到着、サマデント。

吹き抜ける潮風。
響き渡る波音。
賑わいをみせる港町。

「やっと・・・、着いた・・・。」

俺達はようやく第一の目的地である交易都市サマデントに到着した。
夢でも幻でもない。
本当にサマカンドに着いたのだ。
ふと今までの道のりを思い返してみる。
仲間も増えたし、たくさんの人にも出会った。
今までのことが走馬灯のように流れていく。

「ここがサマデントか。カイ、随分と嬉しそうだな。」

「嬉しくないはずがないさ。三週間以上かけてやっとここに来たんだぜ。」

「そんな旅の終わりみたいに言わないでください、カイさん。アタイ達の旅はカルカロス王国に着くまで続くんですよ。」

「ああ、そうだな。」

危うく最終回にする所だった。
まだまだ終わらんさ。
あ、別に「俺達の冒険はこれからだ」とか言って終わる気もないぞ。
しんみりとした気持ちを振り払い、前を向きなおす。
そうだ。まだまだ旅は続くんだ。

「ワタクシも初めて来たわぁ。」

「お兄ちゃん。早速、カルカロス王国がどこにあるか聞いてみようよ!」

「そうだな。すみませーん。」

近くにいる色んな人々にカルカロス王国について聞いてみる。
ほとんどの人間がその国について知っているようだ。
何でも砂漠の国だそうで、香辛料や絹織物などで有名らしい。
しかもこの大陸からそれほど離れていないグルベン大陸にあるそうだ。
ただカルカロス王国はグルベン大陸の中心部に位置しており、グルベン大陸の交易港オーズタスから一ヶ月半ほど歩かなければならないとも教えてくれた。
ここから行くと船の移動日数も含めて大体二ヶ月といったところだろうか。

「結構遠いんだな。」

「二ヶ月ねぇ・・・。ダーリンがセイオス村を出てきてここまで来るのに三週間って言ってたから・・・。およそ二倍の道のりって事ね。」

「楽しみだなぁ。ボク、色んな国の本が読みたいの。」

「アタイは色んな国の料理を食べてみたいですねぇ・・・。」

口々に自分がしたいことを言っていく。
もちろん俺は騎士になるためにカルカロス王国へ向かっているのだ。
師匠から継承したこの剣術で、最強の騎士の称号『パラディン』を得たいという願いもある。
それが小さい時からの夢であり、目標だった。
今まで誰にも言えなかった野心がついポロリと出てしまう。

「へぇ、カイが『パラディン』か。カイならなれるかもな。」

「ダーリンならなれるわよ。」

「でもさ、『パラディン』にはどうなるんですか?」

「うっ・・・。」

正直、俺も知らない。
調べても誰に聞いてもわからないのだ。
おそらく騎士になってから知らされるのだろう。

「ボクの持ってる本には・・・、書いてない。」

セシリアは自分の持っているリュックから本を取り出し、パラパラとページをめくった。
だが、知りたい情報が載っていないことに落胆の声を上げる。
どうやら自分で見つけるしかないようだ。

「じゃ、早速交易ギルドへ行ってグルベン大陸行きの船を探そう。ワタシ達全員で乗るには船代がいくらかかるのかもな。」

「待ってよぉ。ボク、お腹すいてきた・・・。」

「ワタクシも。」

「アタイも。」

エフィが「先にギルドへ行こう。」といった瞬間、彼女のお腹が大きく鳴る。
あ、エフィの顔が真っ赤になった。
俺は笑いながらこう言う。

「まず飯を食おう。エフィ、船はそれからだ。」

俺達は近くの定食屋に入り、そこで腹ごしらえをする。





「出航する船がない!?」

ギルドの受付の思いも寄らない返答に思わず聞き直す俺。
飯を食べ終えて交易ギルドへ来た俺達はグルベン大陸行きの船を探した。
ところがグルベン大陸行きどころか他のところへ行く船すらない。
一体どういうことだろうか?

「はい。あちらを見てください。」

そう言って受付は窓の外を指さす。
海の真ん中に巨大な渦潮ができているではないか。
渦潮が灯台と灯台の間にある出入り口をすっかりふさいでいた。

「あれはおそらくカリュブディスの仕業でしょう。一体ではあそこまで大きくなる事ないんですが、何体も群生しているとああいった現象が起きることがあるんです。こちらもどうにかしたいんですが、どうしようもなくって。」

困り果てたようにそう言う。
確かにあれじゃどうあがいても出航はできない。

「今海岸にシー・ビショップが来ていて、なんとか彼女にカリュブディスをよけてもらおうと話しているのですが・・・。『男を出さないとよけないわ。』とか言ってよけないそうです。」

「でも、カリュブディスはスキュラと一緒なんだよな?それじゃ連れて行く前に・・・。」

「今回はカリュブディスのみだそうです。更にここら辺は浅いので、スキュラが出ることは滅多にないんです。」

それを聞いたティタンがにやりと笑った。
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