「こんな文章じゃ読者の読みたいという気持ちを掴むことは出来ないな。やり直し。」
「マジっすか…もう5回目ですよ……」
「5回でも10回でも何度でも挑戦するが良い。私は何回でも見てやるさ」
はぁ…マジかよ……結構色々調べて文章を作ったから今回は自信あったんだけどな……
ライターへの道ってこんなにも厳しいのか…
僕は霧澤ユウ。今年この親魔社の新入社員として入社して憧れのライターへの道を歩み出したばかり。
元々高校でも新聞部にずっと所属していて、作る新聞は一定の評価を貰えていたから文章力にはかなり自信があった。そう、あったんだけど……
「うーむ……ダメだな。コレではいくら題材が良くても説明がくど過ぎて読者は途中で読むのをやめてしまうだろう。やり直しだな」
「……はい」
その自信は完膚なきまでに僕の上司であるブラックハーピーの黒嶺カエデさんに崩された。今日1日を使って何回も文章を練り直して校生し直して、自分ではより良い文章にしているつもりなのにダメ出しを貰ってしまうのだ。
書き直し回数は既に7回目でありココまで来ると嫌がらせなんじゃないかとも思えてくるが、そもそも黒嶺さんはこの会社のメインライターとして雑誌の半分以上の記事を手掛けている敏腕ライターであり、指摘にも一つ一つに重みがあって言い返せないのである。それに、駆け出しの僕からしたら憧れの存在であるし、正直容姿もかなり好みである黒嶺さんに記事を見てもらえているだけ有難いと思わねば……
自分の机でPCに向かって、頭を抱えながら文章を考えていたら突然背中に強い衝撃が走った。
「よう、新人クン。まだカエデ女史の牙城は崩せないかい?」
「宮内さんですか……ビックリした」
アオオニの宮内ミコトさんはお調子者だが社のムードメーカーとも言える存在で、僕みたいな新人にも気さくに声をかけてくれる人だ。
サボり癖があるのが玉に瑕だが、面倒見のいい頼れる姉御って感じがある。
「集中するのはいいがもう定時時間は超えたぜ?せっかくの金曜日だし一緒に呑みに行くぞ!」
「しかし、まだ任された記事が出来ないんですよね…」
「オイオイ新人クンが気張ってもしょうもないぜ?まだ〆切は先なんだから」
「しかし……」
ウチの雑誌は月刊誌なので〆切は確かに先の方だが、宮内さんみたいに〆切ギリギリまでサボって毎回デスマーチになるのは流石に遠慮したい。
しかも宮内さんと呑みとなると次の日のことも考えずに飲まされるので二日酔いは免れないのだ。僕はそもそも酒にはかなり弱いし、二日酔いの回復に休日を潰されるのもキツいし丁重にお断りしたい所だが……
「ミコト、お前に任せたコラムが終わっていないようだが……?」
「コラム?どっちにしても〆切は来週だろ?まだ余裕だって」
「そう言っていつも〆切直前に徹夜してるのはどこのどいつだ?言っておくが今回は手伝わないぞ?」
「うげっ!?おいおい勘弁してくれよカエデ女史様ぁ…」
「毎回毎回お前に付き合って残業するこっちの身にもなってくれないか?今日は金曜日だから帰ってもいいが月曜15時までにはコラムを終わらせて持ってこい」
「ちぇー…全く手をつけてないから帰ったら書かなきゃいかんなぁ……仕方ない。新人クン、呑みは今度にしよう」
どうやら黒嶺さんが助け舟を出してくれた様だ。何にせよ助かった。
安堵しながら机に戻りPCに向かおうとしたが既に黒嶺さんの手によりPCの電源が落ちていた。
「霧澤、お前は根詰め過ぎだ。宮内を見習えとは言わないが余りにもやり過ぎると体を壊すぞ」
「しかし…僕はまだ何も出来てないですが……」
「お前は頑張っているのは私が一番知っている。だが頑張り過ぎて文章が空回りしているようだな」
「ですが…」
すると黒嶺さんは少し思案顔になった後、僕の腕を羽で掴んだ。
「よし、じゃあ今日は私と夕飯を食べに行くか。そこでお前の話もしっかり聞いてやろう」
「えっ……!?」
「何か苦手なものはあるか?無いのなら私の行きつけのお店があるんだが……」
「い、いえ!特に無いです!喜んでご一緒させていただきます!」
マジかよ!成り行きとはいえ憧れの黒嶺さんと一緒にご飯食べに行けるとかラッキー過ぎる!
よし、このチャンスで色々記事を書く上での秘訣を聞きつつ少しでもお近づきになれれば…
……と、そんな変なことばかり考えていた為この時黒嶺さんが熱っぽい目でこっちを見てニヤリとした事に全く気が付かなかったのだ……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
黒嶺さんと一緒に歩いて少しの住宅街の方に来た。この辺に居酒屋や飲食店があるとは聞いたことないが……
「黒嶺さん、コッチに飲食店ってありましたっけ?」
「ああ、あるぞ?隠れ家的な店がな」
隠れ家的な店か……確かにそう言った知
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4]
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想