「なぁなぁ、次の村って何時着くんだ・・・?もうかれこれ一週間、人里というものを見てないぞー。」
エフィが不満そうにそう愚痴る。
ココドルド村から出て、丘陵地帯を抜けてからというもの一人も人に出会っていない。
地図にあるはずの村も廃墟と化している始末だ。
代わりに出てくるのは魔物だけ。
今日もスライムやゴブリンを5体ほど倒している。
「おかしいなぁ。予定ならもう少しで町が・・・。あ、あったあった。」
前方に町が見える。
おそらく地図に書いてあるヴェルキスという町だろう。
もうここまで来たのかと少し驚いた。
「おい、何でもいいから早く行こう。ワタシの水筒、もう空っぽなんだ。」
駆け足で町へ向かう俺達。
町へつくと大きな門が出迎えてくれた。
更に門番として2人の武装した人間が立っている。
まあ、今は何でもいい。それよりも早くどこかで飯を食おう。
そう思い、俺達は門番の横を通り過ぎようとした。
しかし、門番は手に持った槍をお互いに交差させる。
「止まれ」という合図なのだろう。
「何者だ?何の用でこの町に来た?」
「何者って・・・見ての通りの旅人だ。補給以外の目的があるように見えるのか?」
「魔物を連れて?」
「ああ、そうだ。」
「ふむ。」
片方の門番が顎に手をやり俺達を見た。
やがて槍を持ち直し俺たちに「入れ」とうながす。
「まあ、いいだろう。言っとくがこの村では魔物はあまり歓迎されない。」
「何故だ?」
「理由は二つ。この町には教会の聖堂がある事と、もう一つは最近ここら一帯で魔物の盗賊団が出ているからだ。」
「盗賊団?」
「気になるんだったら酒場へでも行って来い。俺たちよりくわしい情報が手に入るだろう。」
町に入った俺達は食事ができるところを探す。
どこかいい場所はないか。
そういえば門番が酒場とか言ってたな。
酒場なら飯も食えるだろう。
「すみませ〜ん。」
近くを歩いていたおばさんに話しかける。
「酒場ってどこですか?」
「ああ、山の鉄鋼亭のことだね。そこならこの通りの突き当たりにあるわよ。ん・・・?」
おばさんは怪訝な目つきでエフィを見る。
やっぱり魔物は歓迎されてないようだ。
ひとつひとつの仕草でわかる。
「貴方、魔物なんか連れてるの?」
「ええ、まあ・・・。」
「気をつけなさいよ。魔物は野蛮だからね。」
小声でそう話すおばさんに少しムカッときた。
そんな俺の気持ちを察したのか、エフィは俺の肩を叩く。
エフィもおそらく辛いのだ。
俺達は足早におばさんから離れる。
それと同時に周囲の人間から向けられる冷たい視線。
魔物の何がいけないって言うんだ・・・。
ようやく俺達は酒場『山の鉄鋼亭』につく。
中に入るとアルコールの臭いと酒を飲んでいる人間の喧騒が突き抜けた。
「いらっしゃい。」
俺達は人の間を抜け、カウンター席に腰掛ける。
そしておいしそうな料理を4、5品注文した。
「おや、そこの嬢ちゃん。魔物だね。」
「ああ。」
「お嬢ちゃんはお酒かい?それとも他のにするかい?」
店のマスターはエフィに普通に接する。
俺達はそのことに目を丸くした。
「マスターは差別しないのか?」
「ああ。私はこの町の出身じゃないからね。私の町は魔物と共存していてね、小さい頃からいっぱい魔物は見てきたよ。」
人の良い笑みを浮かべるマスター。
少し気分が晴れる。
やはりこういう人もいるんだよな。
エフィも柔らかい笑みになる。
「ほら、エビピラフとシーフードリゾットだよ。あと、これサービスだ。」
そう言って料理とビールが注がれたコップを置かれた。
人の優しさって暖かいものだと実感する。
「マスター、俺が女だったらあんたに惚れてるよ。」
「そうかい。でも、私は妻一筋なんでね。」
くそぅ・・・、非のうち所のない良い男じゃねえか。
この人になら抱かれてもいい。
「よし、マスター。今日はここでお腹いっぱい食べてくぞ。な、エフィ。」
「ええ。たくさん食べるから覚悟してよ。」
「うちのコックもヤワじゃないからね。負けないよ。」
マスターとの会話が弾みながら、食事が進む。
色んな話を聞かせてくれた。
マスターの若い頃のこと、最近の客のこと。
彼は盗賊団の話もしてくれた。
なんでも盗賊団の首領はミノタウルスで、こいつが強いらしい。
既に村を2、3個つぶしていると教えてくれた。
また料理がうまいからつい長居してしまう。
自慢するだけのことはある。
ここのコックはかなり料理が上手い。
素人の俺でもわかるほどに。
おそらくこんなに気持ちよく酔ったのは生まれて初めてだ。
この店、絶対にまた来よう。
そんな事考えていると・・・。
「よお、兄ちゃん。彼女連れでこんな所に来たのか?」
一人のヒゲ面の
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