地下オークションを叩け! 後編

【Side:地下オークション会場】

笹川キングホテル地下特設エリア――
地下駐車場の下に設けられたそこは、宿泊客の中でもVIPとして認定された者しか入る事を許されないエリア。
今、そのエリアにある会場は多くのセレブで賑わっている。

警察官僚や政財界の大物だけでない。
海外からはFIFA(国際サッカー連盟)やIBAF(国際野球連盟)を始めとした国際スポーツ連盟機構の役員、世界各国のプロスポーツのスター級選手、ハリウッドスター、各国の閣僚や富豪、更には高級将校までもが男女問わず、参加者によっては夫婦で参加しているのだ。
だが、共通している事は一つ。皆が皆、黒い獣欲を剥き出しにした下劣な笑顔を浮かべている事である。

そして、時計の針が21時を指し、狂った宴が幕を開けた。

『世界各国からご来場の皆様、大変長らくお待たせしましたぁ! これより、第21回セックススレイブオークション、開催しまぁす!』

割れんばかりの拍手と歓声が特設会場に響き渡る。

『開催にあたり、今回の主宰であります、夏目会総裁・夏目剛史様より、ご来場の皆様へご挨拶をいただきます』
『世界各国からご来日された皆様、この度は御来場頂き、誠にありがとうございます。どうぞごゆるりと、そして皆様の性欲の赴くままに、オークションをお楽しみ下されば幸いです。奴隷ごときに人権などございません。お買上げ頂いたら、ご自由にお楽しみ下さい! それでは皆様ぁ! セックススレイブオークション、開幕でぇす!!』

司会者が陽気な声で開催を告げると、割れんばかりの拍手と歓声が再び響き渡り、いかにもヤクザと言わんばかりの黒い服を着た男が最初の『商品』である少女を引っ張ってきた。
早速競り落とそうと大金が動き始め、夏目は下卑た笑顔を浮かべながら大金が入る事を夢想し始めていた――

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【Side:凱&ヨメンバーズ】

時は少し遡ること、20時58分――

凱とヨメンバーズは、エルノール・サバト全軍を率いて笹川キングホテルの周辺に展開を終え、息を潜めながら作戦決行の時を待っていた。

エルノールは時計を凝視しつつ、遠声晶を片手に秒読みを始める。

『皆の者、準備は良いな? 作戦開始まで残り一分――』

先陣を切るマルガレーテが左手の籠手からカサルティリオを展開、魔力で精製した矢をつがえると、指揮下に入っている魔女たちもロアリングキャノンを狙撃体勢で構える。

「魔女の皆様、警官だけを狙ってくださいませ」
『30秒……25……20……』

次に動く構えを見せたのは、朱鷺子と亜莉亜、クノイチ数名の少数精鋭の組。
彼女たちの役目はホテルの司令塔とも言える総支配人を無力化し、監視システムをダウンさせる事である。

『10、9、8、7、6――』

そして本隊。凱、瑞姫、エルノール、ロロティア、ゼロ派遣部隊。他にも魔女だけでなく、ドワーフやゴブリンなどの直接戦闘が得意な魔物娘が他部隊の動きを伺う。

『5、4、3、2、1、攻撃開始っ』

マルガレーテが先制の号砲とばかりに矢を撃ち放つ。
その矢は一人の警官の眉間に見事命中する。魔力の矢なので衝撃こそあるが、傷は負わないし、脳を撃ち抜く事は無い。もっとも、体内の精を霧散――はっきり言ってしまえば、急激に射精させられてしまうのだが。

最初の犠牲となった警官はアヘ顔になりながら内股になり、腰から崩れ落ちる。
彼の股間から漂う強烈な精臭が近くにいた他の警官たちを酷く不快にさせたが、異常事態を悟るには少し遅かった。
正面を警護していた警官たちは、魔女たちが撃つ魔力弾を次々と食らい、やはり強制射精で無力化されていったのだ。

辛うじて動けた警官の一人がパトカーの無線で異常事態発生と応援依頼をし、警察とホテルの黒服の一部が正面側へと動き出したことでスタッフ用出入り口に隙が出来た。

「先生、行こう」
「やるですよー」

朱鷺子と亜莉亜、クノイチの部隊も動き出し、スタッフ用出入り口の扉をクノイチが開錠して侵入を果たす。
一方、マルガレーテの隊はパルティアンショットさながらの、逃げながらの反撃を行っていくのだった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【Side:朱鷺子&亜莉亜】

朱鷺子と亜莉亜、クノイチ数名は即座に人化の魔法でベルガールに化けて支配人室を目指して進んでいたところ、怒鳴り声が響く

「オラァ! テメーら何サボってやがんだぁ!」

やってきたのは短く刈り込んだ頭髪に色黒で痩せぎすなベルボーイが、朱鷺子たちを見て、サボっていると決めつけて怒鳴ったのだ。恐らくは主任以上であろうと朱鷺子たちは見る。
だが、これに対応したのは意外にも亜莉亜であった。

「申し訳ありませんー。総支配人から頼まれたものがありましてー、急ぐよう言われましたのでー」
「――チッ
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