情欲と愛情の坩堝

一週間ぶりの交わりを終えた凱と瑞姫は翌日の昼、デオノーラ、アルトイーリス、瑠珠、シグニカの四人から改めて竜騎士と認められた後、デオノーラからエルノールに渡すようにと封筒を受け取り、彼女らに見送られ、転移魔法陣を伝ってドラゴニアを後にした。
行きつく先は風星学園特別クラスの校庭。
ボスンッ!と軽い衝撃を伴った土煙りを上げ、二人は校庭の中央に姿を見せた。
魔力の膨張を察して構成員に監視を命じていたエルノールは、それが凱と瑞姫と分かるや否や、中央塔を飛び出して特別クラスの校庭に駆け付ける。

「おお、二人共! 良く帰って来たのう!」
「ただいま帰りました、学園長」
「三ヶ月ぶり、かな」

あっという間の三ヶ月が凱を竜騎士とし、婚約者達との絆を強くした。
それは彼自身がもう独りでないという確かな証でもある。
呪具という想定外の要素こそあったが、彼にはその実感があった。
それらを己の力と成していく為にも、今後の研鑽を怠る事など出来ない。
竜騎士叙任は次のステップへの踏み出す為の段階に過ぎないのだ。

「色々と大変な目に遭ったそうじゃな」
「本当に、色々と大変でし――」
「兄上、ドラゴニアでわしらが言った事を忘れたかのう?」

エルノールの笑顔が心なしか冷たくなっている。

「いや、でも、やっぱり慣れない……な」
「真面目なのは認めるが、それも大概にせい。プライベートでも堅苦しかったら息が詰まるわい。……おっと、此処で長話をしとる場合では無い。まずは特別寮に行くぞ。そこで改めて話をしよう」

先へと歩き出すエルノールの後を、二人はついていくしかない。

特別寮に到着するや、朱鷺子、亜莉亜、マルガレーテ、ロロティアが凱と瑞姫を出迎える。
ただ、前日の情事も薄々察していたようで、朱鷺子以外は少々面白く無さそうな表情ではあったが、マルガレーテとロロティアは情欲の念がこもった目で凱を見ていた。
しかもマルガレーテはいつものゴスロリドレスではなく、ミニスカメイド服であったのも凱を驚かせた。

「さて、今日からまた、特別寮での生活だな」
「おっと、今日は兄上を厨房には立たせぬ。復帰祝いなんじゃ、主賓が料理を作っては意味無いぞ」
「そうです。今日は、私たちが、お料理を作ります」
「でしたらロロティア、準備しましょう」

マルガレーテとロロティアはそう告げつつ台所へと入って行くが、それ程の時間をかけずに再び出て来る。
彼女らは朱鷺子と亜莉亜からしゃぶしゃぶを教えて貰っており、折角だからと魔界豚の肉を使ったしゃぶしゃぶ鍋をしようと提案していたのだ。

「もう冬になり始めましたから。みんなでお鍋を囲って、あったまりましょう」

水と昆布が入った専用鍋にはイグニスの魔力を宿した卓上コンロが置かれ、ロロティアが魔力を注いで点火する。鍋とコンロは特注品であり、鍋はマルガレーテが図鑑世界で作らせ、取り寄せたもので、コンロはサバト風星支部がエルノールの依頼を受けて作った魔道具である。
出来あがった途端に箸の乱舞が飛び交い、食材はあっという間に食べ切り、〆で用意されたラーメンも程無くして食べ切っていった。

ゆったりした食後の時間は各々でデザートを食したり、テレビを観たり、本を読んだり、凱と瑞姫がドラゴニアで体験した事を話したり……。
七人が再び一つに集い、語らう時間はあっという間に過ぎ、眠りの時を迎える。
もっとも、魔物娘達に囲まれている以上、そうは問屋が卸さない。

就寝前、凱はエルノールに呼ばれて学園長室に出向くと、彼女から小さな箱を手渡される。
何かと問おうとした時、エルノールは答えた。

「それは触手薬と分身薬を調合して作った試作の薬じゃ。兄上のその素晴らしいモノだけを増やし、わし等を一度に相手に出来るようになる。触手薬は兄上の見た目そのものが変わってしまうし、分身薬は複数の男にされるなんて感覚が好かん。それで、兄上と瑞姫がドラゴニアに行っておる間に研究しておったんじゃ」

エルノールは一呼吸置いて話を続ける。

「ロロティアとマルガレーテが今宵辺りに何かしらのアクションを起こすじゃろうから、あの二人に使うと良かろう。使ってどうなったかの報告も、済まんが頼む。わし等の為にも更なる改良も必要にあるじゃろうからな」

気まずそうに苦笑するエルノールの姿に、凱は黙って頷くしか無かった。
特別寮に帰ると、今度はロロティアから精緻な細工が施されたガラス瓶を二本渡された。
その中身は青と赤の《水薬(ポーション)》だ。
ロロティアは渡すなりこう告げる。

「お休み前にこれを飲み、誰ともエッチをせず寝て下さい」

訳が分からず、彼女に水薬の効果を問うと、「翌朝になればわかります」としか語らない。
婚約者の懇願を断る事も出来ず、言われた通りに二本共飲んで眠りに入った……のだが、
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