「はぁ・・・」
青年、タカシは落ち込んでいた。昨日の一世一代の告白を断られた上に、その
相手の女性は、近くの進学校を卒業して今日、海外へ旅立ってしまうからだ。
「アカリさん・・・」
アカリとは、その告白相手である。アカリの通う進学校の近くにある男子校に
タカシは通っており、こちらも先日卒業したところだった。
「俺はこれから何を支えにしていけばいいんだ・・・」
就職も決まっていた彼は、意中の彼女を射止め、順風満帆に将来への一歩を進
める予定だった。しかし、その計画は初手で詰みを迎えてしまったのだ。
ピンポーン
「・・・」
ピンポーン
「っ・・・誰だってんだよ!」
一人になりたいと願っていたタカシにとって、来客というだけで苛立ちを覚え
てしまう。
「どちらさんでしょうか?」
できるだけ淡々と、レンズも覗かずドア越しに聞く。用件によっては、門前払
いをかけるつもりだった。
「・・・あの」
女性の声だった。しかし、タカシには女性の来客の覚えなどないため、少し返
答につまる。
「アカリ・・・ですけど・・・。タカシさん、ですよね?」
そして、この発言で腰を抜かす事となった。
正直、タカシには状況が呑み込めていなかった。
「あ、えと、お茶っす」
しかし、そういいつつもお茶ではなくコーラを出すほどには混乱し、舞い上が
っていた。
「ありがとうございます♪」
優雅な動きでコップを受け取る。その一挙一動にますますタカシは正常な判断
ができなくなっていく。中身が間違っているのさえ気にしていないように口を
つけている。
「きょ、今日は暑いッスね!」
「そうですね・・・。もう少し薄着にしてくればよかったです」
ふぅっとアカリが胸元をパタパタさせる。
視線が釘付けになるのを必死に抑えていると、アカリと目があった。
「あ・・・えと・・・」
「ふふ・・・」
羞恥で顔が真っ赤になってしまうタカシ。しかし、アカリは全く気にしていな
い。
「そういえば、今日はどうして?」
「・・・それは・・・ですね」
先ほどまで笑顔を崩さなかったアカリが、申し訳なさと、何か別の思いによっ
てうつむき加減になる。
「告白をお断りしてしまって、しかもその翌日にお願いすることではないこと
は承知しているんですが」
「は、はい」
「私と、で、デートしてくれませんかっ」
「はいっ!」
人間、自分が望むことに対しては貪欲になるもので、少々の疑問などは消えて
しまうものなのだろう。
「・・・チッ」
そして、そのマンションの隣の部屋では、一人の男がつまらなそうに悪態をつ
いていた。
「さて!どこに行きます?」
「あ、そんなに引っ張らなくてもっ」
「今日1日しか時間ないんでしょ?だったら急がないと!」
「まだ朝ですから〜!」
タカシは幸せを噛みしめていた。憧れだった女性にデートに誘われ、大きな商
店街の中をしっかりと手を繋いで歩く。はたから見ればまさに恋人と呼べる姿
だろう。
自らがいつかデートできた日のために、とシミュレートしていた内容をタカシ
は忠実に再現する。
『まず映画!』
あえてホラーを選んだのは、彼女が怖がりだったときに男らしく肩を貸したい
から・・・だったのだが。
「「・・・・・・」」
あまりのB級加減に唖然としたまま終わってしまった。
『次にウィンドウショッピング!』
デートのために切り崩した貯金で男らしく奢ってポイントアップ
「のはずだったんだけどなぁ・・・。ごめん、アカリさん」
「いえいえ♪ 見て回るだけでも楽しいですから」
突然決まったデートの日に、服やアクセサリーを買う余裕があるはずがなかっ
た。
金はなくとも、試着室から笑顔で登場し、ワンピースでくるっと回ってみせた
アカリに、またも心をときめかせる。
『最後に、・・・カフェ!』
入店し、2回窓際の席へと直行する。
そこは、町の主要なデートスポットの看板が一望でき、さらに通行人の視線も
気にしなくていいという利点がある席だ。
『ここでしめに行きたいところをそれとなく聞くっ!!』
ここで、タカシの自称完璧なデート作戦は彼女任せとなったのだった。
「いろんな店あるよねぇ」
「そうですねぇ」
何気ない発言にも、輝いているように錯覚するほどの笑みで返してくれる。
「アカリさん、どこか、行きたいとこある?」
「うーん・・・」
タカしの思惑通り、ビルの看板たちから必死に選んでいく。
主要な場所はすべて自らの足で踏破した彼にとっては、どこを選ばれても失敗
はあり得ないと断言できていた。
そして彼女の視線が定まろうとしたとき
「いよっ タカシじゃん。な〜にやってんの?」
学校で同じ
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