははは・・・。」
笑うしかなかった。
今の俺達では絶対にこの奥さんにはかなわない。
違う実戦経験は俺達の何十倍も上だ。
「うりうり、このへスティお姉さんに全部話しなさいよ。」
「お前はもうお姉さんって歳じゃないだろ。」
「あら、まだまだ若いつもりよ。なんなら試してみる?ベッドで。」
「望むところさ。」
そう言って俺達の前なのにも関わらずキスをする。
これが大人か。
俺達は赤面しながら、その光景を見ていた。
夫婦円満とはこの事を言うんだろうな。
「じゃ、私はまだ買い物があるからもう行くわよ。」
「おう、じゃあな。」
「なるべく早く帰ってね。」
「わぁってるよ。」
そう言ってサササッと別の場所へ向かう。
男は「やれやれ」言いながらも、顔はにやけていた。
なんだ、嫁自慢したかっただけか。
それで気分を良くしたのか、男は良いところに案内してやると俺達をどこかへ連れて行く。
そして一件の大きな建物に行き着いた。
中に入るとムワッとした熱気に包まれる。
どうやら鍛冶場のようだ。
カーンカーンと鉄を打つ音が響き渡っている。
「ここ、なんですか?」
「ここは俺の仕事場さ。職人ギルドって言うんだぜ。」
「ハインツ親方!!いつこちらへ!?」
「おお、ジーン。ちょうど今来たとこだ。」
一人の青年が男をハインツと呼ぶ。
この男の名前はハインツと言うのか。
ようやく名前を知った。
ん?ハインツ・・・?
ハインツってまさか・・・。
フィナもテテスもその名前を知っているようで、しきりにお互いの顔を見合わせていた。
予測が正しいかどうか、意を決して聞いてみる。
「あの、もしかしてハインツ・フローギルトさんですか?」
「ん?ああ、まだ名乗ってなかったか?そうだ俺が天下に名だたる名工、ハインツ・フローギルトだ。」
普通なら自分で言うなとつっこんでいるだろう。
しかし、この人は違う。
このハインツ・フローギルトと
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