カン、カン、カン、
小気味良い音が広い工房の岩壁に響く。
壁面にはところ狭しと長剣や戦斧、槍などの武器が飾られ、窓から入る日ざしに照らされて、鋭く、暖かな光を放っている。
その真ん中で、ひとり黙々と槌を振るう少女が一人。その肌は薄く澄んだ青色をしている。
ふう、こんなもんかな。
少女は出来上がったナイフの裏表を、その大きなたった一つの目でチェックしている。
よし、これで完成〜。
ナイフをあらかじめ作っておいた鞘に収める。
鞘すべりも完璧。
そして、少女は誇らしげに壁にわずかに残されたスペースにそれを陳列し、ちょっと離れたところから少しの間眺めた。そして、ひよひよと作業場に戻り、言った。
客、来ねえぇぇぇぇぇ!
ええぇぇ〜、いや、覚悟はしてたけどさ〜、まさかこんなにこないと思わないよー。
師匠(母)いわく、「山奥に工房開くと、そりゃ普通のお客は来ないよ。でもさ、結構いるんだよ、真の強さを求めるために、一生戦える相棒を作ってくれって言う、いい目をした男がね。アンタの父さんも、いい男だったよ。本当に強い人だった。体も、心も…、夜のほうもね。もうあの時は朝までに何回イかs(ry」
あれ?トチュウカライイハナシヂャナイヨ?
とまあ、そんな話を信じてわたしも遠路はるばるやってきてこの山に工房を開いたわけだが。行く場所を間違えたらしい。
なんと言ってもこの国は、リンボー公国、人呼んで、『放蕩者の国』である。
勇者とか、武闘家とか、そういうものは生息しておらず、詩人とか、発明家とか、投資家とか、そんなのばっかりいる。陸軍にいたっては、『穀潰し』と呼ばれている。
ぶっちゃけ、だれも武器を買わないのだ。狩猟すらしないし。
あ〜、どうしよう。もう工房たたんで故郷に帰ろうかな…
ガタン。
ん?
ふと顔を上げると、そこには、私と同じくらいの年格好の男性の姿があった。
え、もしかして、お客さん?
一瞬目と目が合う。そして次の瞬間。
「あ、えっと、失礼しました!」
男は脱兎のごとく逃げ出した。
え!?ちょっと?何で逃げるの!?
何とか引き止めなきゃ、という一心で、無我夢中のまま手近にあった物をつかんで男に向かって投げつけた。
あ…
それがハンマーだったと気づいたときには、もう、男は地面に横たわっていた。
「えと、あの、ごめんなさい…」
少女は、目が覚めた俺にお茶を出してくれた。
「あ、いや、あの、どういたしまして。どういたしましてじゃないな。えーっと。」
なんでテンパッてんの!?俺!?
「あ、あの、別に大丈夫ですから。僕、丈夫ですし。あはは。」
「ほんとですか?良かったー。大事になったらどうしようと思って。」
少女がほっと胸をなでおろす。その様子は…可愛いな畜生!!一つ目なのに、何でこんな可愛いんだよ!そして、胸!胸元!何ソレ!?くそ、免疫無いと、刺激が強すぎる。
「それでですね。」
「はいぃ!?」
胸元に目を奪われていたところで急に声を掛けられ、あわてて視線を外す。
「はい、え?なに?」
「それでですね。何を作ればいいんですか?」
「え?」
「いや、ですから、何かしらの注文があるから、ここに来たんですよね?」
俺はすっくと立ち上がって、2,3度肩を回した。
「ああ、もうすっかり傷も癒えました。お茶、ご馳走様でした。それではまたの機会にお会いしましょう。では。」
そう言って俺はまっすぐ出口へと向かい…
がし。
「なーにを作ったらいーんですかー!」
腕をつかまれた。さすが魔物、強い。
「いや、いいのいいの。急ぎじゃないから。」
「いやいや、そんなこと言わずにウチで。」
そのままぐいと引き倒され、工房のほうへずるずると連れて行かれる。
「あ、青銅細工とか、そういうのは出来ないよね?」
「できます。師匠からみっちり仕込まれました。」
万事休す。
「いや、ほんとに、ダメだって。」
「じゃあ、なんでウチに来たんですか!?」
「だって、サイクロプスがやってるなんて知らなくて…?」
突然引っ張る力が無くなった。
「そ、それは、魔物の、作った道具なんて、使いたく、ないってこと、ですか?」
声が震えている。
「ち、違う違う!そうじゃなくて、女の子だったから…」
「女じゃ、鍛冶なんか出来ないってことですか!?」
彼女の一つ目が涙を湛えたまま、こっちをじっと見ている。怪力で引きずられるよりも、正直、何倍も耐え難い。
ああ、もう、しゃあない。
「分かった!ここで頼む!お願いする!お願いするから!」
「本当ですか…?」
「ああ!本当!だから、泣くな!頼むから。」
少女の顔がぱっと明るくなる。
「はい、それで何を作ればいいんですか?」
反比例するように、俺の表情が重くなる。
「えっと、あの、どうしました?」
どうした俺。さっき腹はくくっただろう。いいから言え!
俺は勢いよく座卓に
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