全てのモノに、死は訪れる。
この世界の法則であり、恐らく僕達が存在するこの世界以外の世界でもそうだ。
そして人の場合、好きな人物や有名な人物が死んだ時、残された者は喪失感に打ち拉がれるだろう。
それが身内や血縁なら尚更だ。
そして、僕は今日。
初めてその喪失感を知った。
僕と同じ、花の好きな彼女が死んでしまったのだ。
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僕はしがない医者をやっていた。
巷ではそれなりに有名ではあったが、それでも街医者レベルの実力しか持ち合わせていなかった。
それが、彼女を死なせる理由であったのかもしれない。
彼女が罹ったのはちょっとした肺炎の筈だった。
僕自らが彼女を検診し、その病院の院長達や他の職員に聞いても皆首を縦に振った。
そしてある程度入院させて完治させようとした。
しかし、異常はその日の深夜に起きたのだ…!
『く、クロッカス先生!!』
「どうしたんだい、そんなに慌てて。もしかして三四一号室のお爺ちゃんの入れ歯でも取れたかい?」
『ち、違います!!、先生の彼女さんの容態が…!』
「…何だって?」
『先生の彼女さんの容態が、急変したんです!!』
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僕はその後、急いで彼女を再検診したが異常は見当たらなかった。
しかし、それでも彼女はゆっくりと衰弱していった。
所謂「未知の病」だった。
全く何もわからない、もしかしたら別な何かが影響しているのかとも考えてみたが、体中を調べても分からない。
そして。
「あぁ、何も出来ない僕を…、僕を、許してくれ。リコリス…!!」
『別に、怒ってもいないし、怨んでもいないよ』
「だけど…!!、あぁ、神よ!主よ!、何故私達にこんな事を!?、私達が何をしたと言うのですか!?」
『…神様なんて、居ないよ。今の世界には、魔物を殺す事しか考えないような、奇特な神様ぐらいしか』
「!、リコリス…」
『…ごめんね、クロッカスは主神教だったね。ごめん』
「いや、そんなことはどうだって良いんだ!、君は、生きることを考えて…」
『ううん、もう無理だよ。だって、実はもう、目も見えないような状態なんだ』
「…!?、そ、そんな!?、だって病源は肺じゃ…」
『どういう原理かは分からないけど、じわじわと体中が動かなくなってるの。可笑ぃぁ病気だぇ、…口も、ぉう、うぉぁあい』
「り、リコリス!?、駄目だ、死んじゃ駄目だ!!」
『ぅロッぁス…、わぁぃの、ぉと、…忘れ、なぃ、で…』
「駄目だ、駄目だ!、リコリス!!、リコリィィィィィィィィス!!」
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彼女が死んでからは、僕は人形になった。
形容ではないんだ、誰かに引き摺られてしか移動も出来ず、喋りもせず、ただ息を吸うだけ。
彼女の葬式にすら、看護婦と院長の手を借りてやっと出席できたぐらいだ。
彼女の遺体は町の外れにある「ネクロ墓場」に埋められた。
その時だけ僕は自分の体を使って動いた、彼女の墓に、彼女の好きだった花を置くために。
ただ、その時の僕の歩き方はまるでデッドマンズウォーキングだったらしいけど。
そして、彼女の死体が埋められた直後のまだ柔らかい土の上に、ありったけの「彼岸花」を乗せる。
死人花、地獄花、捨子花なんて呼ばれるこの花を何故彼女が好きなのかは分からないが、恐らく花言葉が好きなのだろう。
確か彼岸花の花言葉は…、情熱、独立、あきらめ、悲しい思い出…?
彼女の思い出には、悲しいことがあったのだろうか。
それとも私達の恋愛を情熱とでも言いたかったのだろうか。
それは無い、か。キスすらした事が無い様な純真無垢な御付き合いだったしな。
…あまりここで物思いに耽っていても、彼女に迷惑だな。
せめて安らかに眠ってくれ、我が最愛の番、リコリス…。
////_////
僕の家は一人で生活するには広く、二人で生活するぐらいで丁度良いマンションの一部屋だった。
これから、きっと一生をここで一人で過ごす事になるのだろうなと思うと、彼女を思い浮かべてしまう。
彼女がいつも読んでいた花の本、彼女のベッドの近くにちょこんと置いてある彼岸花の花瓶。
これらは撤去せずに残しておきたいとも思うが、その一方でコレを置いておきたくないとも思ってしまう。
これを見るたびに彼女を思い出してしまうのでは、きっとまともに仕事なんか出来ないからだ。
彼女が居た時は違和感無く咲いていた一輪の彼岸花、それすらも、僕には今は疎ましい。
「…リコリス」
彼女の名前を思わず呟いてしまう。
彼女の名前と同じ花、彼岸花。
彼女の赤かった瞳と、彼岸花の色が重なる。
リコリス、僕は、これから生きていける自信が無いよ。
思えばいつもいつも君に料理を作ってもらっていた。
君がいつも話しかけてくれたから、僕はいつも明るい気分で仕事に行けた。
そうい
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