―離れ街の宿屋ー
「今日のは手応えあったんだけどね…やっぱり人間じゃだめなのかな…」
宿屋の一室で、長く赤い尾を揺らしながらロアはため息をついた。心細そうに小さくなった尻尾の炎が揺れる。風が吹けば消えてしまいそうな程弱々しい。
「でもさ、さっきの相手はこの闘技場で一番二番を争う様な選手だって聞くよ?ロアが強すぎるんじゃないか」
銀色の髪を無造作に掻きながら褐色の肌をもつ女性が言った。
「そうなると、ここにはもう用無しだなぁ。次はどこに行く」
浮かない表情のままロアは顔を上げた。瞳には生気が感じられない。一度燃え上がった炎がなえる時はいつもこう成る。
銀髪の女性は面倒くさいと思いながらもソレを隠す様にして、そばに置いてあった自分の荷袋の中から地図を取り出すと机の上に広げた。
「今いるのがここ、ハイニルク王国最北の街。ここから一番近い闘技場のありそうな場所はー…」
地図に指を走らせながら探すが、王国内にこれ以上の規模を誇る街は見当たらなかった。城下町にいけばあるかもしれないが、ここハイニルク王国はなにせ魔物嫌いが多い。下手に行けば袋だたきに遭う可能性もあるし、行ったはいいが試合に出れないなんて事も無い訳ではない。事実ここにくるより前は、何回も魔物だからという理由で門前払いされた。
まぁ、下手にここから動くよりもこの闘技場で自分を破る実力者を待つのが得策だろうが、逃げ腰は性に合わない。となると残された選択肢は国外だけだった。折角手に入れたグラディエーターの称号を手放すのは惜しいが、今までも似た立場を幾度となく彼女達は捨ててきた。
「とりあえず隣のガルバラ共和国に行ってから探そうか。荷造りしてくるよ」
銀髪の女性はそう言うと、地図を出したまま荷袋を担いで部屋から出て行った。木製の階段をおりる音が聞こえてくる。
椅子に座っていたロアはため息をつくと立ち上がった。先ほどより少しだけ炎が明るくなっている。
(いつまで落ち込んでてもしょうがないよな…次は出会えるはずだ…)
口には出さず決意を固めると、窓の外を見た。もうすぐ日暮れだ。茜色に染まった空はわたしを優しくてらしてくれる。淡い夕日の光を受けて朱色の鱗が明るく輝いた。
彼女達『サラマンダー』と呼ばれる種族は或る一定の歳になると夫と成る人間を探す旅に出る。中にはそんな事をするまでもなく、すぐ近くに配偶者となる男がいて機が熟した途端に結婚する子もいるらしいが、そういうのはごく稀のケースだ。多くのサラマンダーは強い夫を求めて流浪の旅をする。強者の戦士を見つけては決闘を挑み、自分を屈服させるだけの力を持つ男を捜し出すのだ。ロアもその一人で、各地の闘技場を回って夫を捜していた。
とは言うものの、魔物娘に勝てる人間はなかなかいない。例え戦士として訓練されていても一匹のゴブリンに伸されてしまう事等よくある話だ。それに加えて幼い頃から剣を振るうリザードマンやアマゾネス等の『生粋の戦士』に勝てるものは、数える程しかいない。事実ロアも人間相手に遅れを取った事は一度も無かった。何度も窮地に追い詰められた事はあるものの、決まって最後には相手のスタミナが切れ、逆転してしまうのだ。
今まで何度も夫にしてもいいと思わせる戦い方をする者はいた。短刀使いの少年や、長槍を使う長髪の男、太刀を使う東洋人。そのどれもがあと一歩の所まで追い込んできたのだ。しかし…勝ってしまう。自分に勝るものしか選びたくはない。だがその気持ちよりも、早く夫を見つけなければと、焦る気持ちが強くなってきていた。
ロアはその気持ちを誤摩化すようにベットに身を投げた。その途端体が火照ってくる。胸が熱い。さっき戦ったばかりだからだろう。いつもより体のうずきが激しかった。魔物娘であるが故の性欲の強さ。誤摩化すことの出来ない本能だった。
顔を恥辱にゆがめながら不器用に鱗状のブラジャーを外す。充血していた乳首に柔らかい布地が擦れて少しだけ感じてしまう。こんなに敏感になるなんて…。魔物娘としては普通なのだろうが、今までにないほど体は感じ易くなっていた。その事に戸惑いを少し覚える。もし誰かに触られたらなら、何処と言わずにイってしまいそうだ。
ブラジャーに続いて慎重に股間を覆う黒い布を外した。さっきみたいに擦れる事は無かったが外のひんやりとした空気に触れた途端、無意識に吐息が漏れる。
「くぅ…」
こんな情けない声が自分の口から出てくるなんて…。チクショウ…。わずかに芽生える怒りと言う感情。それは夫を見つけられない自分の不甲斐無さと、未だ自分を倒す事の出来ない世の中の雄に対する不満を孕んでいた。しかし、柔らかい乳房をいじり始めると、ロアの感情はすべて激しい愛欲に飲み込まれた
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