俺は船から降り、地に足をつける。
船とは違うしっかりとした陸地の感触。
久々の陸に心が踊り、言いようのない充足感に包まれる。
間違いない・・・。
「着いたぞ、グルベン大陸!!」
大きく伸びをしながら、そう吼える。
俺の後からぞくぞくと仲間達が降りてきた。
皆、久々の地面に喜びを隠せない。
「やっと来たな。もうエフレーム大陸じゃないんだな、カイ。」
「長かったよぉ・・・。ボクはしばらく船の旅はいいや。」
「着きましたねぇ、久々の石の地面です。」
「ダーリン、ここがワタクシ達の目的の・・・。」
「ああ、グルベン大陸だ。カルカロス王国がある、大陸だ。」
一斉に歓喜の声が上がる。
やっと自分達が別の大陸に渡ってきたんだという実感がわいた。
夢なんかじゃない。
オーズタスに着いたんだ。
全員がとても穏やかな表情をしていた。
そんな俺たちの様子を見た船長が笑顔でこちらへ歩いてくる。
船長のニッコリ笑顔・・・、怖い。
「うぇっへっへっへ。兄さん方、俺等はここで失礼致します。なにぶん次の航海の準備があるんで。」
「ああ、わかった。ありがとう、船長。」
「いいんですよ。こっちが感謝したいぐらいだって前にも言ったでしょう。気にせんでください。うぇっへっへっへ。」
船長は笑顔を崩さず、頭を掻きながらそう言った。
俺達が彼に頭を下げると、そのまま自分の水兵帽をかぶりなおし去っていく。
他の船員達もトコトコ船長についていった。
俺達は彼等と逆の方向へ歩き出す。
今日はまずこの大陸の地図と旅のための食料を買わなければならない。
そのために俺達は町をぶらつくことにした。
・・・が、すこし前に味わった違和感が襲い掛かってくる。
これはヴェルキスと同じ・・・。
注意深く耳をすませると、町の人達の陰口が聞こえてきた。
「ねぇ・・・、あれ魔物よね。」
「本当だわ、何て汚らわしいのかしら。」
「教団に連絡を入れましょうよ、きっとあいつ等が怪盗騒ぎの犯人だし。」
どうやらオーズタスは教団の思想が広まっているらしい。
歓迎されていないことが肌でわかる。
セシリアが少し怯えていた。
ティタンが心配ないとセシリアの手を握る。
俺達はその声から逃げるように近くの雑貨屋に入った。
「あぁ、いらっしゃい。・・・って、ん?」
店主はこちらに目を向けると途端にしかめっ面になる。
ここもかよ・・・。
自然とため息が漏れてきた。
「あの、この大陸の地図って売っていますか?」
「地図ねぇ、銅貨20枚と30枚のがあるけどどれがいい?」
「じゃあ、30枚の方で。」
「はいよ。」
ひどく事務的な対応。
俺達は地図を受け取り、お金を払う。
店主は銅貨を一枚、一枚しっかり数えた。
「あんた達、どこから来たんだ?」
「エフレーム大陸だけど・・・。」
「やっぱり旅の人か。この大陸で魔物を連れていると色々と面倒な事になるぞ。」
「は、はぁ・・・。」
親切のつもりなんだろうが、大きなお世話だ。
俺達は話を早々に切り上げ、店を出る。
すると店の前に甲冑姿の男が三人立っていた。
男達は悪趣味な赤いマントに大きく教団のマークを掲げている。
こいつらが教団の騎士だということはすぐわかった。
「何の用だ?」
「失礼ながら、ちょっと話を聞かせてもらいたい。」
「何だ?」
「お前達は何者だ?リザードマンにオークにエルフ、あろうことかエキドナまでいる。何か企んでいるのではないか?」
「ずいぶん不躾な質問だな。俺達は見ての通り旅の一行だ。これで満足か?」
「何かそれを証明するものはあるか?」
「旅人の証明?んなものある訳がないだろう。」
「ここは教団の地だ。不浄な魔物が堂々と闊歩して良いような汚れた町ではないぞ。」
少し苛立ち始めるエフィをテテスが必死で止める。
ここで話を大きくすれば、後々厄介な事になりそうだ。
頭ではそう理解しているが苛立ちを止めることはできない。
そんな俺の様子を察知したのか、セシリアが先程のティタンと同じように俺の手を握る。
ああ、ここは耐えなければ・・・。
「まあいい。お前達が何かおかしな事をすれば、その時に剣を抜けば良いだけだしな。変な事を考えるんじゃないぞ、わかったな?」
キザっぽく手を振りそのまま去っていく騎士達。
同時に吐きそうになるほどの不快感が襲ってくる。
今はもう一刻も早くこの町から出たいと考えていた。
「何よ、あいつ等!!散々、ワタクシ達を馬鹿にしてっ!!」
テイタンが苛立ちを足に乗せて、地に叩きつける。
エフィも険しい顔で騎士達が去っていった方向を見ていた。
「エフィお姉ちゃん、大丈夫?」
「ああ。セシリアもよく耐えた、偉いぞ。」
セシリアの頭を撫でてやるエフィ。
この先、まだまだこういう事があ
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