VS蜥蜴娘。

「・・・ったく、あのクソオヤジときたら・・・。」

思い出しただけでハラワタが煮えくり返りそうなのを我慢しながら、グチグチと不平をもらしつつ歩を進める。
そうでもしなきゃ歩く気力さえ無くなりそうだった。
三日も前のことなのに全く怒りが収まらない。

「今どこだ?」

気分を変えようと地図を広げて自分の位置を確認してみる。
しかし自分がセイオス村からそれほど離れていないことを知り、苛立ちがただ増しただけだった。
俺が今目指しているのは交易都市サマデント。
いろんな国の船が行き来しているあそこなら、きっとカルカロス王国についての情報も得られるだろう。
まあ、サマデントでさえセイオス村から最低でも三週間はかかるのだが。
なにぶんセイオス村はド田舎で、交通も不便極まりない場所にある。
マーノ山脈を迂回しなければ、サマデントはおろか他の街にすら行けないのだ。

「でも、まだ三日しか経ってないのか。先は長そうだな。」

そう言って地図から近くに村が無いか探してみる。
そろそろ食料も尽きそうだ。
一回、補給するのが得策だろう。
幸い金は村にいた頃に山賊討伐とかで稼いでいた。
この金額なら当分、飢えることはない。

「えと、あったあった。ココドルド村、か。よし、そこへ行こう。」

そう言って地図を広げていると茂みからガサガサという音が聞こえた。
背負っていた剣を構え、茂みの方を向く。そこには・・・。

「ん?旅の・・・、戦士だな。」

そこにいたのはたくさんの武器を背負ったリザードマンがいた。
弓、剣、槌、ナイフ。武器屋と見間違えるほどに。

「お、お前は・・・?」

「ワタシか?ワタシはリザードマンの戦士、エフィ=メルグドーズ。この背負った武器は全て今までワタシと戦った人間の物だ。」

たくさんの武器を誇らしげに見せ付けるリザードマン。
お前はどこの弁慶だ。
そんなツッコミを必死で飲み込む。

「で、次の獲物としてお前の剣を頂く。ワタシと決闘してくれないか?」

「剣で人を指さすな。・・・まぁ、いいぜ。このところ剣を振る機会もなくてな、すこし鈍ったかもしれないし。」

「ふん、減らず口を・・・。では、参るぞ。」

背負った武器を全て置いて、リザードマンは一本の剣だけを手に持つ。
すぐに俺の方を向くとすぐさま斬りかかってきた。
ギィンッ!!!
速くて重い・・・。なるほど、誇らしげにするだけある。
コイツ、普通に強い。
剣で受け止めた右手がジンジンする。

「どうした!?やっぱり口だけなのか!?」

「ああ、認めよう。お前は強い。」

「もう負けを認めたか?ならさっさと・・・。」

「だけど、俺には勝てない。」

そう言って俺は躊躇い無くヤツに斬りかかった。
一撃目は受けられることを前提に振り下ろす。
よしっ!!ガードは上を・・・、向いたっ!!
ギィンッ、キィン!!
決着は一瞬、見事に俺の作戦が決まった。
一撃目を全力だと見せかけ、しっかり姿勢を上向きに固定させる。
そこで一撃目を緩くし、すぐさま左手に剣を持ち替え横一文字に払った。
相手は姿勢を整えて俺の剣撃に耐える動作をしたのが敗因である。
それで反応が遅れたのだ。

「あ・・・、あっ・・・。」

カランカラン。
リザードマンは剣を落とす。
彼女の胸当ては大きく横一文字に裂けていた。
無論、ケガはない。

「さ。じゃあ、俺は行くわ。」

剣を鞘にしまい、歩を進める。
相手に一撃を決めた間違いなく俺の勝利。
これで文句はないはずである。
すると、リザードマンは思い切り俺に突進を仕掛けてきた。
しまった・・・、油断したっ・・・。
俺はそのまま倒れこんでしまう。

「クソッ、決闘じゃなかったのか!?・・・って、え?」

「なぁなぁ!!今のどうやったんだ!?」

目をキラキラさせながら俺に問いかけてくる。
どうやらもう敵意はないらしい。

「よし、決めた!!ワタシ、お前の妻になる!!」

「は!!??」

「名前、教えてくれ!!」

「カイ=シュターゼン・・・。」

「カイだな!!私の事はエフィって呼んでくれ!!」

今なんて言った?俺の妻になる・・・?
おそらく聞き間違いだ。
そう聞き間違い・・・であることを祈る。

「よし!!今日からワタシはカイの妻だ!!」

「ちょっと待て!!俺は認めないぞ!!」

「なんで?そんなに魅力ないか?」

上目遣いでそう聞いてくるエフィ。
確かに女の子として出ている所は出ているし、引き締まっているところはしっかり引き締まっている。抜群のスタイルだ。
だが、問題は一つ。

「お前・・・、魔物じゃん。」

「大丈夫、大丈夫。ワタシは気にしない。」

「俺が気にするっつーの!!」

「気にしなくていいよー。」

なんか会話が平行線を辿りそうなので、無視して先に進むことに
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