「魔物なんか殺したくないって言ってただろう!」
天使野郎は目を瞑った、そして。
巫女の嬢ちゃん諸共、私達全員を睨みつけた。
「我が深愛なる主神の兵士達よ!」
その声は相当大きく、迫力も桁違いだった。
こいつと今から戦争すんのか。
ちょっと自信なくなってきたぜ。
「悪しき異教徒を、踏み潰せ!」
千数百の兵士全てが一斉に動き出した。
咆哮で地面が揺れているみたいな錯覚が起こる。
「さてと、任せるぜ眼鏡の嬢ちゃん。」
アオオニの嬢ちゃんが動けない以上指揮は他の奴がやるしかない。
しかしアカオニに指揮とらせたらどうなるか分からんから、私が眼鏡の嬢ちゃんを推薦した。
「投石隊!投石開始!」
警備隊の人間の奴らが石を投げる。
あれ、効くのだろうか、まだ疑問だ。
「おお、効いてる効いてる。」
意外と石が効いている、次々と兵士が倒れている。
だが数が数だ、足りんな。
「私も出るか?」
「君たちは体力を温存してくれ、先発隊!用意!」
先発隊が構える、その先、敵の最前線に。
天使野郎がいた。
「お・・・い!?先には出ねぇんじゃなかったのかよ!?」
先陣の更に最前線に、天使野郎が突っ走っていた。
巫女の嬢ちゃんが言ってたのと違うじゃねぇか、あいつは後から出るはずじゃねぇのかよ。
「夏華!抑えて!」
「おう!任しとけ冬華!行くぞ、突撃!」
アカオニの嬢ちゃんとその他のアカオニ達がその軍に突撃していく。
アカオニっても分からんか、見張り台にいた嬢ちゃんだ。
「止められようと私も出るぞ!あれは別格らしい!」
「まだだ!まだ詩華姐さんが終わってない!」
武器を取り出そうとしたら肩を掴まれ、町側にぶん投げられた。
流石アカオニ、文系でも力強いなおい。
「こ、の!」
見張りの嬢ちゃんのありったけの力を込めたでろう拳での初手の一撃は、派手に空ぶった。
思いっきり体勢を崩すもアカオニの馬鹿力で無理やり体勢を直す。
「な!?うわ!?」
そうして次の剣での反撃を辛うじて避けた、はずなのに見張りの嬢ちゃんは思いっきり吹っ飛んだ。
一体どう言う手品だありゃあ。
「どうする?あれじゃ止められねぇぞ。」
「粘るしかあるまい・・・夏華!いけるか!?」
「いってぇ・・・やるしかないだろうが!」
やるしかないって、まだかよアオオニの嬢ちゃんは。
「おい!駄教徒!」
その言葉で天使野郎と見張りの嬢ちゃんが止まった。
琴理だ、琴理がもう所定の位置にいる。
「ばっ!?」
ちょっと待てよ、もう作戦を進めるつもりかよ。
まだ準備できてないってのに。
「あんたの狙いはこれでしょ!」
琴理は本を手にして叫ぶ、そしてその本を持っている鞄に突っ込んで、森の中に入った。
まさか、できるだけ遠回りして時間を稼ぐつもりか。
「いいだろう、その挑発に乗ってやる、我が深愛なる兵達よ!続けてあの町を責めろ!」
天使野郎は身を翻して、琴理と同じく森に向かう。
私も後を追わないと。
「待てやこら!」
見張りの嬢ちゃんが更に攻撃する、できるだけ時間を稼いでくれているらしい。
頼む、今はとにかく、時間を稼がないと。
急げよ、アオオニの嬢ちゃん。
「邪魔、だ!」
駄目だ、やられた、琴理を普通に追ってたら駄目だ、先回りしないと。
私は琴理とは別の方向に走り出した。
〜〜〜〜〜
あいつ、追って来てるわよね、多分。
後ろを見たいのは山々なのだけれど、そんな余裕ない。
このまま限界まで森の中をジグザグ走ってやる。
「ちょ、ちょっと、だ、け!はぁ!?」
ほんのすこしだけ背後を見たら、何かが飛んできて近くの木にぶつかった。
これは、木なのか。
「木を投げて来てんの!?」
何それ型破りにも程があるでしょうに。
更に勢いを増して何個かまとめて木を投げてきた。
「うわぁぁぁあ!?」
一個が危うく当たりそうになった。
か、隠れよう。
私は木を登る、そして木を飛んで渡る。
もう暗くなってきている、それなら私は闇に紛れられるはず。
「・・・面倒だ。」
駄教徒は急に風か何かを周りに発生させた。
もちろん私にもその風が吹いてきて、私は木の上から吹き飛ばされた。
「いったぁ!?」
木から落とされて地面に叩きつけられる。
「そこ、か!」
構える暇もなく駄教徒は一瞬で近づいてきた。
蜘蛛足で地面を蹴って飛ぶ、剣がかすって鞄の紐が切られた。
やばい。
地面に着いた瞬間、私は落とした鞄に飛びつく。
相手の方が早い、まずい。
「らっしゃあぁ!」
刀で鞄を思いっきり叩いて飛ばした、そしてすぐに走る。
「うっとおしい!」
「うわ!?」
肩を掴まれて後ろに投げられた、木にぶつかってようやく止まる。
だが、ここから走ってもどうやっても本に届きそうにない、あいつの方が圧倒的に近い。
不甲斐なさを感じつつ鞄を睨みつけると、その後ろの木の影に誰かがいた。
「ことりん・
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