魔物が現代日本に進行してきてから数十年。この国では人間の女性というものは少しだけ珍しいものとなっていた。
身体能力や思考能力、そして美貌。ありとあらゆる面が人間よりも優れた存在があり、望むのであればそれにいつでもなれる。
そんな方法があるなら誰だってすぐにでも試したくなるだろう。しかし、人間であることに誇りを持っている女性が一人。
名を『松白タクミ』。冷静さを感じさせる瞳とスマートなモデル体型。人間であるのに魔物と争えるほどの容姿を持ち、
そして現代日本の首都である『帝都』のレストランで店長をするほどの実力を持つ。長年交際を続けてきた幼馴染
『松白キョウジ』との間に生まれた子供も中学3年生。日常の一つ一つがかけがえのないもので、
人生は順風満帆そのものだった。
しかしそんな彼女も、魔物に対して妬むところが一つだけあるのである。
それは…… 胸だ。
胸 バスト おっぱい、様々な呼ばれ方があるが、一様に男の心を掴んで離さない。
彼女のそれはなだらかな丘……というレベルではない。バスト74という絶壁であった。
しかし小さな胸にも需要はある。サバトを信奉する者達や、大ムカデ、ゲイザーなど
胸が少なくても魅力的な者は大勢いる。
では何故、そんなにも巨乳を恨むのか……それは
話を17年ほど前に遡らせよう。
当時タクミは16歳。キョウジとの距離が少しずつ縮まりつつあった。
これが人間だけの世界であれば甘酸っぱい恋愛物語だろう。しかし
ここは図鑑世界。恋敵はあまりにも多く、直接魔物に会わなくても影響がある。
キョウジの部屋に入った時に、問題は起きた。
「すまんなタクミ。国語の問題でわからないことがあってさ、お前ならわかると思って
来てもらったんだよ」
「……女の子を自分の部屋に連れてくるなら、もうちょっとムード出しなさいよ(ボソッ」
「そんなこと言ってきっちり教えてくれるタクミさんなのであった。」
「なっ、私はただ、アンタの成績が落ちてクラスのお荷物に「キョウジー、お前当てに荷物が届いてるぞー」
「わかったよ親父。タクミ、ちょっと待っててくれな?」
言いたいことを全部遮られるこんな世の中じゃあ……そう思える一連の会話。
それでもツンデレタクミさんはめげません。がんばれ、超がんばれ。
さて、女の子が意中の男子の部屋で気になるところランキング、上位に食い込む場所。
机の裏である。男が内に秘めた『荒ぶる獅子』を制御するための書物(ようはエロ本)が入っているだろう場所。
それを知れば彼の好みが少しはわかるかもしれない。そう思った彼女は、少し悪いな……と感じながらも
見えない性癖見ようとして、机の裏を覗き込んだ。暗闇を切り裂いて、いくつも本をみつけたよ。
『ホルスタウロスの神秘』1から10巻。『魔物娘のおっぱい』『パイズリ革命期 〜魔物娘の登場による新たなパイズリの可能性〜』
もともと胸の事にはあまり無頓着であった。周りからもかわいいという評価を貰ってるし、
容姿に気を遣う事といえば肌の手入れや髪の手入れ、胸なんてどうにかできるわけじゃあないし
必要もないと思っていたのだ……。それにクラスの男子がグラビアを見て盛り上がっている中、キョウジは
自分の机で基盤を組み立てていた。機械いじりが好きな彼の姿はエロへの興味など微塵も感じない。
そうどこかで自分に言い聞かせていた。しかし、現実はどうだ?
キョウジは私のことを好きでいてくれる。そう信じて猛アタックを仕掛けても
彼はのらりくらりと回避してくる。やはり……おっぱいなのだろうか?
そう思った彼女は自らの中に『冷静な憤怒』を感じていた。
タクミは、そっと机を元の場所に戻した。そして彼女は誓う。
「絶対にキョウジを自分のモノにしてみせる。おっぱいなんかに絶対負けたりしない」と……。
時間は戻り現在。見事にタクミはおっぱいに打ち勝ち、キョウジと幸せな家庭を築くことが出来た。
タクミは今厨房で部下たちに指示を出している。もちろんその部下の中には魔物娘たちも含まれている。
魔物娘達の中にはタクミよりも胸の大きい人などゴマンと居る。しかし、欲求に支配されず的確に指示を出す。
まるでアヌビスのような司令塔ぶりは男女限らず憧れの的であった。
「店長、この店の料理を食べた方が店長に会わせてほしいと言っていたのですが……」
「どんなお客様?」
スカした男が恋人に良いところを見せる為にシェフを呼ぶ。魔物が現れる前の、それもバブル期という時代なら
そんなヤツがいてもおかしくないけど……いやこの部下の様子を見る限り明らかに違う。
見るからに何かのプレッシャーによって疲弊している様子がある。……相手はただモノではない。
「魔界の王女…?とか言ってましたけど、眉唾には思
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