かつて、世界を2分した大きな戦争があった。
米国を中心とした国際平和連合と、露国を中心とした国際統合連盟。
戦争は百年もの間続き、世界中の人間は疲労していった。
それは、各国の指導者達も例外ではなく………だからであろうか、ある日それは発射された。
どの国が始めに撃ったのか。どの国が始めに滅んだのか。それはもはや些細な問題である。
そう、世界は核の炎に包まれた。
だれもがこう呼んだ。「世界の終わり」だと。
人間の歴史は終ったかに………見えた。
しかし、終ってはいなかった。
わずかに生き延びた人類は逞しく、そして懸命に今日も生き続ける。
文明が滅び、早くも三百年の時がたっていた。
核の炎が地球上を焼き尽くし、今も「自然な」木々はごく僅かにしか残っていないこの世界で、
とある荒野を旅している一人と一匹がいた。
「………おい、水はまだ無かったか?」
「ある。けど少なくなってきたから、節約しないと危ないかもよ?」
男は人間である。名前はギブソン。背中には、何やら巨大で長い銃を背負っている。
女は人間ではない。名前はエルジェ。背中には、何やら巨大で長い棒を背負っている。
そう、人間ではない。彼女はゴブリンと呼ばれる種族の「1匹」である。
放射能が影響したのか、それとも地球が自らの危機を知り新生物を生み出したのか。
この新たな地球上には、旧地球では伝承の中でしか語られてなかった生物が大量に蠢いている。
人間に友好的な種族がいる。人間と敵対的な種族がいる。
人間と共存できる種族がいる。人間と滅ぼしあう種族がいる。
人間が飼っている種族がいる。人間を飼っている種族がいる。
そして彼女、「ゴブリン」のエルジェは人間と旅をしている。
「………おい、水はまだ無かったか?」
「それさっきも言ったよ。水は貴重。高い、高価、値が張る。だから節約するの。OK?」
「くそったれどもめ………あの下半身魚女、真水ぐらいタダでよこしやがれってんだ」
「いや、お水くださいって頭を下げたのはボクだよ?分かってる」
「知らん」
話をしながらもその歩みは止まらない。緩む気配も無い。
当然である。次の給水地に早くたどり着かなければ、水が無くなってしまうのかも知れないのだ。
自然、歩みは速まることはあっても遅くなることは無くなる。
そんな状況であったが、しかし一人と一匹は突如足を止めた。
同時に止まり、同時に反対の方向に飛び退いた。
コンマ数秒の後、男の頭があった位置を銃弾が二発通っていった。
突然の銃撃を避けた一人と一匹は、素早く後方を振り向く。
右手側、背の高い岩の上から二人の男がライフルを構えていた。
完全な奇襲であったはずだ。このタイミングで避けられるはずがない。そう、思っていた。
しかして結果はどうだ。魔物娘ならまだ分かる。奴らは文字通り、人間技ではない異能を持っている場合もある。
だが、人間に、奇襲を避けられた。その事実が彼らの中の思考を、数瞬だけ止めた。
それだけで十分だった。
男は構えた。「世界の終わり」以前に作られたそれは、かつてはアンチマテリアルライフルと呼ばれていた。
女は構えた。つい最近、道端に落ちていた一本丸々の枯れ木を加工して作った、特別製のバットのようなものである。
左の男は、銃弾が当たり首から上が粉々に吹き飛んだ。
右の男は、バットで殴られ首から上が粉々に砕け散った。
二つの命が奪われた。ただそれだけの話でしかない。
少なくとも、一人と一匹はそう思っている。
夜。陽が沈み、月が昇る、夜。
太陽と月と星は変わらない。
その輝きは、例え数千年の後も変わらないだろう。
そして、この地上にも変わらないモノはある。
「ほら、寒いでしょ?ボクにもっとくっつきなよ」
「いや、いい。………これで十分だ」
温度を地上に留めるための木も草も、何もかもが無くなった新地球では夜は複数人で過ごすのが慣例となっている。
それは夜襲されないための見張りのためであり、くっつきあうことで凍死を防ぐためでもある。
この一人と一匹も、ずっと前から夜はこのようにして過ごしてきた。
一人はなるべく離れようとし、一匹はできるだけ密着しようとする。
「離れろって………おい、胸、が………離れろよ!」
「こら、声が大きいぞ、シーッ。こんな恥ずかしがりやに育っちゃって、お母さん悲しいぞ?」
「都合の良い時だけ母親面するな、あと離れろ」
「やーだ。だって寒いモン。もっとギブちゃんの温もりを感じていたいの!」
この地上にも変わらないモノはある。
一人と一匹はこれからも旅を続けるであろう。
楽しみを共にし、悲しみを分かち合い、時には諍いを起こし、
「しかし、あいつら結構良い銃持ってたな。俺には軽すぎるが」
「ギ
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