「霧が濃くなってきたな・・・。」
深い森の中、俺達は方位磁石をたよりに道を進んで行く。
ちょっと前までカラッと晴れていたのに、今では一面の霧の海。
静寂が更に不気味さを引き立てる。
「地図では今どの辺りなの?」
「今は・・・、ここ。フリントウッドの森だと思う。」
「ふ〜ん、次の村は?」
「森を抜ければ、ガネット鉱山都市があるサンバロ山が見えてくるぜ。」
ガネット鉱山都市まで来れば一週間ほどでサマデントに着く。
このフリントウッドの森はセイオス村とサマデントがちょうど中間地点というところか。
そう言えば、エフィとテテスはサマデントに着いたらどうするんだろう。
少し気になったので彼女達に聞いてみた。
「決まってるじゃないか、お前と一緒に旅を続けるんだ。」
テテスも当然とばかりに頷く。
少しホッとした気分だった。
自分でも驚くほど、このメンバーとの旅を気にいっている。
できるなら、カルカロス王国まで・・・。
いや、その後も一緒にいられたらな、と思う。
俺にも良い仲間ができたな。
「どうしたんですか、カイさん?」
「い、いや!!何でもない!!それよりさっさとこの森を抜けようぜ!!」
少し早足で霧の中を歩く。
自分で言うのも何だが、照れ隠しという奴だ。
足が速まっても二人はしっかり俺に着いてくる。
いくら進んでも森の出口は見えない。
それどころかどんどん霧が濃くなっていくった。
さすがにおかしい。
「なあ、霧深くなってないか?」
「そう言われてみれば・・・、そうですね。」
一度、立ち止まり辺りを見回す。
が、見えるのは木、木、木。
なんか気味が悪くなってきた。
「これ、オバケとか出てきそうじゃない?」
「お、おおオバケなんかいる訳ないじゃねーか。ば、バカじゃねーの。」
「大丈夫ですか?カイさんの顔、真っ青ですよ。」
「カイ。アンタもしかして・・・。オバケ怖いの?」
「は、ははははは。そ、そんな訳ねー。」
エフィさん、大正解です。
俺は昔から幽霊とかそういうのがダメだった。
それもこれもあのクソオヤジが幼い頃の俺を脅かしまくったからだ。
井戸の中から出てくる女の亡霊の話は今になってもトラウマの一つである。
そんな俺の様子になんとも意地悪な顔をするエフィ。
「じゃ、ワタシがひとつ良い話をしてやろう。むかしむかし、とある小さな村に女の人が飛び込んだと言われる井戸が・・・」
「ひゃっ!!?カイさん!!?」
俺はテテスの胸に飛び込んだ。
お前も知ってるのかよ!?
つーか、その話有名なのか!?
無我夢中の俺はテテスの豊満な胸の谷間に顔を埋める。
そして話を聞かないよう耳を塞いだ。
「あらら、これは重傷だ。・・・って、テテス。何か満足そうな顔してない?」
「ひぇっ!?そんな事ないですよ〜。」
「しっかしまぁ・・・。ワタシを倒したカイにこんな弱点があるとはねぇ。世の中これだから面白いわ。」
テテスにしっかりしがみつく俺を見て、エフィはクスクス笑う。
その微笑みはとても暖かかった。
俺は怖い話が終わった事を確認しながら、テテスの胸から顔を離す。
「ん?」
霧の奥にぼんやりとした影が見えた。
最初は錯覚だと思ったがどうやら違うらしい。
その黒い影はしっかりと何かの形を成している。
「あれ、何だろう?」
「次はワタシ達を驚かそうって作戦か?生憎、そんなのに引っかかんないぞ。」
「違う。あれを見てくれ。」
彼女達も霧の奥に何かがあると気付いた。
どうやら俺だけが見えてる幻ではなさそうである。
「何でしょう、あれ。」
「ちょっと言ってみよう。」
黒い影にどんどん近づく俺達。
その姿は近づくにつれはっきりしてくる。
わかることはそれが小さいモノではないという事だ。
俺達が辿り着いたその場所は・・・。
「村・・・なのか?」
霧の中にたたずむ建造物群。
間違いない、村だ。
でもこんな所に村なんてあったか・・・?
慌てて地図を取り出し広げる。
しかし村を表す記号なんてない。
「ここの村、どうやら廃村みたいですよ。人の気配がしません。」
テテスの言う通り、村全体がしんとしている。
人どころか生物の気配さえしない。
「薄気味悪いところだな。カイ、こんな所さっさと・・・ん?お〜い!!」
エフィが何かを見つけたようだ。
廃屋の一軒に向けて手を振る。
「どうしたんだ?」
「今、人がいた。そこの窓から顔が見えた。」
「こんな所にか?」
エフィが指差した家に目を向ける。
当たり前だが、人の姿などない。
「おいおい・・・、まさかまた俺を脅かす気じゃ・・・。」
「違うって!!見てろよ!!!」
そう言ってテテスの服と俺の鎧を掴み、廃屋まで引っ張っていく。
乱暴にドアを開けると、そのままズカズカ
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