第十一話 昊と仲間たちの行方

クルツに来て、魔術の修行に打ち込む日々も一週間が過ぎていた。
基本的な魔術はすべて習熟してしまい、ひたすら仲間たちを探すための探知型魔法を身に付けるための訓練ばかりしている。
というよりも、探知魔法の習得もほとんど完了している、問題は、
「探知………検索、三条天満……」
吹雪と如月は、いる場所の距離までよく解るようになっているのに、天満のことだけはどんなに頑張ってもどこにいるのかさっぱり掴むことができないでいた。
感覚が広がっていくような感覚が一瞬だけしてすぐに終わる。
それこそまるで「三条天満」という人間がすっかり消えてなくなってしまったかのように、探知をしても探知しても全く感知ができないまま既に三日が経過してしまっている。
「どう?」
「…………だめです…アイリさんの言った通りなら、一番探知しやすいのは天満のはずなのに……」
アイリさんは繋がりの強い人間ほどお互いに対する探知は容易だと言っていた。
つながりの定義はあいまいでこれと言って確立されていないのが現状だと聞いているけれど、基本的に血縁関係にあったり長い時間を一緒にいた相手、それに愛情を抱いている相手ほど、探知の成功率や範囲は飛躍的に上昇する。
天満と生きてきた時間の長さ、唯一の家族としてお互いに抱く感情、それに姉と弟という極めて強い血縁でつながった関係。
僕と天満のつながりは、吹雪や如月に対するものよりずっと強いはずだった。
それなのに、ほかの二人は探知できるのに天満だけは全く引っかからない。
「仕方ないわ、通信魔法の習得に移りましょう。」
アイリさんはため息をつくと、そう言って魔法の書かれた書物を見せてくれる。
風の魔法の高等応用技術の一つ「通信」
念話とも言われて、要するに遠く離れた相手と会話を可能にする魔法、魔物の領主ルミネさんも使えるには使えるけど、ルミネさんの場合はちょっと特殊で、自分の魔力を流し込んでマーキングした相手や道具にしか使えないと言っていた。
魔法に必要な手順に従って術式を組み立てていき、一分ほどで完成する。
「通信、接続相手は……平崎如月。」
一番距離が近くて、今も近づきつつある如月が成功率なら一番高いはずだから彼女を選んで、頭の中で語りかける。
(如月……聞こえる? 聞こえたら頭の中で返事を)
呼びかけてみるけれど、呼びかけは帰ってこない。
アイリさんとはノイズ交じりでもどうにか念話を成立させることができているけれど、如月とは距離がこれでもまだ遠すぎるらしい。
「頑張ってるわね。」
ルミネさんがドアを開いて入ってくる。
会うのは二日ぶりだった、いつもは仕事で忙しいみたいだから。
「ルミネさん、『探知』ですごく強いつながりを持った相手が探知できない理由って、何か思い当ります?」
入ってきたルミネさんに向かって、あいさつもなくアイリさんが訪ねる。
「……心当たりは……あるわね。」
「どんなのです?」
「最悪のパターン、つまり精神が崩壊もしくは……死んでるか。」
無意識だった、本当に言い訳の余地もなく完全なる無意識だった。
僕はルミネさんに向かって、風の弾丸を数発放っていた。
出現した氷の盾がそれを受け止めたけれど、受け止めていなかったらルミネさんの体を引き裂いて即死させていただろう威力だった。
「天満は……天満は、僕が死なせない……」
自分に言い聞かせるように、僕は低くそうつぶやいた。
「シスコンねぇ……」
呆れたようにルミネさんが言い、アイリさんがお茶の用意をする。
「ところでここでの生活には慣れたかしら? 異世界とはいろいろ勝手が違うと思うけど。」
「………そうですね、慣れてもまだいろいろ不便に思うことはあります。」
順応して多くのことは成立させられるようになってきたけど、それでも離れてみると僕がどれほど便利な文化に浸かって生きてきたのかがよく解る。
ほかの皆がどんなレベルの文化に浸っているのかはわからないけれど、ここより文化水準が高いところは王国では珍しいらしいからたぶん僕は運がよかったんだろう。
「練習ついでにちょっと遊んでみましょうか、町の中心の噴水広場まで行ってそこから私に通信してみなさい。」
「できますかねぇ……」
「習熟度から考えて、無理ではないと思うわ、あとは気合と根性。」
「ハァ……まぁ行ってきますね。」
立ち上がって研究所から出る。
僕が仮住まいとして利用させてもらっているのはルミネさんとアイリさんが職員を務める魔術研究所という場所で、修行にもってこいのマジックアイテムがあるからそこに住ませてもらっていた。
こう見ると、クルツは結構広い。
遠くには牧場があって、たくさんの家畜が牧羊犬のまねのつもりなのか吠えたてるワーウルフに追い回されている。その近くには果樹園もあって、職員らしき数人が害虫駆除や肥料やりに奮闘している。

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