とある暗黒魔界の昼下がり、いつものように至る所から嬌声が響いてくるなんとも落ち着けない中、そんな外界と隔絶された場所に彼は腰を下ろしていた。
サバト、幼女の幼女による幼女のための、幼女の魅力を世に知らしめる宗教の支部であるその建物の最上階。
普段は最高権力者のバフォメットと彼女の「兄様」以外は立ち入りを禁じられている層であり、すなわち彼はそのバフォメットの兄様である、ということだ。
「……ふぅん」
パタン、と。
難解極まりない分厚い魔道書をパタンと閉じて、彼は一つため息をついた。
分厚いローブに体を包み、大きなフードで顔までほとんど覆っている姿は世間一般に想像される魔術師像にふさわしい格好だと言える。
しかしこの格好彼の趣味趣向によるものではない。
並大抵の人間どころか魔物でも敵うものが見当たらないと言われるほどの魔法使いである彼は本来ならもっとシャツとジーンズのようなラフな格好を好むのだが、彼の妹の願いで渋々、このローブをまとっているに過ぎない。
「暇だな」
彼女の兄であることが仕事の彼はもっぱらインドア派であり、今日も特にやることがないので新しく仕入れた魔道書を読みふけっていたのだが。
本来なら読み終わるのに徹夜で休憩なしで3日(ただしセックスはする)はかかると言われるそれをたったの3時間、通常の24倍の速度で読み終えてしまった彼は暇を持て余してしまったのだ。
「……ふむ」
こういう時は何をするべきか、彼は考える。
あいにく彼は魔法と妹以外に何事にも興味がわかない性格であり、料理や運動などに時間を割く気はサラサラない。
サバトにて処務の仕事についている魔女たちを手伝おうかとも思うが、そうすれば彼の妹に甘やかすなと怒られる。
どうするか、と彼は考えて、そしてすぐに答えを決めた。
彼は悩むという行為が、正確にはその時間を浪費するのが嫌いなのだ。
彼が腰掛けていたふかふかベッドの傍らにあるサイドボード、その上には柔らかな桃色に輝く小さなベルが置いてあった。
美しい紋様が刻まれたそれは魔界銀で作られた彼手製のマジックアイテムであり、彼はそのベルをカランカランと鳴らした。
「呼ばれて飛び出てジャンジャジャ〜ン!」
すると、突然彼の眼前に魔物が飛び出してきたではないか。
大きく湾曲したツノに、ふかふかもふもふの手足。
露出が多くその割に装飾過多な服装を着こなすいろいろと幼い異形の少女。
彼女こそこのサバト支部のトップであるバフォメット、名をルビス・カロー・スラグウィックと言う。
ルビスはもふもふのおててでぽふっと彼の膝に手をついて、ずずいと彼の顔に詰め寄った。
「ふふん、どうしたのだ兄様急に呼び出したりして?何か火急の用事でもありましたかの?」
「そういうわけではない」
「ではなにが?」
「暇になった。だからお前とイチャイチャしたい」
「ほえ?」
彼の言葉にルビスはぽかんと気の抜けた返事をして、数秒後、むむっと眉を吊り上げて、膝に置いていたご自慢の両手を自分の腰に当てた、お怒りポーズだ。
「兄様、ワシは今日大切な会議のため王城に向かい、そしてその会議の真っ最中だったのです」
「ああ、すまない」
「謝って済むものではありませんぞ、この節操なし、我慢の紐がゆるすぎますぞ!」
「申し訳ない」
「まったくもう!この後また王城に行ったら王様に怒られてしまいます!」
「嫌だったろうか」
プンプンと怒る幼女に肩を縮こまらせる成人男性。
そんな彼の一言にバフォメットがさらに眉を吊り上げた。
「望むところでございます!」
「……」
なんだかんだといって、この真面目なバフォメットはしかし兄様には際限なく甘い、激甘い。
その甘やかし加減には配下の魔女たちも苦笑いし、ブラックコーヒーを愛飲する始末である、普段は自分たちも砂糖を垂れ流す立場であることを棚上げしながら。
「後で一緒に謝りに行ってくださいまし」
「もちろんだ」
「んっ……」
言うや否や、彼はルビスのその幼く細い体をそっと抱き寄せた。
錬金術の過程で薬の匂いの染み付いた細い指先で、ルビスの銀の髪にそっと指を通す。
気持ちよさそうに眼を細めるルビスを見て彼は気を良くし、徐々に頭からその手を下げていく。
額を指先でくすぐれば悩まし気に喘ぎ、頬を優しくさすれば解けたような笑みを浮かべる。
唇を指先でなぞれば物欲し気にこちらを見つめてくる。
たまらない。
「……」
「あっ、む、ん」
軽いルビスをひょいと持ち上げ膝の上にのっけると、彼はルビスに覆いかぶさるように唇を奪った。
やや強引なキスをしかし喜んで受け入れたルビスは、彼に献上するかのようにゆるゆると自分の舌を唇の隙間から差し出した。
ルビスの小さく熱い舌を感じて彼はそれを口腔に受け入れ、そし
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