「妖を殺す為の魔術書を持っている 魔女だった、その流木には魔女が住んでいたんだ。」
私の言葉に二人は顔を引きつらせた。
「魔女?何よそれ。」
尤もな意見、しかしここからが説明しにくい所なのだ。
しかし恐らくあれが発端である以上、この二人にだけでも語らなくては。
「ねぇねぇ、もしかしてこれってさ、流木の町誕生秘話?」
「あーそうだな、誕生秘話になるな。」
流木の町はここ数十年で一気に成長した町なのだ、鷺町や麻町は相当驚いただろう。
中々こう言う話はしないのだがな、非常事態だ。
「とは言ったものの・・・。」
私は隠れ里にて貰ってきた、短剣を持つ。
前方には人影がある。
「お客だ、後でな。」
その人影は例の兵士だった、琴理も刀を取り出す。
この刀、抜かないでいてくれる事を、琴理に感謝した。
「リスの嬢ちゃん!下がってろ!」
「ガッテン承知!てたーい!てーたいー!」
二人で武器を構える、この手の武器は初めてだが、扱えるか。
敵は二人、数に不足はない、のだが。
「ことりん!できるだけ藤ちゃんを戦わせない様に!」
「誰がことりんよ!誰が藤ちゃんよ!いい加減にしなさい、この駄目愛玩動物!」
その言葉が啖呵の代わりの様に、琴理はまっすぐ敵に突っ込んだ。
後衛は苦手なのだが、この状況では仕方ない。
「えぇい!」
妖の力と鞘も含めた刀の重さを頼りに、琴理は刀を敵の一人に叩きつけた。
敵兵は盾を持っていたのにも関わらず、琴理は盾を弾き飛ばした。
「そーれ!」
琴理は更にもう一人の方の兵に突きを繰り出した、敵兵は盾で防ぐが思いっきり吹き飛んで木にぶつかった。
盾を持っていない方の兵士が琴理を攻撃しようとする、しかし私はその兵士を間合いに入れていた。
「はしゃぐな。」
その兵士の顔面を殴れつけた、不意を突いた為間抜けによろよろとふらつく。
「せい!」
振り返った琴理の一撃で、盾の持ってない方の兵士は吹っ飛び、川に飛び込んだ。
「待て、ちっ逃げられた。」
噂通りに突然敵兵は消えてしまった、川に突っ込んだ奴も木に叩きつけた奴もだ。
ある意味厄介な奴らだな、しかも。
「これで敵の斥候に見つかった事になるな。」
「別に構わないわよ、むしろやり足りない。」
琴理は一皮剥けたのか、かなり頼もしくなっていた。
刀の腕はてんで素人だが、妖の力と野生の勘でかなり戦えている。
危なっかしい所はあるがこちらが手を貸せば問題ないだろう。
「これで私の怒りが収まるとでも?」
「えっへへ、頼もしいでやんすな・・・旦那殿・・・。」
リスの嬢ちゃんが戻ってきた、そちらも大事ないらしい。
「もちろんよ、私を誰だと思ってるの?」
「嫉妬深い!やたら上から目線!お嬢様気質!」
ぶおんと音が鳴る、正直私には見えなかった。
琴理は刀を横に薙いだらしい、風がかなりの強さで私に襲ってきた。
「へへーん!同じ手は食わないもんねー!あ・・・ちょ、ちょっと?蜘蛛足で襟掴むのは無しだよ?」
琴理は器用にリスの嬢ちゃんの着物の襟に蜘蛛足を引っ掛ける、リスの嬢ちゃんはそのまま持ち上げられて宙に吊られた。
「ちょぉっと痛いだけだから、ね?」
随分と刀に殺意を込めるものだ、自分からそれが意識してできるのならかなり強い兵士になるな。
私はリスの嬢ちゃんを蜘蛛足から外してやった。
「嬢ちゃんよ、そう琴理を煽ってやるなこう見えて繊細なんだ。」
くすんくすんとリスの嬢ちゃんは泣き真似をしている、ちらちらとこちらを見ているからすぐに真似だと分かったが。
「どう見えて、よ?」
「殺意を抑えろ殺意を、まったく・・・仲良くしろよ。」
琴理はふんと鼻を鳴らしてずんずんと進んで行ってしまった。
リスの嬢ちゃんも私から顔を背ける。
「だって藤ちゃん、ことりんにだけ甘いんだもん。」
「甘くはないだろ、やれやれ・・・。」
さっさと行かないと敵が来るからな。
リスの嬢ちゃんを下ろして、私は再び歩を進めた。
〜〜〜〜〜
それからは不気味な事に襲われずに流木の町が見えてきた。
「へぇ・・・あれが?」
「あぁ、やっと帰って来たな流木の町だ。」
懐かしき我が家、いやたった1日足らず帰って来なかっただけだが、数週間帰らなかったような感覚だ。
「まー私は走ればそんなにかからないで来れるんだけどね〜んで?藤ちゃんこれからどうするの?」
そうだな、選択肢は二つ。
私の家に帰るか、巫女の嬢ちゃんの所へ行くか。
「あ!?誕生秘話忘れてた!」
「あーじゃあ巫女の嬢ちゃんの所先に行くか。」
とか話していたら、視線を感じる。
川をみると、じとっとした瞳がこちらを迎えた。
「魚の嬢ちゃん、よかった無事そうだな。」
魚の嬢ちゃんはこちらをじっと見つめて、町めがけて泳いで行った。
「何よ、あいつ。」
「いい奴だぞ、嬢ちゃんは。」
さてと、魚の嬢ちゃんがいたという事は
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