「おねがい、します」
凱がうなずくのを見て、麻理依は尻を突き出した。
触りやすいようにとの気遣いだろうが、場違いなくらい愛らしい仕草であり、同時に、異常にそそられる光景だった。
(やばい……)
奇妙かつ背徳的な優越感が湧き上がってくる。
痴漢に尻を触れられて、麻理依は嫌がるばかりだっただろうが、自分に対しては、こうして自らお尻を差し出してくれるのだから。
「触るよ」
一言そう断るも、返事は無い。
だが、凱の言葉に応えるように身じろぎしたのを見て、OKと判断し、彼はいよいよ、掌で麻理依の尻に触れた。
それなりに身長差がある二人だが、凱の方が少し身を屈むようにすれば、手が届く位置に来た。お互い妙な体勢になったせいで、絵面としてはやや滑稽な状態だが、けれどもそのお陰で、凱は何の不自由もなく、麻理依の尻を味わえていた。
「ん、う、んん……っ」
いざ改めて触ってみて再認識したが、豊かな膨らみを持つ胸に比例するかのように、尻も触りごたえのある形をしていた。
流石に成人女性のそれに比べれば、ボリューム自体は慎ましいが、手を当ててみれば、丸みと尻の谷間の形をハッキリと堪能出来た。
何より違うのは、その「硬さ」である。脂肪の塊である胸と違い、筋肉の割合の大きなその場所は、柔らかさよりもつるりとした張りのある弾力は癖になる感触だ。
思わずその場所を撫で擦り、あるいは指に力を入れて、揉みごたえを堪能する。
「う、う……っ、さわりかた、やらしぃ……」
「あ、ご、ごめんっ」
「だ、だめ、やめないで……イヤじゃない、からぁ、はう、んんんっ」
無意識に麻理依の尻に夢中になってしまっていた。
思わず謝るが、しかし麻理依が口にしたのは、あくまで続行の願い。
だが、やはり恥ずかしいらしく、口元に右の拳を添え、声が出るのを我慢するその仕草が、凱の中に燻ぶる後ろ暗い情動に火をつける。
少女の願望に応えるように、一心不乱に彼女の尻を撫で、いじくり回し、その感触を味わって……ふと、凱はある感触が指先に触れていることに気がついた。
尻たぶと太ももの境界辺り、スカートの布地越しでは本当に意識しないとわからないほどの、わずかな段差。
内心、首を傾げた凱だったが……しかしすぐに、その正体に思い至った。
パンティラインである。
麻理依の成長する尻を包むショーツと、何にも覆われていない素肌を晒した太腿部分との境界線だ。
今まで胸に触れたり揉んだりと、散々痴漢めいた行為をしてきたが、凱は今この気づきに、これまでに無い圧倒的な背徳を覚えた。
いつも見ている、麻理依の制服姿。
ロリコン気味とは言っても、彼女のその佇まいそのものに性的な興奮を覚えたことは、それほど多くない。
出来るだけ、そういったことを考えないようにしていたし……また何より、彼女の制服姿が、いかにも清純そうな可愛らしさに満ちていたからだ。
でも、こんな感触を知ってしまえば、そうも言っていられなくなる。
いつも見ているスカートのその内側に、こんないやらしい造形があることをどうしても意識させられてしまう。
果たして明日から、自分は今まで通り、麻理依に対して「優しいお兄さん」として居続けることができるだろうか。
今までずっと大切にしていた宝物を、刹那的な欲望に駆られて壊してしまったような、そんな後悔めいた思いも覚えてしまう。
「おにぃ、さん?」
いつの間にか、手が止まっていたようだ。
そのことを不審に思ったのか、麻理依が振り返って、凱を見上げてくる。
何か返事すべきだったのだろうが、凱は咄嗟に反応出来なかった。
信じ難いことに、麻理依のその表情は、明らかに、さらなる行為をねだってくるものだった。
(……やめてくれよ)
凱は心底、そう思う。
ようやく固めた決心が、そんな顔をされたら、ぐらついてしまうからだ。
あくまで彼女のためにやろうと思っていたのに、自分の欲求がどんどん膨れ上がって、無視することができなくなってしまうからだ。
ロリコン気味であることを自覚させられつつ、凱は人間相手にそれはよくない、と抑え込んでいた。自分の欲望を優先して、幼い女の子の嫌がるようなことは絶対にする訳にはいかない、と。
凱にとって笹川麻理依とは、怨敵の血筋を超えた「守るべき女の子」となりつつあった。
でも……その麻理依自身が、性的な好意を望んでいたとしたら。
性的な行為を、麻理依自身が楽しんで、受け入れているとしたら。
そうしたらもう、そんな言い訳が出来なくなってしまう。
凱の中に渦巻く欲望を「魔物娘以外に出すべきでない」との理性の《枷(かせ)》が、意味をなさなくなってしまう。
「おにいさぁん……」
繰り返されたおねだりの言葉が、ダメ押しだった。
――もうだめだ。もう、我慢できない。
抑え切れない情動に
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