ギズ攻略から二日後、今度の戦場となるエレヴィア河の渡河可能区域近辺に集まった本軍から大分離れたところに、俺とハートと英奈さん、そして黒髪の男ロイドとその妻でありドラゴンのルビーの五人は集まっていた。
「昊の読み通り、馬鹿正直に向こうだけを守ってるなぁ。」
中流域では川を挟んで二つの軍隊がにらみ合っている、王女軍と、マズート領主軍だ。
「マズート領主ガルディンは臆病な気性で自ら前線に出ることは好まない、大体本陣で待機してるって話だね。」
「うちの姫様とは大違いだな、あの人戦闘雑魚なのに前へ前へ行っちまうからな……」
見ていて危なっかしいから本来勘弁願いたい、けど軍の士気があの人のおかげで高まってることもあるしあの人が前線にいないと成立しないのが今回の策だから仕方ないと言えば仕方がない。
「リィレがいるからね、あと、今はキサラギも。」
そう言ったのはロイドだった、そう言えばあのリィレって女の人とは昔からの知り合いだったか、こいつのことはよく知らないが、昊がある程度信用してたから信じてもいいんだろう。
「さっさと行くぞ。」
偉そうに言ったのはルビーという名のドラゴン、赤い髪に赤い瞳、そして赤い鱗と、まさに「ルビー」と言った感じの女だがあくまでこれは通称で本名はもっと長いらしい。
ロイドの妻だと聞かされてるけど、温厚で人のよさそうなロイドとあからさまに上から目線のこの女がどうして結婚したのかはよくわからん。
「はいはい、じゃあ頼むよ?」
「わかっている。」
そう言った瞬間、ルビーの体が光った。
眩しい光はおよそ二秒ほど、実はもっと短かったのかもしれないが誰も計ってないだろう。
光が止むと、ルビーのいたところには一匹のまさに「ドラゴン」と言った感じのするモンスターが四足で立っていた。
蝙蝠のようなしかし爬虫類の硬質さを感じさせる翼、全身を覆う深紅の鱗と女性的な印象を全く感じさせない鋭い瞳。まさにこれが「ドラゴン」というべきモノがそこにいた。
ドラゴンの持つ、かつて魔物が人と全く異なる姿をした化け物であった時代の姿に一時的に戻る変身能力、それによってルビーが変身した姿だと来る前に聞かされていた。
「じゃ、背中に乗って。」
唸り声をあげる「ドラゴン」に催促されたようにロイドが俺たちを順番に背中に乗せる、そのあとでロイドだけは「ドラゴン」が尻尾を巻きつけた。
あまり大きくないから、俺たちが四人ギリギリ乗れる程度。
翼が広がり、風を強引に奪って空を飛ぶ、そして一直線に川を対岸まで移動したと思ったら、着地して九十度方向転換、俺たちを乗せたまま、信じられない速度で走り出す。
地平の彼方に見えていたはずの敵陣が見る見るうちに近づいてくる、それと同時に川半ばで戦闘してる姿も見えてくるんだが、
「おいおい、出来るだけ注意を引くとは言ってたけどやりすぎじゃないか?」
川の三分の二ほど来たところに見えるのは土でできた巨人、腕を振り回して敵兵をまとめてなぎ倒している。五・六人の兵士が宙を舞い、派手な水しぶきを上げて着水する。
「こんな面倒なことしなくも強行突破できたんじゃないのかよ。」
「かもしれないね、けどまぁいまさら言ってもしょうがないし。」
徐々に王女軍は後退を始める、相手からは自分たちが押しているように見える程度の速度を維持しつつ、ゆっくり相手を川半ばまで引き込んでいく。
ここまでは作戦通り、問題はここから。
勢いを殺すことなく、それどころかさらに加速しながら敵陣に突っ込む。
柵を飛び越えて敵陣真っ只中まで侵入すると、ドラゴンルビーは目についた幕舎の一つに向かって炎を吐く。
幕舎はあっという間に燃え上がり、それによって俺たちが侵入したことが相手にも伝わる。
俺たちがすぐにルビーから飛び降りると、彼女も変身を解いて人型に戻る。
「うっし、侵入成功。」
「もはや突入ですね、ここまで乱暴だと。」
あたりのまだ炎上していない幕舎から敵兵が湧いて出てくる、どいつもこいつも大した実力は持っていなさそうなやつばっかりだ。
「敵襲! 敵襲―――――――――――――っ!!」
大きな声で近くにいた男の一人が叫び、さらに兵士たちを呼び寄せる。
一度屈伸して体の筋を伸ばしておく、それからできるだけ体から無駄な力を除いた独特の構えをとる。習得していた十夜亜流の足捌きと、クロードさんに教えてもらっていたラギオン流の技をできるだけ効率よくミックスした夜音流の構えだ。
「死にたくないなら退け、向かってくる奴を殺さず済ますほど俺はお人好しじゃない。」
殺傷行為も姫様に解禁されてるから、近づくやつから遠慮なく本気で相手ができる。
一番最初に敵に突っ込んだのはハートだった、地面を這うようにして敵の集団に突っ込むと、そのまま巨大な鉈剣を振り回して数人をぶった切る。
さすがにざっくり真っ二つに
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録