サマデントを出航して10日。
俺達はドリコア海を航行していた。
ここまで来れば目的地、オーズタスに着くのに2日とかからない。
海の旅ももうすぐ終わりを迎えようとしていた。
色んなことがあったと物思いにふける。
海底神殿、リアナ、霧の海、幽霊船・・・。
こう思い返してみると、なかなか感慨深いものだな。
しみじみとした気持ちで潮風に当たっていると、元気な2人がバタバタと駆け寄って来た。
元気な二人とはもちろんセシリアとレイレイのことである。
「ねぇ、これ見てよ!!レイレイちゃんが作ったんだよ!!」
「えっへへ。はじめてだったけど上手にできたでしょ、カイ兄ぃ?」
セシリアが薬品の入った一本のビンを手渡す。
それは既に二度お世話になった、水中で呼吸ができるようになる薬だ。
透き通るような青色はセシリアが作った物と変わらない。
とても上手にできたのが嬉しいのか、レイレイは顔を赤くしている。
俺はそんなレイレイの頭をなでなでしてやった。
「すごく上手にできたな。今度、俺にも作ってくれないか?」
「うんっ!!レイレイ、カイ兄ぃのために作るよっ!!」
珍しく素直な返答に少し驚いた。
てっきり「カイ兄ぃになんか作ってあげないよ〜。」とでも言われるかと思ったのに。
何故かそれが嬉しくてわしゃわしゃ彼女の頭を撫でた。
フワフワとした髪の毛が妙に気持ちいい。
その姿を見たセシリアが、いきなり俺の前でアピールを始める。
「あ、あのねっ!!ボク、しっかりレイレイちゃんに薬の作り方を教えることができたよ!!だ、だからねっ!!」
そう言って、俺の前で手をパタパタさせている。
どうやら撫でて欲しいようだ。
しょうがないな・・・。
俺は左手でセシリアの頭も撫でてやる。
少しウェーブのかかったレイレイの髪と違い、セシリアの髪はサラッと指の隙間を抜けていった。
俺達の姿を微笑ましく思ったのか、テテスが優しい表情を浮かべてやってくる。
彼女の手にはドッサリとクッキーの入った大皿を持っていた。
「テテス、それどうしたんだ?」
「厨房を借りて、作ってみました。皆も食べますよね?」
「食べる〜!!」
「あ、ボクにもちょーだい!!」
セシリアとレイレイはすぐさまクッキーに群がっていく。
それから無我夢中でクッキーを食べ始めた。
二人はもうクッキーしか見えていない。
その様子を見て、テテスは柔らかい笑みを浮かべた。
「ふふふっ、すっかり夢中ですね。あれだけ食べてもらえれば、アタイも作った甲斐があります。」
「テテスの作る料理はうまいからな。伸び盛りのあいつ等には大事な栄養源の一つだ。」
「アタイもあれぐらいの頃は・・・。」
テテスの言葉がそこで途切れる。
何かを見つめるように視線が宙を彷徨ったままだ。
「どうしたんだ、テテス?」
「いえ、何でもありません。アタイもあの頃は無邪気でしたね。日が暮れるまで遊び通していましたもの。」
「俺はセシリアぐらいの年の時は師匠の無茶な訓練を受けていたな。どこだかわからない森に放り込まれたり、滝から落とされたり・・・。」
師匠、本当にろくな事してねぇな。
今思い出してみるとあれは修行でも何でもない。
ただの俺イジメだったのではないか、そう思えるものばかりだった。
段々、気分がふさいでしまう。
「わわわっ、すみません!!」
「いや、テテスは悪くない。悪いのは全部、あのクソオヤジだから。」
「おーい!!カイ兄ぃ、食べないならレイレイが全部食べちゃうぞー!!」
「お兄ちゃんも一緒に食べようよー!!」
手を振って俺を呼ぶ。
本当にあいつ等なら全て食い尽くしかねない。
俺はテテスの手を引っ張ると、クッキーの皿へと近づいた。
ひょいと一つ口に運ぶ。
サラッとした優しい甘みが口中に広がった。
もう一つつまむと、次はテテスの口へとクッキーを運んでやる。
一度食べ始めると全員止まらない。
気がついたら、夢中で食べ進めていた。
「ごちそうさま。テテス、おいしかったよ。」
「はい、お粗末様でした。」
嬉しそうに後片付けを始めるテテス。
セシリアとレイレイは眠くなったのか、しきりにあくびをしている。
日差しも気持ち良いので無理もない。
昼寝でもするかと思い、甲板の端で横になる。
バシャァン!!
豪快な水しぶきとともに一体のスキュラが上がってきた。
俺とテテスはすぐに武器をかまえて、スキュラと向かい合う。
が、スキュラは俺達を視界にいれていない。
スキュラの視界の先は・・・。
「お嬢様っ、探しました!!さぁ、帰りますよ!!」
「イヤだっ!!レイレイは帰らないっ!!」
「わがままを言わないでください。族長様も心配なされてますよ。」
「あ、あの・・・。レイレイと知り合いですか?」
「何者だっ、貴様は
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