ここは本来何も無い筈のはるか上空
そんな場所に一つ、小さな島の様な物が浮いている
小さい島―――それでも人が一人で住むには広すぎる程度の・・・
それは船・・・・・・巨大な飛空艇だ
しかしその形は通常の物と異なり、綺麗な円を描いている
そこに住んでいるのは、たった二人だけ
精霊使いの青年と、シルフだけだった
「ねぇ、襲っていい?」
「・・・いつもながら唐突だね」
僕の名前はシーパー・クレイ、元々大きな町で技師をやってたんだけど・・・まぁいろいろあって今は精霊使いをしてるんだ
歳は16、町では一番腕の良い技師だったんだけど・・・・・・今はこの飛空島で慎ましく暮らしている
「だってシーが最近私の相手してくれないもん!!」
「僕も最近忙しくてね、確かにランの相手がしてあげられてないのは分かってるけど・・・」
この小さい魔物はシルフ・・・風を操る力を持つ精霊だ
名前はラン・ディール、ちなみに今僕たちのいるこの飛空島もランの風力を頼りに浮いている
「いいじゃない別に、先に承諾とってあげてるんだから」
「別に許可をした覚えは無いんだけどね?」
「と言う訳で襲いまーす」
「聞いてない!?」
「てーい」
そのまま書斎のカーペットの上に押し倒される
いつも思うけど・・・この小さな体にどうしてこんな力があるんだろう
後、さりげなく倒れる瞬間に風で衝撃を緩和してくれるのが嬉しい
「せめて夜までまってくれない?それまでに全部片付けるからさ」
「・・・・・・やだ」
「でないと、今週いっぱい相手をしてあげられなくなるよ・・・?」
「・・・・・・ほんとに夜まで待てばいいの?」
「うん、だからそんなに泣きそうな顔しないで」
「・・・・・・はーい」
契約した(させられた)当時は、僕の仕事に関係なく誘ってきたから・・・仕事にも影響はでたし、その辺りを取り繕うのにも苦労したけど
この島に来てからはある程度聞き分けてくれるようになったし、気まぐれに見えるけど、僕が本当に忙しい時は誘ってこなくなったし・・・・・・
まぁ、今回見たいな例外もあるけど・・・・・・月に一回くらい
「さて、それじゃぁちゃちゃっと仕事しますか・・・」
一応、今でも技師は続けている
町の常連客の人からは今でも仕事が回ってくるし、たまに通って行く飛空艇の修理も請け負っている
大型の機械はもちろん、小型の精密機器の修理、製造もおこなっているので今でも人気は高い
「今日の納品物は・・・・・・と」
作業机の引き出しから、それなりに分厚い紙の束を取り出す
ちなみにこれが今月の納品分である
「時計4つ、オルゴール2つ、通信機1対・・・・・・」
いつも思うが大した量だ・・・・・・よく全部仕上げれたな・・・僕
さて、とりあえず、包装は業者にまかせるとして・・・一応完成品の出来を確認しておくか
「・・・・・・この作業が一番退屈なんだけどね」
僕が作る物はほぼ全てが魔力で動くようにしている
その方が長持ちするし、誤差も少なくなるからなんだけど・・・これには些か問題がある
魔物との性交の際に魔力が吸い取られるため、魔力磁場が狂って誤差が生じる事があるのだ・・・
時計なら時間が狂うし、音楽機器はその瞬間だけ音がぶれたりする
結界装置は結界を一時的に解いてしまうし、無線類も電波が悪くなる・・・
「どうにかしないとなぁ・・・・・・」
とは思いつつも、これはそう簡単な事ではない
町一番の技師が言うのだからそれは間違いない
「シー君、配達に来たよー」
「あ、はいはい、今出るよ」
今の声は僕の幼馴染、ダークエンジェルのイリアである
・・・・・・昔はエンジェルだったんだけどね?
「納品物の回収と日用品の配達、それからセッ――」
「うん、納品物はもう完成してるよ、今日の配達物は何かな?出来ればそろそろ新しい工具が欲しいんだけど」
「最後まで言わせてよ」
「言い終わると同時に襲ってくる君に最後まで言わせる程馬鹿ではないからね」
「・・・・・・どう言う意味よ、シー君」
「僕はラン一筋って意味だけど?」
「リア充め・・・」
「そう言う君は、相変わらず彼氏無しかい?」
「私の仕事は布教だから、別に彼氏なんていなくてもいいのよ」
「若干涙目になってるけど・・・・・・」
「うるさいっ!!」
いつも通りの会話を交わして、物資の交換をする
この島に来るのは、ランと・・・あとは飛空艇の船長さんくらいだろうか
まぁ、静かで暮らしやすい場所ではある
「さて、それで・・・町の方はどうなってるのかな?」
「シー君はここに来るたびに同じ事を聞くよね・・・」
「一応故郷だしさ、気になるのは当たり前だよ」
「そうねー、最近は・・・そうそう、旅人さん一行が来たわね」
「旅人さん一行って・・・・・・なにそれ?」
「それがね
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