非凡で平凡な日常

チョキチョキチョキチョキチョキチョキ・・・・・・・・・・・・
無機質に鋏が紙を切る音が教室に響く
ここは生徒会室、時間は放課後・・・今教室にいるのは僕を含めて4人だけだった

「会長・・・この作業に何の意味があるんですか・・・?」
「この作業に特に意味は無いわ」
「じゃぁどうして僕らは紙を切っているんでしょう?」
「この時間に意味があるのよ」
「相変わらず意味不明ですね・・・・・・」

こちら、変な電波を受信して僕たち生徒会役員に不毛な作業をさせる人物――まぁ、生徒会長なのだが――は、魔物娘で・・・海に住んでいる筈のネレイスと呼ばれる種族だったりする
今は人の姿をしていて、普通よりも蒼白な肌をしている美少女に見えるが実際はもっと美しい姿をした魔物らしい(本人談)
今でも十分綺麗だとは思うが・・・変人すぎてあまり実感が湧かない

「それで、ボクらはいつまでこの作業を続ければいいニャ」
「・・・・・・飽きた」

こっちの二人、風紀委員長のネコマタと会計長のサハギン・・・
他の役職にも、僕以外は全て魔物娘が就いている・・・正直、かなり危険な役職だと思う

「ミケと美郷はもう帰っていいわよ」

ちなみに、ネコマタの方がミケでサハギンの方が美郷である
フルネームは・・・旋風ミケと浪魚美郷だったと思う

「・・・・・・なんで僕は駄目なんですか?」
「そもそもこの労働が遊の為に用意されたものだからよ」
「ただの嫌がらせじゃないですか・・・・・・」
「いいえ、これは正当な労働よ」
「明らかに不当ですけど」
「生徒会長である私が命じたのだから、生徒会役員はそれに従うのが当然だもの」
「ただの暴君でしたか・・・知ってましたけど」
「その暴君が選挙で選ばれたのよ?」
「そもそも、僕は立候補すらしてなかったんですけどね・・・・・・誰ですか、僕を勝手に推薦したのは」
「もちろん、私よ」
「おかげで僕の学園生活のバランスが一気に崩れましたよ」
「そんなこと私には関係無いもの」
「暴君」
「いいから働きなさい」
「この作業は一体この学校の何の利益になるんですか?」
「私の機嫌が良くなるわ」
「こんな作業をひたすら続けて機嫌が良くなるのは相当のマゾだと思いますけど・・・」
「言ったでしょう、この時間に意味があると」
「やはり会長と僕は生きている世界が違いますね」
「あら、それは残念」
「では、僕はこれで失礼しますね」
「まだ作業は終わってないわよ?」
「人を待たせてるんですよ」
「それは生徒会の仕事を投げ出す程重要な事なのかしら?」
「少なくとも、この無意味な作業を続けるよりは有意義な時間を過ごせるようになります」
「そう・・・まぁ良いわ、今日はもう遅いから勘弁してあげる」
「それはどうも、お疲れ様でした」
「はいはい、お疲れ様でした」

適当に会長に挨拶を済ませて、正門に向かう・・・もう6時を回っているが、待っててくれているだろうか
正門で待ち合わせをしているのは、僕の幼馴染二人で・・・今日は僕の部屋でパーティーを開こうと言う事だった
なんのパーティーか? もちろん、僕がとその幼馴染が生徒会役員に当選――僕は別に当選したわけではないが――したお祝いと言う事だった
なにしろこの学園は初等部から大学までエスカレーター式に進級できる超有名校、そして未だに社会に根付きにくい魔物娘を育成する学校として期待も大きい
しかし、魔物娘を相手に授業出来るという自信のある教師が少ない事もあって・・・人員は常に不足している
故に生徒会は、その役職の手の届く限りにおいて教師と同等、もしくはそれ以上の権力と影響力を持っているのだ
そのため、選挙は厳しく行われるし、一切の不正行為は認められない・・・僕の存在が明らかに不当な気がするがそれは多分気のせいだと思う
あと、今は6月なのだが・・・今年の生徒会役員が僕以外全員魔物娘ってどういう事ですか・・・?

「うみー、おそかったね」
「初めての仕事はきちんと出来たかい?」
「まぁまぁだね・・・会長の言ってくる仕事が意味不明すぎてちゃんと出来るのラインがわからない」
「へぇ、どんな仕事だったんだい?」
「私もそれは気になるかも・・・・・・」
「ひたすら、白紙の紙を切る作業・・・アレはなんか意味があるのかな」
「・・・レクは相変わらずみたいだね」

ちなみにレクと言うのは、海里レク・・・生徒会長の名前である
なんか変わった名前だなー、とよく思う・・・いや、結構名前の変わった魔物娘はたくさんいるけど

「昔から変人だったのか・・・?」
「僕の知る限り、レクの挙動が常識に当てはめてかみ合う事は殆どなかったね」
「ほえー、会長って美人なのに変な人だなんだねー」
「まぁ、僕はまだ最近合ったばっかりだし、簡単に人を決めつけるのはよくないと思うけどね」

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