第二十八話 昊とお話

ベルトラ草原でのウォード軍との不毛な争いから一夜明け、僕たちは結局ベルトラ平原を領土に持つ四つの領地すべての軍隊を壊滅させて北進することになった。
レジスタンスと合流したら王都を攻めるわけだが、その前にはっきりさせておきたいことがある。色々な疑問があって僕もまだ今立てている仮説が本当に正しいのか確信が持てないけれど、姫様にちょっと聞いておくに越したことはないだろう。
丁度僕たちは姫様と一緒に動いているから、話そうと思えばいつでも話せる。
一緒にいるのはランスとその恋人猫姉妹、領主代行の二人、それに一緒にこの世界に来た四人の仲間と、吹雪が連れてきた英奈さんとハート。そしてリィレさんと姫様。
このメンバーなら迂闊に口を滑らすことも考えづらいし、知っておいてほしいと思うくらいだから話を切り出しても問題ないだろう。
「姫様、ちょっとお訊ねしたいことがあります。」
「はい。何でしょう?」
笑顔のまま馬上の姫様は僕の方を見る、小柄で幼い外見に似合わず、物腰は淑女のそれだ。
ちなみに、馬はウォード軍が持っていたものを奪った。手に入れた二十頭の馬の多くは大型馬だったので荷車を曳いているが、こうやって誰かを乗せている馬もいる。
「僕たちに隠していることがありますよね、そのことについてなんですが。」
姫様は僕の言葉を聞いても笑顔のまま、
「隠していること、とは?」
「偶然にしてはあまりに上手くいきすぎていることがいくつかあります、先王フローゼンスとクロードさんの出会い、僕がクルツに、如月が王城にそれぞれ飛ばされたこと、それに計画の一つが上手くいかなかったからといきなり貴族議会の貴族が反乱にまで至ったこともあまりに短絡です。」
「やっぱりお気づきになられましたか、いつ切り出そうか迷っていたんですが……」
姫様はちょっとだけ困ったような顔をして見せる、どこまで本気なのかわからないけれど僕たちが気づかないとは思ってなかったようで何よりだ。
「正解発表の前に、僕の立てた推察を聞いてもらえませんか?」
前に進みながら姫様にそう言う、他の皆も顔を向けているのはハートくらいだけど興味津々に聞き耳を立てていることが感じられる、その証拠に猫姉妹とネリス、そして話し合っていたランスとハロルドさんがいきなり静かになった。
「恐らく、先王には二人の協力者がいました。片方はクルツの、特にクロードさんの足跡をつかみ国王と引き合わせられる誰か。もう一人は貴族議会に影響力を持ち、さらに僕たちをこの世界に呼び出した魔術にも何らかの細工を施すことのできる立場にある人物。」
「ここまでは正解ですよ、楽しみを奪って申し訳ないですが。」
姫様はやはり笑顔を崩さずに僕の言葉に答える、余裕というより、こうやって誰かに仮説を立てられることを期待していたからわざと黙っていたような口ぶりだ。
「クルツの協力者は、ルミネさんですね?」
「………そうです、少し考えれば誰でも『あの人しかいない』と思い当たりますよね。」
周囲の空気が僅かに冷える、水辺に近づいてきたことだけではなく、わずかに他の皆が緊張を強めたからだろう。
仮に誰かが何かをしたとしても即座に止められるよう、もしくは安全な場所に避難できるように身構えて、次の動きを待っている。
「どうやってルミネさんは先王と知り合ったんです? そして連絡を取ることも可能な立場まで成り得た理由も聞きたいですね。」
「お父様のお話では、二十四年ほど前に寝所にいきなり現れたそうです、結界が張られているはずの王城に当たり前のように現れるあたり、相当な力を持った淫魔だと最初は判断していたそうですね。」
ちょっとなるほどと思った、やりかねない。
天満が作った結界も当たり前のように看破してたくらいだ、実はルミネさんはかなり強力な淫魔なのかもしれない、あの時は天満が弱かっただけだと思ってたけど。
「彼女からどのようにお父様に話が通ったのかはわかりませんが、それ以降お父様は外の世界で起きていることに関心を持ち、国のあちこちを回るようになったようです。」
「そして、ルミネさんの手引きにより若かりし頃のクロードさんに接触した、そういうことですね。」
「はい。」
僕の確認に対する姫様の確認の言葉から、皆が少しだけ黙る。
「しっかし、わからんな。どうしてルミネさんはわざわざこんなに回りくどいことを? あの人が直接動けば全部片付く話ってことにならないか?」
数秒の静寂を破り次に口を開いたのは吹雪だった。隣でハートも首を縦に振っている。
「人間が自分の手で変わることが重要だそうです。お父様もそれについては同意見だったようで、彼女の計画に乗るにも『人間が主体となること』は最低条件だったようです。」
「なるほどねぇ。」
吹雪がまた考え込む、無いとまではいかないがそこまで内容の多くない頭を吹雪
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