第二十話 四人と戦支度

あと一か月後、ローディアナ王国の建国記念日に僕たちは現王国軍に向かって宣戦を布告する。
それはいい、こうなってしまってはもう僕たちには最善を尽くす以外に手段なんか残されていないんだから、最善を尽くすことだけ考えてればほかの余計なことは考えなくていい。
だが、どうやって戦争に向けて準備しておくのかはそれぞれ。
僕がどうやって戦争に備えるかを教えてくれるのはルミネさんだった。
特にやることがない(っていうかどうやら僕と一緒にいることの方が重要っぽい)天満と一緒に、僕はまた魔術研究所に来ていた。
「って言っても、一冊あなた専用の魔術書を作るだけなんだけどね。」
そう言ったルミネさんは、表紙以外全くの白紙の本を僕によこしてきた。
「魔術書?」
「そうよ、面倒だからこれ以降書で済ますけど、魔術師が戦闘のために利用する魔法行使のための道具の一つ、行った魔法儀式を書に記録させることでいつでも行使できるようにするの。」
「えっと、それはつまり、前に言ってた魔法の弱点である『即時性に欠ける』ことを補うための道具ですか?」
確かアイリさんに聞かされた限りでは魔法はすぐに使うことはできなかったはずだ。
魔術はすぐに使うことが可能だけど不安定で効率が良くない。
それに対し、魔法は手順を踏まなくてはいけないので即時性に欠ける反面効率よく安定した力を発揮させることができる、もしそれを魔術書の使用によってすぐに使えるようにすれば、大きなアドバンテージになるだろう。
「そうよ、じゃそれの一ページ目に署名して、そしたら順番に魔法の構築式を記録していくわよ。」
そう言ってルミネさんは万年筆とインク壺を取り出す、どこから出しているのやら、この人はたまに何もないところから道具を取り出したりしてる。
署名に関しては名前はこの世界で通じている文字を使わなくてはいけないというわけではないらしいので、書きなれた日本語での自分の名前を使わせてもらう。
「あなたの世界じゃソラってこんな風に書くの?」
「いえ、これだけに限定はされません。」
ローマ字綴り、平仮名片仮名漢字、特に漢字はいろいろ存在してるから、一概にこれが「ソラ」と読んでいいものなのかは微妙になってしまう。
「面倒そうねぇ……ああけどジパングと似たようなものかしら。」
よく知らないので答えようがない。
次に魔法の詠唱式を書き込んでいく、要するに言葉にせずとも世界に干渉できるように魔法陣とか術式の内部の文様を書き写していくんだけど、これがまた難しい。
何せミリ単位の誤差も許されない(誤差があると正常に発動しない・もしくはおかしな別種類の魔法に変わってしまうことがある)から、本当に神経が磨り減る。
「書を一冊作るのは、魔法の手間の前払いみたいなものよ、この書の作成に使った時間は無駄になるかもしれない代わりに、利用すればほとんど時間をかけずに強力な魔法を使うことが可能になる。後で試しに持ってる子たちの魔法を見せてもらいましょ。」
そう言いながら、ルミネさんは退屈そうに僕が魔法陣を書くのを見つめていた。
そういえば、ルミネさんや天満に魔術書は必要ないんだろうか。
ちょっとチラッとだけ天満の様子をうかがってみる、彼女は僕とセックスしたときにこの研究所を封じ込める形で隔離結界を張っていたらしいが、それをどうやったのかは聞いても説明が要領を得なかった。
「天満は作らなくていいんですか?」
「いいわよ、魔物は人間に比べて自由に魔術を行使できる割合が多いの、むしろ道具に頼った方が弱くなる場合だってあるから、下手に作らない方がいいわ。」
ルミネさんのその発言に天満が頷く、魔物が人間よりも上位の存在だと一応聞いているには聞いていたけど、そんなところも優遇されているとは思ってなかった。
「ところで持ってる人って誰ですか?」
「南部開発局統括ランス、あなたも会ってるわよね? クロの三男。それに研究所の職員アイリ、あとあのお姫様とフレッドも持ってるんじゃないかしら。」
ルミネさんはすらすらと答えてくれるが、僕はあの二人が持っているところを見た記憶がない。見せる必要もないからかもしれないが。
「こんなに便利な道具ならみんな持っててもおかしくないですけど。」
そんな僕のつぶやきに対して
「そうでもないわ、いろいろ手間だし、それにあんまり大きな魔法は紙の中に封じ込めきれずに暴発しちゃうことだってあるんだからね。」
そんな風に返事をするルミネさんの言葉を耳に入れつつ、筆を走らせる。
とりあえず、通信魔法の魔法陣と魔法式は書き込み終わった、次だ。


「不本意だ。」
俺の目の前で、クロードさんは棒をくるくると回しながらそう言った。
俺を鍛えてくれることになったのはこの人なんだが、いまいちやる気が感じられない。
平崎の方は平崎の方で同じ訓練場らしきところで
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