エルヴィのミルクはほろ苦い

― 可哀想な子ねえ、この子生まれつき病室に籠り切りなのよ



俺が初めて「可哀想」という言葉を使われたのは5歳ごろ。骨盤から脚に
かけて酷い歪みがあり、さらに様々な病気にかかりやすい体質だった俺は
生まれてから一度も自宅に帰ることはなかった。

俺にとってはそれが普通の事だったが、周りの人間は皆俺を憐れんでいく。
実の父母すらもそれは例外ではない。いままで笑顔で接してくれていた
彼らが悲しげな顔で

「どうしてこの子を元気に生んであげられなかったのかしら……この子が
 こんなにも可哀想な目に会わなくてもいいのに…」

涙を浮かべながら頭を撫でていた母を見て、俺は自身が『可哀想な人間』
だという認識を持つようになった。




可哀想、可哀想、


そう言う彼らの中で誰もこの状況から解放してくれるわけではない。無論
それが彼らの責任であるわけでは無いが憐れまれれば憐れまれる程に、
俺が貧弱で何一つ成し遂げられない人間だと言われている気がしていた。


だから……皆を見返してやろうとしていたのに……。





「……ここは……?」



俺が目を覚ましたのは、洋風の内観をしている洒落た部屋の中だった。
オレンジ色のランプが落ち着いた色相の家具や壁紙に温かみを加えて
いる。そんな居心地が良い空間の柔らかなベッドで寝そべっていた俺は
自身の体に柔らかな触感のものが抱き着いていることに気が付いた。


「―――んふぅ……目が覚めたんだね、悠一くん?」


それは、全裸になったエルヴィだった。


そしてなぜか俺自身も全裸。


もちっとした弾力と柔らかさを持つ彼女の肢体、先ほどまでは
ローブに隠れていて見えなかったそれは、見事なまでに豊満なモノ
だった。


「が……っ、ええっ!?何でこんな事にッ!」

「私は自分の体温を保つすべを持って居るから風邪は引かないよ
 そもそもアンデッドは暑さ寒さを遮断できるようにできてるからね」


ベッドから飛び起きた俺をしり目に、頓珍漢な事を言いながら備え付け
られたタオルケットでむちむちとした灰色の肉体を隠す。隠すと言っても
申し訳程度だが……。


「ここは『不死者の国』という魔界にある私の診療所だ。まあどちらかと
 言うと研究所や自宅の意味合いが強いんだけどね。」

俺は説明を聞きこうとしたが、俺は俺は彼女のおっぱいに見とれていた
せいで全く話が入ってこない。ここの所オナニーをする気力が無かった
俺のペニスは、溜まった精液を吐き出そうと充血を始める……。



むくむくっむくっ


「ふうむ……なるほど、君はおっぱいが好きなんだな。君のペニスの
 元気さを見ればわかる。」



それに気が付いた彼女はじっとりと睨むような眼はそのままに、彼女の口元
が少しだけ歪ませる。まるで他愛無い子供の悪戯を見た大人のような……
ってそんな事思ってる場合じゃない。とっとと服を着ないと……。


「君も性的興奮はするみたいだね。これなら少しずつでも確実に治療を
 することが出来る。」


「はあ!?そんな事よりも早く服を着ろよ!」

俺は彼女の胸に視線を釘付けにされながらもこう言った。


「その前に……寝起きの飲み物を用意してあるんだ。それを飲んでから
 着替えてくれ、私もいつもの服装に戻るから。」

彼女はそう言いながら胸の谷間から乳白色の液体が入ったフラスコを
取り出した。何処に収容していたかなんてさっぱり分からないが
その動作のいやらしさに、思わず前かがみになってしまった。

そしてその様子をにやにやしながら見つめるエルヴィ。弱みをうまく
握られているようで悔しい。





「うわっ 冷たっ!」

渡されたフラスコは先ほどまで冷蔵庫に入っていたかのようにキンキンに
冷えていた。一体どんな魔法を使って……いや、本当に魔法を使っている
みたいだ。常識で判断するのは止めよう。

しかしこの飲み物は美味しそうなのだが、タイミング的に水とかではなく
果物のジュースを差し出されることに少し違和感を感じた。けれどまあ
水の代わりにワインを飲んでた人たちみたいなもんか。


「それはミルクと砂糖で作ったお手製のジュースだ。甘くておいしいよ」


中々この飲み物を口にしないことで、飲み物の正体を訝しんでいたことが
バレてしまったようだ。これ以上迷っていても先に進まないだろうし


ぐびりっ


俺はフラスコに口をつけて一気に傾けた。

口の中に入ってきた乳白色の液体はとてつもなく甘い。しかしそれは嫌味の
あるものではなく、口の中をコーティングするようなコクとやさしさがある。
後味はチョコレートを思わせるようなほろ苦さがあり、液自体のとろみが
優しい口当たりを生み出していた。


「っぷはぁ、美味いなコレ。もっと持って
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