最初の戦闘から一日半たった夜のこと。
占領するなら早い方がいいだろうという意見があったこともあって、僕と天満とランスは、ガラグナ中心都市ギズの城壁の前まで来ていた。他の皆は相手の見張りから露営地がよく見えるような場所に待機している、注意を惹きつけるためだ。
どの門からも離れている場所で人目にも付きづらい場所を選び、そこに三人で集まる、僕と天満は飛行できるから(天満は羽で短距離なら飛べるし、僕も魔法を使えばずっとは無理だけど短時間なら空中を「跳べる」。)そんでランスは作戦の中心人物だから。
「ところで、どうやるの? あの人形は何?」
「そん前に、中に移動だ、行くぞ。」
そう言ったランスは、魔術で足元の地面を盛り上げ始める。簡易エレベーターだ。
僕たちも各々の手段で城壁を超えて中に入り込む、兵士には見つかっていないし周囲に人影も見えない、上手く潜入できたみたいだ。
「起動、小枝人形一から五まで。」
ランスが魔術書を開いてそう呟くと、ランスのカバンの中からは五体の人形が勝手に這い出てきた、外でランスが見せたのと同じ人形だ。
這い出てきた人形のうち、四番目と五番目はどこかで見たようなワーキャットを象って、
「って……これってもしかしなくてもシェンリとクリム?」
ランスの恋人のワーキャット姉妹に明らかにそっくりだった、等身から身長の細かな差、体型まで明らかにあの二人を意識したつくりをしている。
「うっわ……好きな女の子の人形持ってるとか引くわ……」
天満がげんなりした顔でそんなことを言う、前……天満のお気に入りの縫い包み見せてもらったら僕をデフォルメしたようなやつだったけどあれはいいのかな?
「四番がシェンリデザイン、五番がクリムデザインだな、俺の意思じゃなくてこいつら作るときに『どうせなら自分に似せてほしい』なんて頼まれたんだよ。」
他の人形も多少は、それこそある程度の個性を出そうとはしてあるけど、でも明らかに四番五番とは造形のレベルが違いすぎる、戦闘服まできっちり再現してあるとかちょっと作りこみすぎて怖いくらいだ。
エルフデザイン、フェアリーデザイン、ランスのような人間の男デザインと四番五番の装備はみんなほぼ同じ、ハンドルのついた糸車のようなものが背中部分、ナイフのようなものが左腰、筒のような道具と小さなポーチが右腰に取り付けられたベルトと、ほとんど同じデザインの戦闘服。
これ自分で作ったんならランスは相当器用ってことになるけど……
「姫さんから貰った町の見取り図がこれだ、どこで入手してきたんだろうな。」
ランスはそう言いながら鞄から町の周辺まで含めた見取り図を取り出す、僕たち王女軍の露営地に青い丸印が、そしてそこから一番近い門に赤いバツ印がついている。
「内部に入るにはこの門を開く必要がある、でもまぁ門から入りましたじゃ終わらないのは分かるよな?」
「目的はあくまで領主メーヴェンの首、だったらそこから領主の館の内部にまで一気に攻め入る必要があるのよね?」
天満が返事をする、そしてそれはうまくいかないだろう、市民がどちらにつくのかはわからないとはいえ、館の門を閉ざされたり、領主の味方をする兵士が妨害しているうちに逃げられる可能性もなくはない。門を壊すには少し時間がかかりすぎる。
「まぁそうなる、だから俺の人形たちに外門を任せて、俺たちは領主の館に侵入、味方が来たところで内門を守ってる連中を倒して味方を手引きする。」
「……それ大丈夫なの? この人形……言っちゃ悪いけどすごく弱そうよ?」
「戦闘能力は皆無だ、隠密作業・偵察に特化している。」
天満の発言にランスはさも当然であるかのように答えた、しかし確かに夜とはいえ見回りもいる中をこんな人形に重要作戦の一端を担わせるのは結構不安なんだけど。
「安心しろ、戦闘はできないが機動力は悪くない、見てろ。」
そうランスが言うと、四番が手近な建物に向けて右腰に下げてあった筒状の道具を向ける。
高い角度で、二階建て建造物の天井のあたりに狙いを定めると、筒の先端から矢のようなものが飛び出した、矢尻からは一本の糸が伸びていて、背中の糸車が回転しているところを見るとどうやら繋がっているらしい。
壁に刺さった矢と人形の間にロープが出来上がる。すると人形たちはレンジャー隊員もかくやというハイスピード(あくまで体格比だけど)でその糸を伝って移動を始めた。
屋根伝いに、吹き矢のような銃と糸の道を利用してどんどん進行していく。もう見えない。
「うっわ、無駄に凝ってるわね。」
「無駄とか言うな、道具用意するの大変だったんだぞ。」
なんか、言いたいこと割とずけずけ言う天満みたいな人間とかかわりが深かったんだろうか、ランスのツッコミはやけに手馴れている。
「じゃ向こうは人形軍に任せて、俺たちは領主の館に向かおう、早いとこ
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録