この日は騒然としたものとなった。
突如、特別クラスの校門に前面に衝角を取り付けたダンプカーが突っ込み、轟音とともに校門を破壊したのだ。
さらには十人ほどの男がダンプカーから降りてきた。後部の荷台に伏せていたのだ。
ダンプカーの修理費用と土地の譲渡を恫喝しながら請求し、一方的に帰っていったのである。
「此処までやるとはな。もうこちらも黙って耐えとるわけにいかんのう」
「これだけの土地を有してますもの。土地を得ようと躍起になってるのではなくて?」
「ボクねぇ、こっそり……覗いてきちゃった」
朱鷺子がさも当然のように言い放つ。
「特別クラスだけじゃ無くて……、この寮の土地も……中等部と高等部で分けるべきだ……って、言ってて。そのためには、ガイを追い出して嬲り殺しにすべきだ……って榊原って女教師と、瀬川って奴が……言ってたよ」
「……成程な。わしが調べてたものと一致したわ」
「……どういう、こと?」
「構成員や応援のクノイチ部隊には教師どもの動向を、わしと兄上は中等部と高等部の教師の履歴の詳細を調べてたんじゃ。そうしたら兄上の母校・静鼎学園を卒業した教師が数人いたんじゃ。そして、これを学年主任共が主導しておった。川澄と二ッ森が生徒をまとめ、裏では榊原が瀬川と組んで小細工をしておった。そ奴らをマークしたら、まあ予想通りじゃった。兄上の悪口を生徒に吹聴して回っておったんじゃ」
「わたしの一件で、お兄さんが用務員として来てたことを知ったのね」
「それだけではない! その連中、目星をつけた生徒を男女構わず密かに洗脳し、提携先の企業や性風俗店に送り込み、男子には雌化なるものを施し、性奴隷に改造しておった。しかも邪魔、もしくは不要と判断した生徒を、結託した金持ちの生徒を使って追い出しておったんじゃ!」
エルノールは憤怒の形相で話を続ける。
「奴らめ、生徒を男女構わず性奴隷に仕立て上げるばかりか、政官財や法曹界の大物どもに売り飛ばしておった。生徒として在籍しておる部下から、特定の生徒の様子が日に日におかしくなっていると報告があってな。見張らせてたんじゃ」
「何て……奴ら!」
朱鷺子も珍しく怒りを露わにする。
「あの間抜け共め、わしらが動いとるのに気付きもせず、愚かにも密談を録音されとるのにさえ気付きもせんかった。証拠を残さぬ手腕は評価しても良いが、その驕りが仇になった訳じゃな」
「それで、生徒たちはどうしたんですー?」
「無事だった生徒は今、退学させられた者と一緒に地下基地に収容してある。奴らが生徒をバカどもに引き渡したり、誑(たら)し込もうとするタイミングを狙って保護した。今は薬物や洗脳を解いている最中じゃ。下手に入院させてしまえば、奴らは病院を虱(しらみ)潰しに探り出し、また拉致するじゃろうて。じゃから失踪のままにしておる。ん……? ということは……、成程、奴らが兄上の追放を声高に叫んでたのに、納得がいったぞ」
エルノールは自身の告白と朱鷺子の証言から、点と線が結び付いたと確信する。
「取引する商品を失っても、連中は証拠を残していない。そして、教師であることの信用と権威を武器に、失踪の原因を兄上に押し付けて体良く追放し、それを口実にわしからこの学園を奪い取って……、奴隷牧場にしようと計画しとったんじゃろうなぁ!」
「クーデターを起こして、お兄さんだけじゃなく、わたしたちも消そうとしてたのね!」
「ならば、作戦開始じゃな。まずは、あのアホ《教師(ガキ)》どもに出てって貰うとしようか」
「エルノールさま、そうなればもう少し証拠が必要かと思います。私が中等部か高等部の寮母になって、探りを入れて来ます」
ロロティアが内偵に力を貸す旨をエルノールに示す。
「確かに寮母は皆キキーモラにしておるが、お主のその格好では却って目立つぞ。行って貰うとしたら中等部の方になるが、それでもよいか?」
「服のことは心配に及びません。瑞姫さまがご用意して下さいますので……」
瑞姫の名前が出た途端、「あぁ……」とため息交じりに納得するエルノールだった。
翌日、ロロティアは瑞姫が用意したロングタイプのメイド服を身にまとい、中等部の学生寮を訪れていた。
そこの本来の寮母と話し合い、二人態勢で寮の管理を行う事で話を合わせ、実行する事になった。
中等部に潜入している構成員からの連絡を受け、ロロティアも確実に証拠を集めていく。
そして、対決の日がやって来た。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
対決当日。中央塔・会議室にて――
「じゃあ、これはどうだ? 蛆虫ども」
特別クラス廃止とエルノールの退陣を訴える中等部と高等部に対し、凱がパソコンを介してICレコーダーを起動させた。
流れ出る音声に、教師たちは唖然となる。
◇◇◇◇◇◇
『準備は出来てるな?』
『はい
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