ナナに傍について貰って、慎重に足の包帯を解いていく。包帯を全て解き終え、添え木
を外すと数日ぶりに自分の足と対面することが出来た。
こうして見ると、意外と普通だ。所々切り傷らしきものがあるものの、それ以外は特別
骨折の跡のようなものは見受けられない。本当は軽症だったのだろうか?
僕の考えを読んだかのように、ナナが小さく笑う。
「ここに運ばれてきた当初は、本当に酷かったんですよ。この傷の跡なんか、全部砕けた
骨が皮膚から突き出て出来たものだったんですから」
思わず言葉を失い、控えめに微笑んでいるナナの顔を凝視した。
前言撤回。魔法の薬とやらの力が、とんでもなかっただけのようだ。
薬の染み込んでいる内側の包帯を巻き直し、表面を乾いた新しい包帯で緩く巻いて覆っ
た。添え木が無くなったので、これで足のちょっとしたリハビリが始められるだろう。
「……ある意味、そんな惨状を見なくて済んだのは幸運だったかもね」
そんな軽口を叩きながら、足を少しずつ動かし始めた。数日のブランクがあるおかげで少
々動かし辛いものの、痛みは殆ど無い。決意を足に込めて、地面を踏みしめる。しかし。
「い、づっ!」
「レイ君!」
足に体重の負荷をかけた途端、痛みが足を走り抜けた。痛み自体はさほどではなかったも
のの、思わずバランスを崩し真横に倒れこむ。
斜めに姿勢を崩した状態で、小さくため息を一つ。流石にまだ痛い。
しかし、不意の痛みで失敗したが慎重にやれば立ち上がる位は出来る筈だ。杖があれば
歩くのだって出来るだろう。そう冷静に自分の足の具合を分析してから、倒れた筈なのに
自分の身体が地面に触れていないことに気付いた。
「あ、あのう」
見上げると、顔を真っ赤に染めたナナの顔。肩の感覚に注意を向けると、柔らかいクッシ
ョンに持たれかかる感触。どうやらナナが全身で受け止めていてくれたらしい。
「ああごめん、ありがとうナナ」
崩した足を元の姿勢に戻し、地面に座り直した。骨が突き出ていたという足の傷を手で弄
っていると、ナナの返事が無いことに違和感を覚える。
「ナナ? どうしたの?」
彼女へ目を向けると、ナナは顔を真っ赤にして俯いていた。両手を揃えて、服の裾をきつ
く握り締めながら。触角も、節が折り畳まれまるで縮こまるように頭に張り付いている。
「す、すいません、何だか恥ずかしくって」
ナナの言葉の意味を飲み込むのに三秒。そして、僕の口から笑みがこぼれた。失笑だ。
「何言ってるんだか、昨日もあんなに激しかったのに」
ナナは普段僕に対しておどおどしている割に、夜の乱れっぷりは蟻たち全員の中で一番だ。
その豹変ぶりは凄まじく、僕は絞り殺されるのではと本気で恐怖したほど。
そんなナナが昨日ならともかく、今日になってまでまだこんなことで恥ずかしがってい
るのははっきり言って今更だ。
僕の言葉に、ナナは両手で顔を伏せて蹲ってしまった。あまりきつく言うつもりはなか
っただけに、少しだけ罪悪感が募る。
「ごめんナナ、ちょっと嫌味っぽかったね」
「レイ君だって、き、昨日あんなに恥ずかしがって抵抗してたじゃないですか……!」
蹲ったままのナナからの一言に、僕は小さく笑いながら頬を掻いた。
「僕はなんだかもう慣れちゃったよ」
「……そう、なんです?」
顔を両手で覆っているナナが、指を広げてその隙間から僕を見た。恥ずかしさはいくらか
収まったようで、指の間から見える表情は純粋に疑問に思っている顔だ。
「まあ全く気にならないってほどじゃないけどね」
二日連続であれだけもみくちゃにされて、身体の端から端まで見せられ見られ舐められれ
ば多少接触した程度なんともない。それに僕自身結局のところ抵抗は無意味だと悟ったの
で、下手に避けるよりはさっさと慣れてコントロール出来るようになった方がいいだろう。
そう思った末の結果だった。
「さ、ナナ、ちょっと支えてよ。立つから」
顔を上げて、立ち上がったナナの両手に捕まってゆっくりと立ち上がる。
思ったより痛む。痛みを覚悟すれば立てないほどではないが、歩くのは杖があっても少
し厳しいかもしれない。
「……生まれたての、小鹿」
「いやそこまでプルプルしてないから」
「そーれ、あんよが上手、あんよが上手……」
「ナナ、ここぞとばかりにさっきの仕返ししようとしてない?」
三つ編みを揺らして、ふいと顔を逸らすナナ。しかし、こらえ切れず笑顔がはみ出ている。
僕も釣られて笑って、それから僕は腰を降ろした。
「ちょっと辛いけど一応歩けなくもないかな。ナナ、歩く時の杖代わりに出来るようなも
のって無いかな?」
怪訝そうな顔をして、僕を見返すナナ。
「レイ君、歩く、つもりですか? まだ、危ないですよ」
「……ずっとこの部屋にいるのも暇だからね。巣の中とか、外の景色
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