第七章 ナガレグモ

流れ者、変わり者、好き者。
人間だろうと獣だろうと妖だろうと、普通とズレた者 ズレてしまった者はいる。
もしくはズラされてしまった者。
自然に溶け込めるならいいのだが。
そう、猫に小判、鬼に金棒、刑部狸にそろばん。
何か違うか。
ともかく異物は排除されやすい。
でも、異物じゃない誰かが異物を先に受け入れてしまえば、異物は溶け込めるんじゃないか。
だからこそ、異物が排除されない事があるのだろう。
ある意味、そうしてできたのが、この町なんだ。

〜〜〜〜〜

私はその後事の顛末を松と毛娼妓殿に話していた。
「それで君は三人がかりで介護されて運ばれてきた訳だ。」
「賑やかですね。」
「うっせ。」
あの後無理した所為で腰を更に痛めて、もはや動ける状態ではなくなった。
その為三人がかりで運ばれている
「それで、その天使の方が・・・なんでここにいるんだ?」
「お構いなく。」
お前、茶菓子全部食い切った後に言うかよ。
なんだかんだで天使野郎がここにいる。
理由は二つ。
「力使い果たしたんで帰れなくなったんだと。」
「あらそれは・・・お茶を淹れてきますね。」
もう一つの理由は、こいつらには言えないな。
「お構いなく。」
空の茶器を置いて、言う。
茶、何杯飲むんだよ。
数えた限りでは5、6杯飲んでるぞ。
「はぁ・・・そうか、ならどうする?」
「巫女の嬢ちゃんの所にねじり込んだ、こいつはあいつしか扱えそうになさそうだし。」
じとっと見つめる、が。
「お構いなく。」
さっきから天使の嬢ちゃんは同じ事しか言わなくなっている。
「どうぞ、ふふ。」
天使の嬢ちゃんは運ばれてきた茶を、また飲み干した。

〜〜〜〜〜

いてて、あいててて、いて。
「もうちょっとゆっくり運んでくれ、頼むから。」
「うるさい。」
私は長い距離を歩けない、その為私が椅子に座ってそれを持ってもらっているが、揺れる。
この三人、相性悪いな、どう言う人選だ。
「なんで私がこんな事しなきゃなんないのよ・・・。」
「終盤気絶してたからってこんなのあんまりだよ・・・。」
「ところで・・・何故私も?」
琴理とリスの嬢ちゃんと天使の嬢ちゃん。
三人とも身長が違う、特に天使の嬢ちゃん、身長が違うから動く度にがったんがったんと激しく揺れる。
その度に腰から悲鳴が上がる。
しかし上から見ても全員包帯だらけだな。
「リスの嬢ちゃん、お前やっぱ気絶してたんだな、最後の方いなかったもんな。」
「体重軽いから思い切り吹き飛んで・・・頭打ったの。」
リスの嬢ちゃんは頭が包帯でぐるぐるに巻かれている、隙間から窮屈そうに耳が飛び出ていた。
「答えろ、何故私が貴様を運んでいるのだ。」
「お前の所為で色々と面倒起きたからだよ、本当に反省してんのか?」
あの変な兵士、どうやらこの天使の嬢ちゃんが作り出した幻影だったらしい。
質量を持つ幻影だとかなんとか。
天使の嬢ちゃんを巫女の嬢ちゃんが吹っ飛ばした辺りから兵士の方は消えたそうな。
「んで、何で私がこんな事してんのよ。」
「知らん。」
本当に何でだろうな、よく分からん。
なんか知らんが周囲が全力で琴理の事を推していた。
「青助の所寄ってくか、寝込んでるし。」
「何故貴様が指揮を執る?」
「いいから、まったく。」
なんでこんな事になったかね。

〜〜〜〜〜

青助の家にずかずか入り込む、私とリスの嬢ちゃん以外が。
つまり置いていかれた。
「お前ら、介護する気あんのか?」
私は杖を突いてその後を歩く、おーいていて。
「はる 悪い・・・約束・・・守れなかった。」
「赤尾・・・さん、赤尾さん!」
家の中で布団に寝る青助とその布団に泣きつく魚の嬢ちゃんがいた。
おい、私より程度軽いだろうが、何ぬかしてくれてんだ。
こっちは日常生活もままならないっての。
「うわ!?藤太郎さん!?と・・・は!?なんすかその面子は!?」
「俺が聞きてぇ、なんでだろうな。」
腰痛めて介護されてるってのだけで大分屈辱だってのに、なんで敵の御大将に介護されないといけないんだろうな。
「青助殿、この度は迷惑をかけた、すまん。」
「えーと・・・赤尾だよ、もう藤太郎さん!あんたの所為で誤解されてるじゃないですか!」
知らんわ。
「まー色々あったけど、別にいいっすよ楽しかったし、嫁もできたし。」
また魚の嬢ちゃんが顔を真っ赤にする、いい加減慣れろよ。
「そうか。」
そしてそれをさらりと流す天使の嬢ちゃん。
しかし一応謝って回ってるんだな、何か変なのは態度がでかいだけか。
「無事・・・か、行くぞお前ら。」
「ちょっとは心配してくれてもいいでしょ!?」
だって私よりはよっぽど平気そうだし、別に心配する必要もないだろ、他に回る所もあるし。
「うわ!?本当に行ったし!」
「赤尾・・・さん、うごけたんだ。」
あ、なんか魚の嬢ち
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