少女が見た英雄。

「ボク・・・、えぐっ。もうすぐボクじゃなくなるんです・・・。」

セシリアから告げられた衝撃の言葉に耳を疑う。
どういう事だかわからない俺達は彼女に何が起こったのかを訪ねた。
すると彼女は一枚の新聞を差し出す。
それはこの町独自の新聞「フォルヘルム・タイムズ」の今朝の朝刊だった。
早速俺達は部分を見てみる。


『アカデミー生徒連続惨殺事件発生!!犯人は同校の女学生か!?』
昨夜、森に「月食草」を採取しに行ったクルッコス王立アカデミーの生徒4人が何者かに魔法で焼殺されるという事件が発生した。
調べによると生徒達は次の授業で使うための「月食草」を採取する目的でクラスメイト6人とアカデミー近くの森へ入っていった。
「月食草」は通常、夜にしか咲かない花で生徒達は次の授業で使うその花を採取しに行ったとのこと。
生き残ったクラスメイト2人の目撃証言から犯人は、同校に通う女子生徒セシリア=ヘゲンウッドだと断定。
また彼女はその日、深夜遅くに一人で帰宅したという同校の教官からの証言が出ている。
この事件を聞いたオルストス王宮騎士隊はすぐさまセシリア=ヘゲンウッドの逮捕、および王立裁判所での裁判を行うことを発表した。
アカデミー側は彼女の死刑の代わりに、ある特例を裁判所に要求。
その特例とは彼女の特異能力を今後の学問に生かすために、彼女の精神を崩壊させて実験体にする、というものである。
被害者の遺族もこれに同意している。
この事件について・・・・・・・・・・・・・・(略)



「嘘でしょ・・・?だってセシリアは昨日の夜、ずっとワタクシ達と一緒に酒場にいたのよ。クラスメイトを殺すなんてできっこない。」

「ああ。それに俺達は昨夜は彼女をアカデミーまで送り届けたんだ。なのにこの新聞じゃ一人で帰ったってことになってる。」

「ボク・・・、このままどうなっちゃうのかなぁ・・・。もしか・・・。」

「オルストス王宮騎士隊だ!!ここにセシリア=ヘゲンウッドがいるとの通報を受けてやってきた!!おとなしく出て来い!!」

図書館にゾロゾロと入ってくる甲冑を着た騎士達。
騎士達はセシリアを見つけると、腕を掴み乱暴に彼女を連れて行こうとする。
俺達は騎士の肩を掴んで彼女の無罪を訴えた。

「離せっ!!」

「セシリアは昨日、俺達と酒場にいたんだっ!!殺人なんかできるわけないんだっ!!」

「そうなの!!昨日の夜はずっと私達と一緒にいたわ!!だから、セシリアは犯人じゃないの!!」

「ええいっ、離さないと斬るぞっ!!」

「まぁ、待て。話だけでも聞いてやろうじゃないか。」

「た、隊長・・・。」

騎士は剣に手をかける。
するとすぐさま右目に傷をつけた男が止めに入った。
その姿はまさに歴戦の勇将という感じだ。
騎士もその男の言葉に従い、手を元に戻す。
どうやらこの男は騎士隊の隊長らしい。
俺達は騎士隊長に昨日あったことを全て離した。
彼は顎に手をあててふむ、と考え込む動作をする。

「裁判は今夜、司法の鐘が鳴ったら始まる。それまでに証人を連れて来い。」

そう言い残して騎士隊はセシリアを連れて行く。
俺達の足は自然と駆け足になる。
酒場に行けば、証人はいる。
外の嵐は既に去ったようで青い空が見えている。
俺達は泥でぬかるんだ道を無我夢中で駆け抜けた。





・・・どういうことだ?
酒場から出てきた俺達は憤りの声をあらわにした。
それから力が抜けたようにドアの横に座り込む
酒場に着いたのは良かったのだが、中にいたマスターと従業員全員が昨日セシリアを見ていないと言っていた。

「どうなってるの・・・?全員がワタクシ達の事を覚えていても、セシリアだけが覚えていないなんて・・・。」

酒場の全員が口々にセシリアだけ見ていないと言っていた。
俺達のことは覚えているが誰一人、彼女のことを覚えている人間は一人もいないのである。
これはさすがにおかしい。

「もしかして誰かに買収されたのかもしれない。カイ、どうする?」

「んー・・・。」

「そうだ!!アカデミーへ行かない!?あの教官ならワタクシ達のこと、覚えているかもしれないわ!!」

「アカデミー・・・、確かにいいかもしれないな。よし、行こう。」

俺達は立ち上がり、アカデミーへと足を急がせる。
普段ならもうクタクタなのだが、今はそんな事を言ってられない。
一刻も早く証人を見つけなければ、セシリアの精神が壊されてしまう。
その危機感に動かされていた。
俺達はやっとのことでアカデミーに着く。
そして昨日門の前で話をした教官に会うことができた。
・・・が、彼はまるで俺達と初対面のような口ぶりで話し始める。

「はじめまして。あなた方はどちら様でしょうか?」

「昨日、セシリアを寮まで送った者です!!」

「ミス・ヘゲン
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