第二十五話 四人と休憩

因幡君たちの活躍もあって渡河を果たした私たち王女軍は、その勢いのまま進軍、兵力の大半と士気を欠いた城の守備隊は王女軍の敵ではなく半日もせずにマズート城は陥落。
周辺の町の人たちはギズと同じような反応だったけれど、どちらかと言えばギズよりは態度が柔らかかった気がした、一回目である程度慣れただけかもしれないけど。
施設はそこそこ充実していたので、私たちはそこを利用して休むことになった。
明朝までは各自自由行動だから、その間に体を休めておく人や恋人といちゃいちゃする人、次に向けての鍛錬をする人など、過ごし方は人によってさまざま。
私は姫様やリィレさんと一緒にお風呂に入ってから、ガルディンが執務室に使っていたと思われる部屋に集まった、敵軍の資料を確認するためだったのだけれど、防衛部隊が敗北したときのために焼き払っていたらしく何も得られなかった。
「偵察に出たナンナの報告を待っているべきなのでしょうか?」
ナンナさんは城につくなりすぐに十人の騎馬部隊を編成して偵察に出てしまった、それだけの人数で大丈夫なのか不安には思ったけれど、「多いくらいだ」とナンナさんが言い切ったから信用しておくことにした。
「大丈夫なんでしょうか……」
「リオント伯の心配ならするだけ無駄だ、仮にも王国の名将の一人とうたわれる人物、偵察で敵に発見される初歩的な愚をおかすこともないだろう。」
「それより、勝手に離脱者が出ないことを気を付けてください、この北にはいろいろと曰くのある場所がありますから。」
「曰くのある場所?」
姫様の言っていることがよくわからなかったから聞き直したけど、リィレさんも姫様も苦い顔をするばかりだった、よっぽど問題のある事なんだろうか。
「すみません、姫に用事があるって人が来てます。」
ドアをノックしながらそう言うのはハロルドさんの声、それともう一つ声がするのは多分お客様の声なんだろうけど、なんだろう、どこかで聞いた気がしなくもない。
「入ってください。」
姫は躊躇なくそう言った、ハロルドさんが扉を開けて部屋に入ってくると、その後ろをついて歩いてきたのは、えっと、密偵の………何て名前だっけ?
「カーター、久しぶりだな。」
リィレさんが私が名前を思い出す前にその人の名前を呼んだ、そうだカーター。
「お久しぶりです我が姫、それに無事で何よりだ二人とも。」
部屋の入り口でカーターさんはお辞儀をした、そしてそれから姫様の前まで歩いていくと、その場で跪く。
「わが君に報告です。アルベルトとマーカスがレジスタンス、自由騎士などを集め姫様の宣戦の日から王国軍を相手に大規模な武装蜂起を実行しました、現在はフォーディ将軍率いる部隊とここからまっすぐ北の森林地帯で交戦中です。」
そこでいったん言葉を切って、カーターさんは姫様の顔を見上げ、
「各地から集まった現王勢力に対する反抗者に加え、プリオン領・ドラウ領の騎士がレジスタンス部隊に加勢したことにより、数の不利はありますが有利に戦闘を展開しています。」
「なるほど、ほかに報告はありますか?」
姫様の質問に、確かにカーターさんは苦い顔をした。
「七貴族たちの間に意見の対立が見られます。特に長子が王国軍の現元帥を務めるパージュ家と、マウソル王を利用して国権のほとんどを握っているドスカナ家です。加えてほかの貴族の間でもこれからどう動くべきかで揉めています。」
「具体的に、これからどう動くかで揉める内容は?」
訊ねたのはやっぱり姫様だった、リィレさんはほとんどさっきから口をきいていない、
「レジスタンスに対してさらに攻勢をかけ、一気に叩き潰すかそれとも王都の守りに戦力を割くべきかが当面の対立です、マウソル王及びドスカナ、グリーベ両公爵とソクト侯が攻勢に出るべきとの意見、守りを固めるべきとの意見を出すのが残りの四侯爵です。」
「それだけが揉める内容ではないでしょう? 彼らの本題はどうなのです?」
姫様は冷たい目でさらに訊ねた、それはまるで今起こっていることをすべて見通したうえでカーターさんから聞くことで確証を得ようとしているかのような。
とても、私より一歳年下の女の子がするような目だとは思えなかった。
こんな目ができるからこそ、次の王に選ばれてたのかもしれない。
「鋭いご高察で……彼らのうち一部は、イグノーへの軍事侵略を発案しています。」
「なっ!?」
リィレさんが驚きのあまり声を上げた。
「不可能に決まっているだろう! イグノーはローディアナの五倍の版図を持った国だ! 現在の軍事力では奇襲ができてもすぐに押し戻される、無駄な戦火を広げ、多くのものを死なせるだけだ!!」
「そうだろうな、貴族たちの半分はお前と同じ意見だ、だが……辺境から手に入れた武力の源なる天使たち……それに敵兵を捕えれば自分たちに都合のいい兵器に変えられる
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