1日目 午前/彰人

翌朝
俺は腹部にかかる僅かな重さと、何となく空気に混ざる甘い匂いで目を覚ました

「・・・・・・そこで、何をしてる」

理由は至って簡単、美紀が俺の腹に被さって寝ているからだ
語弊が無いように言っておくと、机に突っ伏す感じで俺の腹に頭と両腕、あと若干胸が乗っかっている状態だ
しかしアレだな、胸が乗っかってると思うだけで語弊がある気がするな

「ん・・・んー、あと9分と27秒・・・」
「馬鹿、お前がそこにいると俺が起きれないんだよ」

しかもその体勢、だと・・・耳が俺に良く見える
出来れば夢であってほしかったなぁ・・・と言う俺の願望は、それはもう無残に敗れ去った

「むぅ・・・あと少しだけ・・・」
「そもそもお前はそこで何をしてるんだ」
「彰人を起こしにきた」
「起こしに来て寝るんじゃねぇ、あと起きてんじゃねぇか」

俺は今日、色々と忙しくなると言うのに・・・この馬鹿は
・・・まぁ、この方が「いつも通り」で丁度いいのだろうか

「俺は今日図書館に行く予定があるんだよ・・・早く用事を済ませたいからとっとと退いてくれ」
「えー、私も行く」
「お前には昼ごはんの調理と言う任務を与えよう」
「何よそれ、まるで私が料理作るみたいな言い方じゃない」
「あー、久々に美紀の手料理が食べたいなー(棒)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・もっと心を込めて」

突っ込む所はそこなのか・・・つーか、心を込めて言えば作ってくれるのか
正直、美紀を付いて来させない口実だったから・・・これはまた妙なモノを釣り上げたもんだ

「昼ごはんは、そば飯がいい」
「・・・ん」
「はいはい、お土産は適当に駆ってくるから」
「昼までには帰ってきなさいよ」
「りょーかい」

俺は適当に箪笥から服を見繕う
で・・・・・・振り返って、こっちを凝視している美紀に言葉を投げかける

「・・・いや、出てけよ」
「え、あ、うん、そうだね」

美紀はハッとして、いそいそと部屋から出ていった
・・・もうすでに「妖」の浸食が始まってるのか・・・考えすぎか

「・・・・・・今日の朝飯、なんだろう」

とりあえず、無理やり思考を別の事に切り替えて
夏休みな入ってから、ずっと食パンだったなぁと虚しい気分になった

「とりあえず図書館だな・・・詳しい資料があればいいんだけど」

恐らく、美紀に憑りついたのは幽霊ではない
・・・・・・文字通り「妖」だ
海の向こうの国では「魔物」とも呼ばれている種族
しかし「妖」は本質として人を襲う本能は薄いはずだ
実際に俺が知っているだけでも、数十人の「妖」がこの町に住んでいる

「・・・それでも、見たことも聞いたことも無い種類だった」

だから、図書館に調べに行く
間違いなく、アレはゴーストか精霊の類だ
だったら、この国以外から入ってきた可能性はゼロじゃない
・・・俺、外国語全然わかんないんだけどなぁ

「美紀―、今日の朝飯何?」

思案よりも空腹が先にくるのは、朝なら多分誰でもそうだろうと思う

「もうちょっと待って、いま目玉焼き作ってるから」

少し豪華にしてくれるらしい
言いたい事は感謝から文句まで色々あるが、とりあえず一つ言っておこう

「別にもう誰も文句いわねぇけど、あんまり人ん家の冷蔵庫漁るなよ」
「私はもう朝ご飯食べてきたし、彰人の分だけなんだから別にいいでしょ」
「つまりお前は、朝食を食った後に寝たのか・・・太るぞ」
「彰人・・・ここにすごく熱いフライパンがあるんだけど、どうされたい?」
「とりあえず、腹減ったから朝食が食いたい」
「むぅー」

美紀は不機嫌そうだったが、普通にパンの上に目玉焼きを乗せてくれた
俺はそれを30秒で平らげて、時計を見る
現在7時半・・・昼までには普通に帰ってこれる筈だ

「じゃ、俺はもう行くから・・・俺の部屋漁るなよ?」
「そんなところ漁って何が出てくるのよ・・・」
「多分何も出てこないと思うけどな」

ちなみに割とマジで・・・エロ本の類は本当に何も置いていない
理由? どれみても、普段美紀をみてる俺にはそれほど興奮できるモノじゃないからだ
かといって、別に美紀に欲情してる訳じゃない・・・と言うか美紀に欲情できる自信がない

「そんなことより・・・今はあの憑物の事だな」

という訳で、ゲームの俊足移動並みのスピードで図書館に移動
・・・・・・そんな設定で、10分で図書館に行く

「相変わらず、小さいな・・・」

まぁ、小さな町にある図書館のサイズなんてたかが知れたもので
我が家と同じくらいのサイズの二階建ての図書館だ

まぁ、なんでこんな図書館に来たのかというと・・・この図書館にはどんな本でもあるからだ
これは比喩とかそんなのではなく、一部のマニアックな利用者だけが知ってることだが
この図書館の館長は「妖」・・・と
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