第二の研究!

「あれ? ここどこ? 私、道端に落ちていたおいしそうなケーキを食べてたはずなんだけど……」

鉄の檻の中に、一匹の魔女が捕えられていた!
手足には枷をはめられ、脱出もままならない!
檻の外には一人の男が立っていた!

「フハハハハハハハハ! そうやって余裕でいられるのも今のうちだぞぉ! 神に弓引く下等な悪魔どもよぉ! フハハハハハハハハハ!」

男は、自らの白衣を翻し、魔物に対して威圧的な雰囲気で高らかに笑った!

「ん? あなた誰? 見たことない人だけど、ただの変態さん?」

魔物が男に向かって尋ねる!

「フハハハハハハハハハハハ! ワガハイが変態だとぉ? マヌケめぇ!  ワガハイは誇りある教団騎士の、そのうえ上級幹部の一員であるぞぉ! キサマを生かしておいたのは、ワガハイがこの国における教団騎士団魔物対策技術研究班第一責任者であるからだぁ! キサマはワガハイの魔物研究の実験材料になるのだぁ!! ファーッハハハハハハハハハハハハハハハハ! ゲホッ!ゲホッ!……ハハハハハハハハ!」

そう!
何を隠そう、彼こそが教団の魔物研究班!
その責任者に他ならないのだ!
いわば魔物のエキスパート!
魔女の不利は火を見るより明らかだ!

「あー、はいはい。そういえば、旧世代の魔物を研究していた、やたらテンションの高い研究者がいるって聞いたことあったっけ」

魔女は飄々とした調子で納得する!

「フハハハハハハハハハ! どうやら魔物側にもワガハイの威光が伝わっていたようだなぁ! 恐れおののけぇ! ワガハイの研究にひれ伏すがいいぃ!」

デスクワークが基本とはいえ、実地調査も忘れない研究者の鑑!
まさに百戦錬磨のつわもの!
魔物に存在が知られていても不思議ではない!

「しかしぃ! キサマは今日、認識を改めねばならぬぅ! なぜならぁ! ワガハイは旧世代だけでなくぅ! 新世代の魔物にも精通しているからだぁ!」

これは嘘だ!
前回、まだ生態をよく把握してなかったおかげで、魔物相手に手玉にされてしまった!
だが、この嘘も交渉技術の一つ!
ハッタリで相手を萎縮させるのも、立派な戦法なのだ!

「そうなの? それで? いったい私をどうするって言うの?」

魔女は不敵な笑いを浮かべている!
まさか効いていないのか!
なんたる胆力!
だが、ここで引くような教団(略)責任者ではない!

「フッフッフ……キサマにはいろいろと尋問したいことがあるのだぁ……」

男が一歩ずつ檻に近寄る!

「キサマには……この薬の用途をぅ! 洗いざらい吐いてもらおうかぁ!」

男は懐から、小さな小ビンを取り出した!
ビンには、魔物の言葉で書かれたラベルが貼られている!
ビンの中には液体が詰まっている!
どうやら何かの薬のようだ!

「そ、その薬は!?」

魔物も驚く!

「フハハハハハ! やはりその驚きようぅ! これはただの薬では無いなぁ!? これを見つけたのはつい先日ぅ! 誰も乗っていない面妖なイノシシに、荷物として積まれていたのだぁ!  しかも、かなり厳重に保管されていたぁ! ワガハイは、これには絶対に何かあると踏んだのだぁ! これが、キサマラにとってどういうものであるのかぁ! じっくり聞かせてもらおうではないかぁ! フッハハハハハハハハハハハハハハ! ゲェッホ! ゲホ! ゲッホ! のど飴のど飴……」

なんということだろうか!
魔物側の物資が、偶然人間側に流れ着いてしまったのだ!
情報は命だ!
この薬の正体がバレてしまえば、魔物の流通事情や生態解明の糸口になってしまう!

「……あなた教団よね? 私たちにいい顔してくれない人に、その薬の正体を話すと思うの?」

当然、魔女のほうも素直に言うわけがない!
見た目は幼いが、彼女もいっぱしの戦士というわけだ!

「ホホーウ? やはり魔物の見た目はアテにならぬなぁ? その幼い外見も、ワガハイたちの同情を買い、騙すためのものというわけかぁ…… そうでなくては面白くないなぁ! やはり魔物は打ち倒すべき存在と再認識できるからなぁ! フハハハハハハハハハハハ! あっ、のど飴落ちちゃった……」

男は満足そうに笑う!
好敵手はやはりこうでなくてはならないという笑いだ!
決して、彼の魔物娘に対する敵意が最近揺らいできており、反発されて安心したとかではない!
あと、落ちたのど飴は汚い!
3秒ルールも適用外だ!

「……フハハ! だが、ワガハイは魔物対策技術研究班第一責任者! この薬がどのような薬であるか、すでに大体の正体はつかめておるわぁ!」

なんだと!
やはり、この男ただものではないのか!
薬の正体とはいったい!

「この薬はぁ……ずばりぃ! 毒薬に違いないぃ!」

なんと毒薬!
何故そう思ったのだろうか!

「!? な、なぜそれを!!」
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