サマデントを出航して三日経った。
俺は潮風を浴びながら、海を眺めている。
視線の先には一体のシー・ビショップ。
あの時(前話参照)のシー・ビショップ、リアナ=エストレーだ。
何でも子供を作ってくれた俺にお礼がしたいということで俺達の乗る船『ノルディック号』の先導をしてくれる事になったらしい。
昔から船乗りには『シー・ビショップが先導してくれた船は沈まない』という伝説もあり、船員は全員喜んで彼女の申し出を受けた。
彼女が疲れたら休ませなければならないので自然と船の速度は落ちる。
しかし安全と引き換えの代価だと思えば安い物だ。
「リアナー、大丈夫かー!?無理するなよー!!」
「まだまだ大丈夫でーす!!」
どうやらまだまだ元気そうだ。
リアナのスピードは落ちることなく船の前を進む。
俺達の航海は驚くほど順調だった。
海の魔物も襲いかかってくるのはスキュラぐらいなもので、彼女達を追い払えばいい・・・のだが。
どうやら俺はまた一つ厄介ごとを抱えてしまったらしい。
それは・・・。
「やい!!次は負けないから、レイレイと勝負しろ!!」
波しぶきとともに船へと上がってくる一匹のスキュラ。
厄介ごととは他でもないコイツのことだ。
彼女はレイレイ=ホログラッタ。
何度負けても勝負を挑んでくるスキュラのちびっ子だ。
レイレイを見て、セシリアがタタタッと走って近づいていく。
「レイレイちゃん!!また来てくれたの!?」
「おうよ!!今日こそ、この男を海へ引きずり込んでやるんだからねっ!!」
「わ〜、頑張ってね。」
セシリア、応援する方を間違ってないか?
俺が負けたら海へ引きずりこまれるんだぞ。
まぁどうやっても負ける訳ないけどな。
俺の余裕を感じとったのか、レイレイは俺に飛びかかってくる。
「さぁ、今度こそぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ゴツン。
俺は剣の柄の部分で彼女のおでこを軽くノックする。
ノックされたレイレイは何をすることもなく、普通に地面へと着地した。
次第に彼女の瞳からポロポロ涙が落ち、すぐに自分の額をおさえる。
やっと何が起こったのか理解したのか、大声で泣きわめきながら自分が身につけていた壷へともぐりこんだ。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!??いたいよぉぉぉぉ!!!!」
壷の中から反響した声が聞こえる。
やれやれ・・・、またなのか。
強い弱いの問題じゃない、レイレイはまだ幼すぎるのだ。
泣き叫ぶ壷はすでにこの船の名物の一つとなっている。
船員達はまたいつものか、と笑っていた。
「ホラ、出てこい。」
「んっ・・・、ぐすっ・・・。」
俺は彼女の前髪を上げ、ノックした部分を見てやる。
額が少し赤くなっていただけで、コブとかにはなっていないようだ。
これなら何ともないな。
「い、痛いよぉ・・・。」
「あっはははははは。レイレイちゃん、またお兄ちゃんに負けたんだね。」
「だって!!だって、コイツ鬼畜なんだもん!!こ〜んな可愛い子に手を上げるなんて!!」
「自分で言うなよ・・・。」
まさか鬼畜呼ばわりされるなんて夢にも思ってなかった。
駄々っ子のようにわめくレイレイ。
その声を聞きつけたエフィ、テテス、ティタンがやってくる。
レイレイは三人の姿を見ると泣きついていった。
「また負けたよ〜!!」
ブンブン腕を振りながら、癇癪を起こしている。
何か俺が悪いことしたみたいだ。
エフィ達もレイレイをあやすのにすっかり慣れたようで、レイレイはすぐに泣き止む。
その光景が微笑ましかったのか、船員の一人が飴玉を渡せばすぐに上機嫌になった。
なんて扱いやすい・・・。
レイレイは飴玉をモゴモゴさせながら捨て台詞を吐く。
「次は勝つからねっ!!覚えてろよっ!!」
そう言って海へ逃げていこうとした。
しかし、セシリアが彼女の腕を掴んで止める。
「待って!!レイレイちゃんもお昼ごはん食べていかない?ボク達、もうすぐご飯なんだ。」
「ごはんっ!?うん、食べてくっ!!」
「じゃ、行こうよ!!」
しっかり手をつないで食堂へ向かうセシリアとレイレイ。
年齢も近いせいか、本当に仲がよい。
また少しにぎやかになったな。
「ダーリンの子供が二人に増えたみたいね。」
「なかなかのやんちゃだけどな。」
「あれぐらいが丁度いいんだぞ。ワタシも昔ああだったからな。」
「確かにエフィならそうだったかもしれませんね。」
「今もやんちゃだけどね。」
「なっ!?ティタン、どういう意味だ!?」
「言葉通りの意味よ。」
そうして取っ組み合いを始める二人。
こっちもいつも通りだな。
俺とテテスは笑いながら二人の争いをスルーする。
リアナに飯だと伝えて、食堂へと入っていった。
「ふぅ・・・、おいしかったですぅ。」
テテスは満足したように甲板の端
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